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87、貴婦人の囀り⑨
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一通り遺跡での説明が終われば、後はゆっくりと友人の顔を見て良いとヒュンダルンからお許しをもらっていた通りに、ウリートは庭園までヒュンダルンにエスコートしてもらった。
勿論、直接声をかけてくる者達はいないものの、遠巻きにしている者達は足を止め、歩いて行く二人を目で追っている。
「では、後で…アランドも連れてこよう。楽しんで?」
庭園入り口での別れ際にも、ヒュンダルンはウリートの右耳をしっかりと出す事を忘れなかった……
「お久しゅう~~!!ウリート様!!」
「こちらへ!お早くこちらへ!!」
ソロっと会場を見渡せば、見知った3人が小さく手を振りながら、椅子から少し立ち上がってウリートを手招いている。
「ああ!ウリート様ですわ!」
何故だか皆様キラキラと瞳が輝いている様に思います。お元気そうでなりよりでした。
「お久しぶりです。レジーネ様、ユーリ様、スザンナ様!!」
懐かしい友人のニコニコ笑顔にウリートもつい釣られて満面の笑みになる。色とりどりの花々に、香りの良いお茶と沢山のお菓子。友人とも会えてこんなに楽しめる時はないと思う。
「まあまあまあ!なんて良い笑顔ですの!婚約された者の余裕と言いますのかしら?幸せオーラと言いますか!」
「本当ですわ!以前より肌艶も良く、少し頬がふっくらとされて?また魅力が増したのですもの!ゴーリッシュ騎士団長様のあの態度も十分分かりますわね!」
「ええ、ええ!ウリート様、その……右耳に、輝くのはやはり…」
「はい……あの…婚約の、記念の品で……」
「きゃああ!!やっぱりですわ!」
「もう、色を見れば分かりますわよね!」
「あの…?それより、皆様ご存知でしたか?」
ヒュンと、婚約した事を……
一呼吸大きく深呼吸してから令嬢達は話し出す。
「勿論でございますわ!ご婚約後は両家からの報告が王家に集まるのです。そこで了承が得られなければ婚約どころではありませんもの。」
「そうですのよ?そして王家からは貴族間への通達がございますの。」
「既に婚約しているのに、新たに申し込みが来る事を防ぐ為です。」
貴族間の家柄によっては高位の家からの申し込みは非常に断りにくいものである。婚約を結んだ両家よりも更に高い家柄からの申し出が入った場合、穏便に引いては貰えない事態も発生するそうだ。その為貴族間の婚姻に関しては王家が後ろ盾となり、貴族達に周知する。
「それに、そんなものが無くても……ねぇ、皆様?」
レジーネは笑いを堪えられないという様にニッコニッコである。
「本当に!あんな場面を見せられてはね?」
「きゃぁぁぁ…!!思い出させないで下さいませ!!」
「分かる!分かりますわ!」
「だって、だって!あの、ゴーリッシュ騎士団長様がですよ!」
「そうなんです!あの、ゴーリッシュ騎士団長様が!!」
「あんなにもゆっくりと、見せつける様にして……!!」
パタパタパタ、令嬢達のお行儀はあまりよろしくないが、可愛いらしく小さく足踏みをしながら何かに耐え続けている。
見せつける様に、とは、きっといつもの調子でイヤーカフを表に出そうとしていたから、だと思う…でも、それでも?
「あの、ヒュンが、どうか?」
「「「ヒュン!!??」」」
「これは、愛称呼びなんて……だって婚約者ですもの!」
「当たり前、当たり前、当たり前……よし、いいですわよ!次どうぞ!」
「これくらいで、騒いでみっともないですわ……くぅ……!」
何がどうして、こんなに友人達が身悶えているのかわからないのだが、このテーブルに座っている者達の温度差が物凄いことになっているのは分かる……
そして、令嬢達の視線はずっと、右耳に集中している様で……
「ウリート様、少し、少しだけ…イヤーカフを触ってみても?」
恐る恐るスザンナが申し出た。
「まぁ!およしなさいな!いくら興味本位とはいえ、ここは王城。ゴーリッシュ騎士団長様に通じる方々の目は沢山ありましょう?それを外したり、触らせたりなんてしたら……どれ程恨まれてしまうか分かりませんわよ?」
「そ、そうですわよね……あれだけ見せ付けていらしたんですもの…」
「そんな事になったら、私達ばかりではありませんわ。きっと、ゴーリッシュ騎士団長様の悋気はウリート様にも向いてしまいましょう?」
「まあ!そんな……お仕置きされても、心苦しいですわね……」
「いえ、そんな時ほどあれ、が役に立つのでは無くて?」
「そう!アレですわ…」
「使い心地も、装着時の姿も私達は見らませんけれど…」
「なんて事ないですわ。そこは、報告を待って想像力をですね…」
3人共声を潜めて何やら相談を初めてしまった。
「えぇっと…ユーリ様…あの、こんな所で申し訳ないのですが…いつぞやは、ご実家の蜂蜜を頂きまして……」
声をかけてもいいものやら、少し迷った挙句にウリートは話しかける。
「ま、あれですね?」
「ファーム家の物は有名ですものね?」
大きく瞳を開くユーリに、頷くスザンナ。
「と、言うことは、アレも一緒にお使いになった?」
「……はい………」
訳知り顔のレジーネの瞳が今まで以上にキラリと光る。逃すまじ、との気迫が篭る視線を受けて、ついポロリとウリートは返答してしまった……
ジワジワと顔が熱くなる……
「それで、後学の為、お聞きしますけれど、使い心地はどの様な?」
「レジーネ様!!そんな事、こんな所では行けませんわ。」
「そうですわね!こんなに楽しい話を他の方々に聞かせたくなどありませんわ!」
「どうです?中のサロンに移動しませんこと?」
令嬢に囲まれて、こんなに圧を感じた事があっただろうか?3人共、お茶もお菓子も忘れ去って、ウリートの両手をがっしりと掴んで離さない。
「えっと、皆様?」
そのままの勢いで、室内に連れ込まれそうになった所で、アランドを伴ってヒュンダルンが迎えにきてしまったので自然にお開きとなったのである。
勿論、直接声をかけてくる者達はいないものの、遠巻きにしている者達は足を止め、歩いて行く二人を目で追っている。
「では、後で…アランドも連れてこよう。楽しんで?」
庭園入り口での別れ際にも、ヒュンダルンはウリートの右耳をしっかりと出す事を忘れなかった……
「お久しゅう~~!!ウリート様!!」
「こちらへ!お早くこちらへ!!」
ソロっと会場を見渡せば、見知った3人が小さく手を振りながら、椅子から少し立ち上がってウリートを手招いている。
「ああ!ウリート様ですわ!」
何故だか皆様キラキラと瞳が輝いている様に思います。お元気そうでなりよりでした。
「お久しぶりです。レジーネ様、ユーリ様、スザンナ様!!」
懐かしい友人のニコニコ笑顔にウリートもつい釣られて満面の笑みになる。色とりどりの花々に、香りの良いお茶と沢山のお菓子。友人とも会えてこんなに楽しめる時はないと思う。
「まあまあまあ!なんて良い笑顔ですの!婚約された者の余裕と言いますのかしら?幸せオーラと言いますか!」
「本当ですわ!以前より肌艶も良く、少し頬がふっくらとされて?また魅力が増したのですもの!ゴーリッシュ騎士団長様のあの態度も十分分かりますわね!」
「ええ、ええ!ウリート様、その……右耳に、輝くのはやはり…」
「はい……あの…婚約の、記念の品で……」
「きゃああ!!やっぱりですわ!」
「もう、色を見れば分かりますわよね!」
「あの…?それより、皆様ご存知でしたか?」
ヒュンと、婚約した事を……
一呼吸大きく深呼吸してから令嬢達は話し出す。
「勿論でございますわ!ご婚約後は両家からの報告が王家に集まるのです。そこで了承が得られなければ婚約どころではありませんもの。」
「そうですのよ?そして王家からは貴族間への通達がございますの。」
「既に婚約しているのに、新たに申し込みが来る事を防ぐ為です。」
貴族間の家柄によっては高位の家からの申し込みは非常に断りにくいものである。婚約を結んだ両家よりも更に高い家柄からの申し出が入った場合、穏便に引いては貰えない事態も発生するそうだ。その為貴族間の婚姻に関しては王家が後ろ盾となり、貴族達に周知する。
「それに、そんなものが無くても……ねぇ、皆様?」
レジーネは笑いを堪えられないという様にニッコニッコである。
「本当に!あんな場面を見せられてはね?」
「きゃぁぁぁ…!!思い出させないで下さいませ!!」
「分かる!分かりますわ!」
「だって、だって!あの、ゴーリッシュ騎士団長様がですよ!」
「そうなんです!あの、ゴーリッシュ騎士団長様が!!」
「あんなにもゆっくりと、見せつける様にして……!!」
パタパタパタ、令嬢達のお行儀はあまりよろしくないが、可愛いらしく小さく足踏みをしながら何かに耐え続けている。
見せつける様に、とは、きっといつもの調子でイヤーカフを表に出そうとしていたから、だと思う…でも、それでも?
「あの、ヒュンが、どうか?」
「「「ヒュン!!??」」」
「これは、愛称呼びなんて……だって婚約者ですもの!」
「当たり前、当たり前、当たり前……よし、いいですわよ!次どうぞ!」
「これくらいで、騒いでみっともないですわ……くぅ……!」
何がどうして、こんなに友人達が身悶えているのかわからないのだが、このテーブルに座っている者達の温度差が物凄いことになっているのは分かる……
そして、令嬢達の視線はずっと、右耳に集中している様で……
「ウリート様、少し、少しだけ…イヤーカフを触ってみても?」
恐る恐るスザンナが申し出た。
「まぁ!およしなさいな!いくら興味本位とはいえ、ここは王城。ゴーリッシュ騎士団長様に通じる方々の目は沢山ありましょう?それを外したり、触らせたりなんてしたら……どれ程恨まれてしまうか分かりませんわよ?」
「そ、そうですわよね……あれだけ見せ付けていらしたんですもの…」
「そんな事になったら、私達ばかりではありませんわ。きっと、ゴーリッシュ騎士団長様の悋気はウリート様にも向いてしまいましょう?」
「まあ!そんな……お仕置きされても、心苦しいですわね……」
「いえ、そんな時ほどあれ、が役に立つのでは無くて?」
「そう!アレですわ…」
「使い心地も、装着時の姿も私達は見らませんけれど…」
「なんて事ないですわ。そこは、報告を待って想像力をですね…」
3人共声を潜めて何やら相談を初めてしまった。
「えぇっと…ユーリ様…あの、こんな所で申し訳ないのですが…いつぞやは、ご実家の蜂蜜を頂きまして……」
声をかけてもいいものやら、少し迷った挙句にウリートは話しかける。
「ま、あれですね?」
「ファーム家の物は有名ですものね?」
大きく瞳を開くユーリに、頷くスザンナ。
「と、言うことは、アレも一緒にお使いになった?」
「……はい………」
訳知り顔のレジーネの瞳が今まで以上にキラリと光る。逃すまじ、との気迫が篭る視線を受けて、ついポロリとウリートは返答してしまった……
ジワジワと顔が熱くなる……
「それで、後学の為、お聞きしますけれど、使い心地はどの様な?」
「レジーネ様!!そんな事、こんな所では行けませんわ。」
「そうですわね!こんなに楽しい話を他の方々に聞かせたくなどありませんわ!」
「どうです?中のサロンに移動しませんこと?」
令嬢に囲まれて、こんなに圧を感じた事があっただろうか?3人共、お茶もお菓子も忘れ去って、ウリートの両手をがっしりと掴んで離さない。
「えっと、皆様?」
そのままの勢いで、室内に連れ込まれそうになった所で、アランドを伴ってヒュンダルンが迎えにきてしまったので自然にお開きとなったのである。
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