14 / 72
14 龍の卵 2
しおりを挟む
無数の蝶がレギル王子の前を先導?目隠し?をし、夥しい数の蝶に導かれて行く。
ゆっくりと王子の道を指し示してくれるので間違った方向には進んでいないと信じつつ蝶に促されるままに進んでいく。はっきり言って霧の中に迷い込んだ様な錯覚さえしてしまう程に蝶はレギル王子達に寄り添い離れようとしなかった。
「これで、良く迷いませんな……」
あまりの無数の蝶の数に辟易とさえして来たマラールの眉間にシワが寄る。
「本当に凄い。彼らはこんなに何処にいたんだろう?」
初めてこの谷を見たときには決してこんなにもの無数の蝶は絶対にいなかったのに……
「王の言葉に呼応して他の精霊が反応した様にも見えますな。」
「…うん……」
しばらく蝶との大行進は続いた。この広い谷の中にどれくらいの大きな龍が居るというのか……一歩進むたびにレギル王子の緊張も大きく膨らんでくる。
「王子、何かありました時は僭越ながらこの老いぼれが前に出ますぞ…後はよろしくお願いしましょう…」
落ち着いたマラールの声がすぐ後ろから響いてくる。
「先生……何を…」
「未来の若者を守り育てるのも魔術士の大事な使命ですからな。」
飄々と答えて行くマラールの声は悲観も恐怖も後悔も何も感じさせない落ち着き払った声だ。
「先生…!あなたは我が国カシュクールにとって大事な方だ。勿論、私にとってもです。その様な事態にならないように十分に気を付けてまいります…!」
蝶の道を歩いて行くたびにレギル王子は気を引き締める。先に祖国に立ったコアットとヨシットは無事にランダーン国を抜けられただろうか?国境警備隊に見つからないように上手く国境沿いに移動出来れば良いのだが…これから自分がどんな境遇に陥るかも分からないレギル王子だったが、無事にカシュクールに帰ると誓った仲間のことを今一度思い出してその誓いを心に刻む…
突然、目の前の蝶の群れが切れた…本当に切れた、としか言えないように突然と視界がバッと広がった。広がった先には大きな巨木。その周囲にヒラヒラと無数の蝶が散って行った。
"ここが…?"
龍がいると言う場所だろうか?禍々しい雰囲気などせず、先程と同じく清浄な空気。さっと辺りを見回しても龍と思しき巨体は無い。ので、つい周りにいる蝶達にここに龍がいるのか、と問うてみた。
"そう…ラン…"
"ほら…そこ!"
"寝てる、起きない…"
"話しかけても、答えない。"
先程よりもはっきりと、元気よく蝶達は答えた。そこ、と言うのだからには近くなのだろう。知らず、レギル王子は腰の剣に手を添えている。龍目掛けて抜刀など最早自殺行為でしかない様に思われるが、レギル王子とて剣術を磨き上げて来た手前、身を守ろうとすればやはり腰の剣に無意識に手が行く。
「先生…如何やらここのようです…が……」
「ふむ……」
囲んでいた蝶達はお役目御免とばかりに上空目掛けて霧散して行った。ここが終着点であるのは間違いがない。
「どこでしょうか?もしや、地中に?」
そうであればどの様に探せば?蝶達は寝てると言った。ではどうやって起こせば?ゆっくりレギル王子とマラールは巨木が守る様にしている空間に入って行く…
上空には蝶たちの煌めきや輝きが優しい光を落としている。しかし、一部地表にも他と違う輝きを放つ場所があるのにレギル王子は気が付いた。
「先生!あの部分、光っています!」
巨木の根本近く少しこんもりとしている物が目に入る。そこだけが妙な艶やかさで輝いているのだ。
「行ってみますかな?王子。何やら手掛かりはあるかもしれませんぞ。」
「分かった、行こう!」
レギル王子は完全に警戒を解かずに、先に進み出したマラールの後に続く。老いぼれが前に出ると先程言っていた通りにマラールはまず自分が盾となるつもりらしい…
「おお!!これは!!」
先を行くマラールが思わず、と言う様な声を出す。
「何があったのだ!?先生!」
レギル王子もマラールの横に立ち前方を確認する。マラールの視線の先には、あのこんもりとした物が静かに鎮座している。岩、にしては綺麗な丸みを帯びて、艶やかだ。形は卵にも似ていると言えば似ているが、こんなに大きな卵をレギル王子は今まで見たことなどない。大人の男の腰ほどはあろうそれは、乳白色の艶やかな光を放っている。
「卵……王子!!龍の卵ですぞ!!!」
マラールが興奮した声を出す。今まで古書にしか記されていなかった龍の卵。成体を見つけるよりも尚も難しく龍が飛び交うその時代にも見られるのは非常に希少な物であったと記されていた物だ。
「卵…これは龍の卵ですか?」
「おお、文献で見た通りだ!なんと、美しい
!」
卵………やっと見つけた龍が卵…確かにこれは見た事もない程美しい輝きで、きっと中の龍もそれはそれは美しいだろうと思わせる程のものだ。しかし、探しているのは卵ではない。天変地異に干渉できる力を持つ龍だ…!
レギル王子は真剣な目をしてマラールに尋ねる。
「先生…この龍で、カシュクールを救えるとお思いですか?」
ゆっくりと王子の道を指し示してくれるので間違った方向には進んでいないと信じつつ蝶に促されるままに進んでいく。はっきり言って霧の中に迷い込んだ様な錯覚さえしてしまう程に蝶はレギル王子達に寄り添い離れようとしなかった。
「これで、良く迷いませんな……」
あまりの無数の蝶の数に辟易とさえして来たマラールの眉間にシワが寄る。
「本当に凄い。彼らはこんなに何処にいたんだろう?」
初めてこの谷を見たときには決してこんなにもの無数の蝶は絶対にいなかったのに……
「王の言葉に呼応して他の精霊が反応した様にも見えますな。」
「…うん……」
しばらく蝶との大行進は続いた。この広い谷の中にどれくらいの大きな龍が居るというのか……一歩進むたびにレギル王子の緊張も大きく膨らんでくる。
「王子、何かありました時は僭越ながらこの老いぼれが前に出ますぞ…後はよろしくお願いしましょう…」
落ち着いたマラールの声がすぐ後ろから響いてくる。
「先生……何を…」
「未来の若者を守り育てるのも魔術士の大事な使命ですからな。」
飄々と答えて行くマラールの声は悲観も恐怖も後悔も何も感じさせない落ち着き払った声だ。
「先生…!あなたは我が国カシュクールにとって大事な方だ。勿論、私にとってもです。その様な事態にならないように十分に気を付けてまいります…!」
蝶の道を歩いて行くたびにレギル王子は気を引き締める。先に祖国に立ったコアットとヨシットは無事にランダーン国を抜けられただろうか?国境警備隊に見つからないように上手く国境沿いに移動出来れば良いのだが…これから自分がどんな境遇に陥るかも分からないレギル王子だったが、無事にカシュクールに帰ると誓った仲間のことを今一度思い出してその誓いを心に刻む…
突然、目の前の蝶の群れが切れた…本当に切れた、としか言えないように突然と視界がバッと広がった。広がった先には大きな巨木。その周囲にヒラヒラと無数の蝶が散って行った。
"ここが…?"
龍がいると言う場所だろうか?禍々しい雰囲気などせず、先程と同じく清浄な空気。さっと辺りを見回しても龍と思しき巨体は無い。ので、つい周りにいる蝶達にここに龍がいるのか、と問うてみた。
"そう…ラン…"
"ほら…そこ!"
"寝てる、起きない…"
"話しかけても、答えない。"
先程よりもはっきりと、元気よく蝶達は答えた。そこ、と言うのだからには近くなのだろう。知らず、レギル王子は腰の剣に手を添えている。龍目掛けて抜刀など最早自殺行為でしかない様に思われるが、レギル王子とて剣術を磨き上げて来た手前、身を守ろうとすればやはり腰の剣に無意識に手が行く。
「先生…如何やらここのようです…が……」
「ふむ……」
囲んでいた蝶達はお役目御免とばかりに上空目掛けて霧散して行った。ここが終着点であるのは間違いがない。
「どこでしょうか?もしや、地中に?」
そうであればどの様に探せば?蝶達は寝てると言った。ではどうやって起こせば?ゆっくりレギル王子とマラールは巨木が守る様にしている空間に入って行く…
上空には蝶たちの煌めきや輝きが優しい光を落としている。しかし、一部地表にも他と違う輝きを放つ場所があるのにレギル王子は気が付いた。
「先生!あの部分、光っています!」
巨木の根本近く少しこんもりとしている物が目に入る。そこだけが妙な艶やかさで輝いているのだ。
「行ってみますかな?王子。何やら手掛かりはあるかもしれませんぞ。」
「分かった、行こう!」
レギル王子は完全に警戒を解かずに、先に進み出したマラールの後に続く。老いぼれが前に出ると先程言っていた通りにマラールはまず自分が盾となるつもりらしい…
「おお!!これは!!」
先を行くマラールが思わず、と言う様な声を出す。
「何があったのだ!?先生!」
レギル王子もマラールの横に立ち前方を確認する。マラールの視線の先には、あのこんもりとした物が静かに鎮座している。岩、にしては綺麗な丸みを帯びて、艶やかだ。形は卵にも似ていると言えば似ているが、こんなに大きな卵をレギル王子は今まで見たことなどない。大人の男の腰ほどはあろうそれは、乳白色の艶やかな光を放っている。
「卵……王子!!龍の卵ですぞ!!!」
マラールが興奮した声を出す。今まで古書にしか記されていなかった龍の卵。成体を見つけるよりも尚も難しく龍が飛び交うその時代にも見られるのは非常に希少な物であったと記されていた物だ。
「卵…これは龍の卵ですか?」
「おお、文献で見た通りだ!なんと、美しい
!」
卵………やっと見つけた龍が卵…確かにこれは見た事もない程美しい輝きで、きっと中の龍もそれはそれは美しいだろうと思わせる程のものだ。しかし、探しているのは卵ではない。天変地異に干渉できる力を持つ龍だ…!
レギル王子は真剣な目をしてマラールに尋ねる。
「先生…この龍で、カシュクールを救えるとお思いですか?」
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる