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107、叶えた想い 4
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「ウリー、寝たのか?」
入浴を終えたヒュンダルンが部屋に戻ってきた。バスローブにまだ濡れて水気が滴る赤い髪。
あ、拭いてあげないと、風邪を引く。
幼い頃からマリエッテにしていてもらっていた事でウリーにも身についている習慣の一つだ。
「ヒュン…拭かないと…」
横になっていたウリートは起き上がってヒュンダルンの髪を拭くために近づいて、ヒュンダルンが小箱を持っているのに気がついた。
「それは……?」
ヒュンダルンの髪を拭きながら箱に目を止めたウリートだが、どうにも見覚えが無い物だ。
「あぁ、友人から送られた物でな。」
「プレゼントですか?」
ウリートが髪を抜きやすい様に、ヒュンダルンはわざわざ身を屈めてくれる。優しく、手早く、マリエッテが教えてくれた技が生かされる。
エーベ公爵家生まれで、ゴーリッシュ侯爵家の跡取りに決まっている高位貴族のヒュンダルンだ。贈り物の一つや二つ珍しい物ではない。が、わざわざ二人の寝室に持ってくると言う事が、何やら珍しい、事で……
前にも、こんな事、あった様な………?
なんとなく、既視感を感じているウリートを片手で抱き寄せて、ヒュンダルンはその髪にキスを落とす。
「中を……見ても…?」
その為にヒュンダルンは持ってきたのだろうし…
「願いを叶えても良いんだろ?」
「願い?」
僕を、欲しいと言ったヒュンの願い…けれどもこれは僕の願いだって、横取りした形になってしまったんだった…
「何です?ヒュン?」
あんまりにもヒュンが優しく静かに微笑んでいるから、その表情に吸い込まれていきそうになる。昨日の事を考えると羞恥が勝つのに、今のヒュンを見てると物凄く甘やかしたくなる。
そっと、ウリートはヒュンダルンの頬に手を当てて、男らしい精悍な頬をサワサワと撫でる。スリ…と頬を擦り付けてくれる様が可愛いと思う…こんな事を言ったら怒るかな…?
ベッドの上で………
中を見たいと言ったら、こんな風に艶かしく言われてしまって、大人しく従ってしまう僕に、ヒュンは呆れないだろうか?
多分、あちらの道具だろうと思っていたのは見事に当たり、ヒュンは優しい笑顔を変えないまま、僕の両手にそれを装着してくれた。
「あの、これ?」
「いいんだろう?願い事をして…?」
願い事…ヒュンダルンがウリートに装着したのは、柔らかなウサギが何かのファーでできた手錠だ……薄ピンクのファーには沢山の宝石が埋め込まれている。一番目につく所には大きな深い緑のエメラルド…そして手錠を一周する様に濃さの違う赤い小さな宝石で獅子の模様を作り出すようにびっしりと埋め込まれてる……
赤獅子……巷で言われているヒュンダルンの二つ名と、緑の石は今、真剣にウリートを見つめてくるヒュンダルンと同じ色…
これでは…こんな小道具にでさえ、ウリートがヒュンダルンに支配されているヒュンダルンのものだって、言い聞かされている様な気がしてならない。
「……………………」
「どうした?ウリー?」
マジマジと手錠を観察した後、何も言えずに真っ赤になってしまったウリートにヒュンダルンが、声をかけてくる。
「これ………」
「ん?」
「これが、ヒュンの望みですか?」
優しく、キスを落としてくれるヒュンダルンにはきっと嗜虐趣味は無いだろう…けれども、これが望みなら…
ポフッ……とウリートはベッドに押し倒された。
「そうだな…最初から、こうすればよかったとさえ思うくらいには本気かな……」
ウリートを自分の元に繋いで閉じ込めて、外に出さないようにしたのなら…倒れて死にかける事も、不埒な輩に触られるような事もなかったはずだからだ。
けれど………
「ヒュンは…僕の意思を尊重してくれていましたよ?」
しなかったでしょう…?
そう、出来なかった。独り占めして、自分の事だけ見てくれればと何度も思ったものなのだが、未だにそれは出来ずじまい…
「卑怯な男にはなりたくなかった…」
力と暴力で押さえつけても、ウリートの心は手に入らないだろうから…大事にしかかったのも嘘では無い。
「だが、今ならいいんだろう?」
ニヤッと笑うヒュンダルンの笑顔には、精悍さがいつにも増して、肉食獣の様な鋭い眼光も、男らしくて…ゾクゾクする…
「……はい…勿論…」
豪奢な腕輪をチャリと鳴らしつつ、ウリートはキュッとヒュンダルンのバスローブを握りしめる。
「僕を縛り付けるのも、僕の伴侶となって下さる貴方の特権でしょう?ヒュンの望むものを、どうぞと言いましたよ?」
「ふ…後悔するなよ?ウリー…」
言葉から伺える不穏さを否定するが如くの優しく深いキスを落としながら、ヒュンダルンはウリートに覆いかぶさってきた。
入浴を終えたヒュンダルンが部屋に戻ってきた。バスローブにまだ濡れて水気が滴る赤い髪。
あ、拭いてあげないと、風邪を引く。
幼い頃からマリエッテにしていてもらっていた事でウリーにも身についている習慣の一つだ。
「ヒュン…拭かないと…」
横になっていたウリートは起き上がってヒュンダルンの髪を拭くために近づいて、ヒュンダルンが小箱を持っているのに気がついた。
「それは……?」
ヒュンダルンの髪を拭きながら箱に目を止めたウリートだが、どうにも見覚えが無い物だ。
「あぁ、友人から送られた物でな。」
「プレゼントですか?」
ウリートが髪を抜きやすい様に、ヒュンダルンはわざわざ身を屈めてくれる。優しく、手早く、マリエッテが教えてくれた技が生かされる。
エーベ公爵家生まれで、ゴーリッシュ侯爵家の跡取りに決まっている高位貴族のヒュンダルンだ。贈り物の一つや二つ珍しい物ではない。が、わざわざ二人の寝室に持ってくると言う事が、何やら珍しい、事で……
前にも、こんな事、あった様な………?
なんとなく、既視感を感じているウリートを片手で抱き寄せて、ヒュンダルンはその髪にキスを落とす。
「中を……見ても…?」
その為にヒュンダルンは持ってきたのだろうし…
「願いを叶えても良いんだろ?」
「願い?」
僕を、欲しいと言ったヒュンの願い…けれどもこれは僕の願いだって、横取りした形になってしまったんだった…
「何です?ヒュン?」
あんまりにもヒュンが優しく静かに微笑んでいるから、その表情に吸い込まれていきそうになる。昨日の事を考えると羞恥が勝つのに、今のヒュンを見てると物凄く甘やかしたくなる。
そっと、ウリートはヒュンダルンの頬に手を当てて、男らしい精悍な頬をサワサワと撫でる。スリ…と頬を擦り付けてくれる様が可愛いと思う…こんな事を言ったら怒るかな…?
ベッドの上で………
中を見たいと言ったら、こんな風に艶かしく言われてしまって、大人しく従ってしまう僕に、ヒュンは呆れないだろうか?
多分、あちらの道具だろうと思っていたのは見事に当たり、ヒュンは優しい笑顔を変えないまま、僕の両手にそれを装着してくれた。
「あの、これ?」
「いいんだろう?願い事をして…?」
願い事…ヒュンダルンがウリートに装着したのは、柔らかなウサギが何かのファーでできた手錠だ……薄ピンクのファーには沢山の宝石が埋め込まれている。一番目につく所には大きな深い緑のエメラルド…そして手錠を一周する様に濃さの違う赤い小さな宝石で獅子の模様を作り出すようにびっしりと埋め込まれてる……
赤獅子……巷で言われているヒュンダルンの二つ名と、緑の石は今、真剣にウリートを見つめてくるヒュンダルンと同じ色…
これでは…こんな小道具にでさえ、ウリートがヒュンダルンに支配されているヒュンダルンのものだって、言い聞かされている様な気がしてならない。
「……………………」
「どうした?ウリー?」
マジマジと手錠を観察した後、何も言えずに真っ赤になってしまったウリートにヒュンダルンが、声をかけてくる。
「これ………」
「ん?」
「これが、ヒュンの望みですか?」
優しく、キスを落としてくれるヒュンダルンにはきっと嗜虐趣味は無いだろう…けれども、これが望みなら…
ポフッ……とウリートはベッドに押し倒された。
「そうだな…最初から、こうすればよかったとさえ思うくらいには本気かな……」
ウリートを自分の元に繋いで閉じ込めて、外に出さないようにしたのなら…倒れて死にかける事も、不埒な輩に触られるような事もなかったはずだからだ。
けれど………
「ヒュンは…僕の意思を尊重してくれていましたよ?」
しなかったでしょう…?
そう、出来なかった。独り占めして、自分の事だけ見てくれればと何度も思ったものなのだが、未だにそれは出来ずじまい…
「卑怯な男にはなりたくなかった…」
力と暴力で押さえつけても、ウリートの心は手に入らないだろうから…大事にしかかったのも嘘では無い。
「だが、今ならいいんだろう?」
ニヤッと笑うヒュンダルンの笑顔には、精悍さがいつにも増して、肉食獣の様な鋭い眼光も、男らしくて…ゾクゾクする…
「……はい…勿論…」
豪奢な腕輪をチャリと鳴らしつつ、ウリートはキュッとヒュンダルンのバスローブを握りしめる。
「僕を縛り付けるのも、僕の伴侶となって下さる貴方の特権でしょう?ヒュンの望むものを、どうぞと言いましたよ?」
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