[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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4 精霊の贈り物

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 北へ……レギル王子一行は北を目指す。同行者は多くは無い。幼少の頃から親しく気心の知れた騎士ヨシット・ルーランと魔術に聡い宮廷魔術士のマラール、薬学、治療に秀でるコアット・ホーネル、この四名…
国の至る所で天災と災害、疫病続きなものだから優秀な人材を更に集めたくてもこれ以上の人員はどうしても裂けなかった…

「さて、王子、北と言えども広いですぞ?どちらから参ろうか?頭を悩ませますな?」

 王子よりも父王に歳が近いマラールの眉間の皺は濃い…目指すは北…情報はこれだけ。広大な大地に目をやって北のどこに向かえばいいのか考えあぐねてしまう。

「ふぅ…マラール先生、の魔術は?」

「王子、あれは行く場所が分かっていれば有効ですぞ。しかし…地図の中からいくつか絞りましょうか?」

 北の地の国々は数百年、又はそれ以上に続いている国だ。龍の住処となる様な場所が有れば封印されるか、要注意、曰く付きの地として述べ伝えられることもあるだろう。しかし、近年魔術の傍ら伝説の龍の生態について研究をして来たマラールの耳にもこの国々からその様な情報は得られていない。どの国に行っても何処を調べてもいいと言う太っ腹な対応でカシュクール国の魔術士マラールを迎えてくれていた。よって、友好国に龍が隠されている、と言う線は非常に低い…
 と、なれば未開地だが、こちらの選択は誤れば王子一行が全滅の憂き目に会う危険も伴うものだ。進むべき道は慎重に選ばなくてはならない…

「虱潰しにって言うのも…」

「ヨシット…それには時間が…」

「だよな…だったら目星はつけて行かなければな…」

"探し物を見つけて………"

「ん?精霊語か?」

 何とは無しに、レギル王子はそう呟いた。シェルツェインから学んだものは世界の理と精霊語だけでは無い。類の精霊語をこれでもかと叩き込まれた記憶がある。現世に生きる人間の中にはマラールの様に魔術に精通する者もいるにはいるが、かつて人類が龍と共に生き、精霊との交渉が活発に行われていた時と比べて、魔術を手放し、精霊を忘れ去ってしまった人々の方が圧倒的に多い。

 だから、レギル王子も忘れていたんだ。シェルツェインが何の為にをレギル王子に教え込んでいたのか。

 レギル王子が呟くと、パチンッと王子の目の前で火花が散った…よろりと騎乗で体勢を崩し、危うく落馬しそうになる。幼少期より文武両道を心掛けたレギル王子が今更落馬など言語道断とも言える失態であるにもかかわらず、思わずよろけてしまう程目の前の事に驚いた。

「王子!」

 騎士でもあるヨシットが機敏に動き、レギル王子の落馬は免れる。

「……大丈夫だ…すまない…」

「一体何があったんです?体調が優れないのですか?」

 今、正に出発しようとした所で、ここでレギル王子まで倒れてしまっては最早全てがお終いだ…

「どうなされました!」

 コアットが駆け寄り、レギル王子の手を取り脈を見る。

「大丈夫だ。心配かけて済まない。目の前で火花が散った…それで驚いてしまった…」

「火花、ですか?」

 ヨシットは周囲を注意深く観察してみるが周辺には誰もいない。そもそも火花を出せる様な物資など既にこの国には無い…
 
「……精霊の贈り物、か………」

「王子?精霊とは?」

 ポツリと呟いた王子の声をマラールは拾っていた。

「北への道が、示された…」

 信じられない事に、火花が散った後のレギル王子の目には頭上高くに一本の糸のような虹色の光がずっと北へ向かって続いているのが見えている。

「何ですと?」

「北に向かって、道標が…」

 レギル王子の指差す方は紛れもない北の未開の地の方角…

「シェルツェインにこれ以上無い感謝を示したくなって来た。」

「成る程!精霊の技ですか!」

「マラール先生、今私は何と呼ばれるべきでしょうね?」

「ふふ…勿論、精霊の愛子と……!!」




 皆は体勢を立て直し、それぞれの馬に騎乗した。レギル王子が示す方には間違いなく迷い森がある。しかし、先程の様に恐れは感じなかった。ここでしっかりと王子に示されたのだ。

 精霊の加護ここにあり、と。

 迷い森は間違いなく精霊が護る森の一つ…加護なしでは勝算も見えなかっただろう。ついぞ見て取れなかった精霊の愛子の名を自信を持って口にする幸にマラールは感謝した。 

「シェル……ありがとう……」

 馬を進めるその中で、レギル王子は誰に言うとも無しにシェルツェインに向かって再度感謝を述べる。城の塔では無いからここに契約者では無いレギル王子がシェルツェインを呼ぶことはできないが風の精霊にはそんな事関係ない。どこにいても何をしていてもきっとレギル王子を見ているに違いなかったから。堅苦しく王子の立場ではなく、幼い頃の様に純粋に心から親しみを込めて感謝を伝えたかった。
 馬を走らせているレギル王子の頬を優しく温かい風がよぎる。

"良いのよ。愛子いとしごの旅が素敵なものとなります様に…"

 レギル王子の耳をかすめた風が、そんな風に囁いているシェルツェインの声の様に聞こえた。
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