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10 何時迄も
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いつからだったか、もう覚えていない。産まれて卵の時にここに預けられた。周りには同じ様な卵が沢山あって、皆んなここで産まれていくんだと分かった。
そこはとても心地よく、日の光の中お昼寝するにも周りを飛び交う綺麗なヒラヒラした物の気配を追うのも楽しかった。
時期が来れば卵はかえり、皆んな大人になって行く…地を這っていたものが空を飛ぶ様になって、その鮮やかさと軽やかさ、優美さや眩しさにうっとりとしながら眺めるのが本当に好きだった…
けれどある日卵は気がつく…
僕はいつ孵化するの?
ここに来てからもう随分と経つ。何回、卵たちの孵化を見て、ヒラヒラと宙を舞っていく姿を見送り、帰って来なくなった兄弟達を今も思う…?
いつまで?いつまで………?
この卵は違う……ここ蝶の谷の仲間の中で一つ異様に大きく輝く綺麗な卵。余りの綺麗さ、清浄さに周りの仲間は近付けないでいた。けれど、卵は何時も呼んでいる。
仲間を…友を…悲しくなるくらいの美しい声で…
最初の仲間は、言葉を教える為に沢山語りかけていた…
次の仲間は飛び方を教える為に…
次は蜜の採り方を…
卵の周りを舞っていた仲間達は次々と自分達が知り得る知識を卵へ落としていく…
しかし、卵が熟し輝いていけばいくほど仲間達は近くに行けなくなった。自分達の姿を哀れんでか?余りの眩さに恐れおののき、畏怖から卵の声に応えることにも躊躇して…
気がつけば…楽しそうに皆んなと一緒に話していた卵からは、仲間を友を呼ぶ声のみが何時も聞こえて来るようになっていた…何年も何年も一体どれほど待っていただろうか?
"どうしていつ迄も中に篭っているの?"
ある日、1匹の蝶は卵の周りを回り始める。それはとてもとても不思議な色をした蝶で光を浴びるとその羽は虹色に輝く蝶だった。
"誰も、側にいない…僕は一人だから……"
"あら?私がいるわ。出ていらっしゃいな。お話ししましょう"
それはとても穏やかな蝶だった。慈愛に満ちて、優しくて、暖かくて。この蝶の言葉一つ一つが卵の中に、渇いた地に水が染み込む様に吸い込まれていく…
"きっと、君も僕が嫌になるよ?皆んな、皆んな離れていっちゃった…"
寂しさから捻くれることもなく、ただ純粋に仲間を恋い慕う、素直な卵に蝶は微笑みかける。
"ふふふ、大丈夫。私がいる限りあなたを一人にはしないわ、さぁ!出ていらっしゃい!そして、あなたの名前を教えて頂戴。"
蝶は毎日卵の周りを舞、歌い、話しかける。いつしか卵も蝶と共に話し、輝きを増しつつ歌い出す…自分もこの蝶の様に美しく舞うんだ!希望に胸を膨らませて…
虹色の蝶はマリーアンヌと言った。仲間に名前があるのを初めて知った卵は驚く。
"ビックリする様な事じゃあ無いわ。貴方の中にもちゃんとあるの。私達精霊は産まれながらに名前を持っているわ。"
名前?僕の名前?
マリーアンヌ、マリーは言った。自分の中に名前はあるから、じっと心の奥を見てごらんなさい、と。
奥……心の奥……僕の名前……
"……リレラン……リレランだ、僕。"
"素敵!!リレラン!…ラン!!さぁ、出ていらっしゃいな。一緒に空を飛びましょう?一緒に歌を歌いましょう?私は教えてあげるわ。誰かと一緒にいる事は素敵だって!"
マリーは教えてくれる。僕も誰かと一緒にいていいんだって。そして、僕が好きだって…キラキラと煌く虹色の羽が僕を勇気付けて背中を押してくれる。何十年もしかしたら何百年も殻に閉じこもって孵化出来なかった僕に、惜しみない愛情を注ぎ込んでくれた。
"僕は、何色の蝶になるのかなぁ?"
こんなに孵化できる瞬間を待ち望んだことなんてない。マリーと一緒に飛ぶ空は何色だろう?彼女の七色に光る輝きを見ながら空を仰ぎたい。いつも下からしかマリーを見上げられないから、上から見るマリーの輝きも一緒なのか確かめたい。
とてつも無く孵化が楽しみになった。
"あぁ、綺麗ね。ラン……貴方の卵、輝いているわ…貴方は何色を貰うのかしら?早く見たい…"
マリーも楽しみにしてくれている…!ならば、早く孵化しなくては!どうやったら出れるのか、いつも仲間の孵化を見て来た。中から殻を打ち破れば良いんだ!卵の中で身を動かす。自由に身体は動く。後は殻を突いて、蹴って、押して、身を捻って刺激を与える。卵の殻にヒビが入り出口が見えるまで!
光が見えたら、そこが出口だ!さぁ、行こう!マリーと空を飛ぶんだ!
必死に体を動かして突いて捩って出口から顔を出したリレラン…外はやはり眩しく、でも爽やかで生き生きとした生命力に溢れていた。
"やっと顔を出したのね?ランのお寝坊さん。さぁ、貴方の全てを見せて頂戴!"
マリーアンヌの虹色の光は最大限の祝福の光をリレランに注ぐ……その光に包まれる様にゆっくりと卵を脱いで一歩一歩と外の世界にリレランは足を踏み出した…
"あぁ!!ラン!なんて美しいのかしら?それが貴方なのね?見て!貴方が見ている全てが貴方のものよ!"
蝶は舞う。祝福と歓喜を歌い叫びながら。乳白色の真珠の様な艶を纏った美しい龍の周りを………
そこはとても心地よく、日の光の中お昼寝するにも周りを飛び交う綺麗なヒラヒラした物の気配を追うのも楽しかった。
時期が来れば卵はかえり、皆んな大人になって行く…地を這っていたものが空を飛ぶ様になって、その鮮やかさと軽やかさ、優美さや眩しさにうっとりとしながら眺めるのが本当に好きだった…
けれどある日卵は気がつく…
僕はいつ孵化するの?
ここに来てからもう随分と経つ。何回、卵たちの孵化を見て、ヒラヒラと宙を舞っていく姿を見送り、帰って来なくなった兄弟達を今も思う…?
いつまで?いつまで………?
この卵は違う……ここ蝶の谷の仲間の中で一つ異様に大きく輝く綺麗な卵。余りの綺麗さ、清浄さに周りの仲間は近付けないでいた。けれど、卵は何時も呼んでいる。
仲間を…友を…悲しくなるくらいの美しい声で…
最初の仲間は、言葉を教える為に沢山語りかけていた…
次の仲間は飛び方を教える為に…
次は蜜の採り方を…
卵の周りを舞っていた仲間達は次々と自分達が知り得る知識を卵へ落としていく…
しかし、卵が熟し輝いていけばいくほど仲間達は近くに行けなくなった。自分達の姿を哀れんでか?余りの眩さに恐れおののき、畏怖から卵の声に応えることにも躊躇して…
気がつけば…楽しそうに皆んなと一緒に話していた卵からは、仲間を友を呼ぶ声のみが何時も聞こえて来るようになっていた…何年も何年も一体どれほど待っていただろうか?
"どうしていつ迄も中に篭っているの?"
ある日、1匹の蝶は卵の周りを回り始める。それはとてもとても不思議な色をした蝶で光を浴びるとその羽は虹色に輝く蝶だった。
"誰も、側にいない…僕は一人だから……"
"あら?私がいるわ。出ていらっしゃいな。お話ししましょう"
それはとても穏やかな蝶だった。慈愛に満ちて、優しくて、暖かくて。この蝶の言葉一つ一つが卵の中に、渇いた地に水が染み込む様に吸い込まれていく…
"きっと、君も僕が嫌になるよ?皆んな、皆んな離れていっちゃった…"
寂しさから捻くれることもなく、ただ純粋に仲間を恋い慕う、素直な卵に蝶は微笑みかける。
"ふふふ、大丈夫。私がいる限りあなたを一人にはしないわ、さぁ!出ていらっしゃい!そして、あなたの名前を教えて頂戴。"
蝶は毎日卵の周りを舞、歌い、話しかける。いつしか卵も蝶と共に話し、輝きを増しつつ歌い出す…自分もこの蝶の様に美しく舞うんだ!希望に胸を膨らませて…
虹色の蝶はマリーアンヌと言った。仲間に名前があるのを初めて知った卵は驚く。
"ビックリする様な事じゃあ無いわ。貴方の中にもちゃんとあるの。私達精霊は産まれながらに名前を持っているわ。"
名前?僕の名前?
マリーアンヌ、マリーは言った。自分の中に名前はあるから、じっと心の奥を見てごらんなさい、と。
奥……心の奥……僕の名前……
"……リレラン……リレランだ、僕。"
"素敵!!リレラン!…ラン!!さぁ、出ていらっしゃいな。一緒に空を飛びましょう?一緒に歌を歌いましょう?私は教えてあげるわ。誰かと一緒にいる事は素敵だって!"
マリーは教えてくれる。僕も誰かと一緒にいていいんだって。そして、僕が好きだって…キラキラと煌く虹色の羽が僕を勇気付けて背中を押してくれる。何十年もしかしたら何百年も殻に閉じこもって孵化出来なかった僕に、惜しみない愛情を注ぎ込んでくれた。
"僕は、何色の蝶になるのかなぁ?"
こんなに孵化できる瞬間を待ち望んだことなんてない。マリーと一緒に飛ぶ空は何色だろう?彼女の七色に光る輝きを見ながら空を仰ぎたい。いつも下からしかマリーを見上げられないから、上から見るマリーの輝きも一緒なのか確かめたい。
とてつも無く孵化が楽しみになった。
"あぁ、綺麗ね。ラン……貴方の卵、輝いているわ…貴方は何色を貰うのかしら?早く見たい…"
マリーも楽しみにしてくれている…!ならば、早く孵化しなくては!どうやったら出れるのか、いつも仲間の孵化を見て来た。中から殻を打ち破れば良いんだ!卵の中で身を動かす。自由に身体は動く。後は殻を突いて、蹴って、押して、身を捻って刺激を与える。卵の殻にヒビが入り出口が見えるまで!
光が見えたら、そこが出口だ!さぁ、行こう!マリーと空を飛ぶんだ!
必死に体を動かして突いて捩って出口から顔を出したリレラン…外はやはり眩しく、でも爽やかで生き生きとした生命力に溢れていた。
"やっと顔を出したのね?ランのお寝坊さん。さぁ、貴方の全てを見せて頂戴!"
マリーアンヌの虹色の光は最大限の祝福の光をリレランに注ぐ……その光に包まれる様にゆっくりと卵を脱いで一歩一歩と外の世界にリレランは足を踏み出した…
"あぁ!!ラン!なんて美しいのかしら?それが貴方なのね?見て!貴方が見ている全てが貴方のものよ!"
蝶は舞う。祝福と歓喜を歌い叫びながら。乳白色の真珠の様な艶を纏った美しい龍の周りを………
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