[完]番Ωの空白の30分 αの手から零れ落ちたΩの落ちる先は…

小葉石

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2 番(つがい)*

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「松花、まり、ただいま…」

 光生はあの後羽織の護衛の確認後急いで家に帰って来た。本家である実家の広大な土地の一画に自分と妻達とのこじんまりとした一軒家が建てられており普段はここで寝起きしていた。その家に一歩入れば松花の香りで家中満ちていた。

「…あっ…こうっ……」

 むせる様な香りを放っている松花はリビングのソファーで丸くなり必死に体の熱に耐えていた様だ。光生の姿を確認するとフルフルと腕を伸ばして来る。

「光君!お帰り!松花ちゃんずっとここで待ってたの。」

 まりがキッチンから顔を出す。

「抑制剤……飲まなかったのか…?」

「うん。頑張るって…」

 Ωは発情期でも軽めの抑制剤を飲めるしその方が少し動く事が出来て本人も楽になるのだが、早くに子供をと望まれていることを知っているΩの妻達は発情中は飲まない事が多いのだ。

「…ふぅ……まり、済まないけど…」

「いい、分かってるから行ってあげて。辛いの分かるもの。光君もでしょ?後で軽く食べれるお夕食作っておくからね。落ち着いてから、はお君の容態聞かせてね?」
 
 幼い時からこの妻達は一緒に暮らし成長と共に夫婦になった自分達だからか、互いに嫉妬し合う事なくこの共同生活は上手く成り立っている。

 だから、まりや松花では無い。

 丸まったままの松花を軽々と横抱きに抱き上げ光生は確信する。羽織をあそこ迄追い詰めたのは他の者だ、と。




「あっ…あっ…あっ…」

 松花に宛てがわれている部屋に入れば光生は脇目も振らずにベッドへと急ぐ。そして松花をベッドへと下ろし終わらぬうちに、その柔らかい唇を貪り吸い上げた。抑制剤を飲まない番Ωの匂いにはαの光生は半端なく煽られ、理性などもうどちらも残すつもりもないだろう程にただ相手だけを求めてしまう。
 着ていた制服を脱ぐのにももどかしく、半ば破り捨てる勢いでタイもシャツもスラックスも全てかなぐり捨てて松花の体を貪っていく。松花はほぼ半裸だ。発情と共にΩの体温は上がりその熱に耐えかねる様に衣類を脱ぎ捨てるから。

 猛り立った昂ぶりを今か今かと待ち望んでいる秘部にあてがい、光生は予告無く一気にその熱を松花の最奥まで埋め込んだ。松花は仰け反り深く深く光生を飲み込んだまま何度も身体を戦慄かせ達する。

「松花……くっ…我慢させて悪かった…」

 ピクピクと身体の震えが止まらない松花の長いウェーブのかかった髪をゆっくりと撫でながら耳元で低く囁く。自分と番となったからには性的なペアは生涯自分となる。Ωは例え気持ちが他の誰かに向いていても体が自分の番でなくては反応しないし満たされないし受け入れられなくなるからだ。

「あっぁん…こっう…だっ…」

 快感の涙を潤ませながら未だに絶頂の波が引き切らない松花は、愛しい者の名前を呼ぶ。

「しぃっ松花…その名前はダメだ…誰が聞いているか分からないから…にしておけ……」
 
 松花の中のウネリを耐えた光生は徐々に動き出し、濡れそぼった松花の中を十分に堪能する様に松花の中で更に容量を増した自身を深く深く、ググッと沈めていく。

「ひぁっあぁあっ……ぁぁあぁぁっ!」

 最早両者とも理性など飛んでいる。ただ相手を欲して感じるままに動くのみ。妻たちの中では一番理性的で慎重派の松花が思わず口にしたのは光生の名前では無い。
 
 天翔 光大……光生の父の名前だ…

 いつからか、松花が憧れの様な目で父を見つめているのを光生は知っていた。けれど、自分達は最早番となるべく合わされていて、引き戻せない状態だった。松花もこのままでいいのか随分と悩んだ様だ。それをここにいる妻達も皆んな知っている。知っていて松花は光生の番となった。勿論父、光大にも妻がいる。光生の母にその他子を為せなかった妻も複数いた。何故か産まれたのは光生だけで他に兄弟もいないから一族の期待と責任を光生は一人で負わなければならないしその光生の負うプレッシャーを松花も良く知っていた。
 松花は光生の父光大の物になる事が出来ないならば、今後一番光大の近くで働き信頼を得るだろう者(光生)の側にいる決意と光生を支える決心をしたのだ。

 理性も飛んでしまう情欲、快楽の中でのみ、松花は愛しい者の名前を呼ぶ…この位の時しか松花は自分を解放する事が出来なかったから。
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