[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

文字の大きさ
105 / 135

106、叶えた想い 3

しおりを挟む
「ウリー、ただいま…」

 優しい低い声と共に、温かなキスがそっと降ってくる。

「ん………ヒュン?」

 どうやらグッスリと寝入ってしまっていた様だ。思っていたよりも身体は疲労していたのだろう。

「ああ…大丈夫か?」

 そっと、ヒュンダルンはウリートの身体をさすってくる。目が覚めて、昨日ぶりにしっかりと顔を合わせた愛しい人がする心配が、身体の事…

 ボッと火がついた様にウリートの顔が熱くるなる。

「ククク…凄いな?」

 楽しそうに、嬉しそうに、クスクス笑うのを辞めもせずに、ヒュンダルンはウリートにキスを降らせる。

 出来れば少しだけ、落ち着いてからにしてほしい…まだ、実は昨日の感覚が、身体に残っているから…

 マリエッテに入念に解して貰ったと言っても、昨日の名残は未だに健在で…ヒュンダルンに触られれば触られるほど、鮮明に蘇ってくる………

「ヒュン!からかわないで下さい!」

 ちゃんとお帰りなさい、を言いたかったのに…大変なことになる前に、抗議でヒュンダルンの悪戯を止めてしまった…

「マリエッテが食事を用意してくれている。少し早いが、晩餐を頂こう?」

 そんなウリートをヒュンダルンは眩しそうに瞳を細めて見つめてきては、嬉しそうに頬に柔らかくキスを送ってくる。

 晩餐…そんな時間まで見事に寝入ってしまっていた…通りでお腹も空くはずで、ウリートはヒュンダルンの言われるがままに食事をする為にベッドを降りた。
 
 部屋には既に食事の用意が整えてあって、温かなスープからは湯気が立ち上って空腹を刺激し出した。けれども、部屋には給仕のメイドもマリエッテもいない。何よりも、いつもマリエッテがしてくれる様なあれこれを目の前のヒュンダルンが行っている。

「あの、ヒュン、マリエッテは?」

 ヒュンダルンが引いてくれた椅子にそっと腰掛けながら、ウリートは疑問を口にする。

「今は外して貰っているんだ。俺が、ウリーと二人でいたい。」

 ウリートの隣に椅子を引いてきたヒュンダルンがウリートの頬を撫で上げる。

「ヒュン…」

 二人で居たいのはウリートもだ。目が覚めてからずっと、ヒュンダルンの顔が見たくて、声が聞きたくて、気配でもいいから感じていたかった。

「寂しかったです…ヒュン、何処に?」

 いそいそとウリートの皿の肉を切って、ヒュンダルンはウリートの口にそれを持ってくる。そんな事をしてもらうほど弱っているわけではないのだが、嬉しそうにしているヒュンダルンを見るのが嬉しくてウリートもそれを受け入れていく。

「悪かった…今日でなければならなかった事があってな…ウリーの側にいたかったのに…怒ったか?」

「いいえ。お仕事であれば仕方のない事でしょう?無事に終わりましたか?」

「あぁ、問題ない。休みももぎ取ってきた。」

「お休み、ですか?」

 ぱぁ………とウリートの顔が更に明るくなる。休みがあれば、ヒュンダルンはずっと邸にいてくれる事だろうから。恥ずかしげもなく、心が躍ってしまう。

「そうだ…二人きりで過ごそう?」

 その言葉の響きが、やけに色っぽいのは気のせいだろうか?あんな時間を過ごしたのだから、色気の何たるかも嫌と言うほどウリートの目に焼き付いてしまってる…

 記憶を…消したい…かも知れない。一緒にいるのは物凄く幸せなのに、蘇る記憶が邪魔をして非常に落ち着かないのだ。けど、本当に消したいかと言ったら、絶対に嫌で、複雑すぎる心境だった。

「嫌か?」

 複雑そうな顔をしていたんだと思う。控えめに苦笑したヒュンダルンがそんな気弱な事を聞いてくる。

「嫌だなんて、思いません!」

 これは本当…二人でいられる事の嬉しさを誤魔化すことなんてもう、出来ないのだから。

「そうか、それは良かった。」
 
 酷く嬉しそうに、ヒュンダルンは柔らかく微笑む。その笑顔一つとってもウリートにはかけがえの無い宝物の様に見える。

 も、何も嫌って、言えないかも……

 そのまま食事をヒュンダルンに食べさせて貰って、ヒュンダルンは浴室へと消えていく。

 ウリートは眠る前に入浴も済ませたからゆっくりとしている様に、とヒュンダルンに言い置かれているのだが……ゆっくりも何も今まで寝ていて、なんなら今日はほとんど寝ているだけだ。病気でもないのに少し、寝過ぎの様な気もしてくる。

 ヒュンダルンとウリートの部屋には今、ウリート一人きり。いつもならばマリエッテや他のメイドもいる事もあり、完全に一人になる時は眠る時くらいだろうか。だからしっかり目が覚めているこんな時、一人きりで時間を過ごすのは珍しい事だった。

 グルグルと記憶は巡る………

 誰もいないのに、つい、両手で顔を隠してしまう………

 昨日の記憶は、凄かった、の一言で……
世間のご夫婦は、あれを毎日……?

 夫婦の心得書…実家から送ってもらおうかな……?

 身体が変にモジモジしてくる前に、ウリートは必死にこれからの事についてあれこれ考えを巡らせた。
 





















しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

処理中です...