[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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13 龍の卵 1

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 谷を降りていくレギル王子達の周りにも、ヒラヒラと蝶は舞い踊る。良く見てみれば、一匹一匹纏う色味が違っている。

「凄い…こんなに無数の蝶なのに、皆んな違う……」

 キラキラ輝きヒラヒラと夢の様に舞う蝶達を見ていれば、そう感嘆の声も上がる。

"……元気ない……"

「……?」

"…寂しがり…………"

「何を…?」

「どうかされましたか?」

 蝶の群れに侵入してみれば、微かに聞こえて来ていた精霊の声が言葉として聞こえてくる。

「蝶達でしょうか?何かを話している様ですが…」

「ほう?何と?」

「声が小さくて……」

 蝶は体自体が小さい。そしてヒラヒラと上に下にと移動をしているため、何かを囁いていてもどの個体が話しているのか突き止めるのが難しい…

「少し、私から話しかけてみましょうか?」

「そうして下さい。王子。」

"お初にお目にかかる。私はカシュクール国第一王子レギルと言う。先程から何かを話しかけて来てくれている様だが、誰だろうか?申し訳ないが私達には判別がつかなくて…"

 レギル王子が話終わると周囲の蝶の群れがグッと寄って来た。

"ずっと…元気がない…"

"寂しそうに、鳴いてたのに…"

"もう、随分、話さない"

 近寄っては蝶達が小さな声で訴えてくる。
ここに、随分と話もしない寂しがり屋がいると言う事、なのか?と解釈する。他にも色々と違う言葉で話しかけてくるのだが、それらを纏めて要約するとこの解釈で間違えはなさそうに思える。

"一つ、聞きたい"

 王子は敢えて声を張り上げた。

"君達が言っているのは誰に対してだろうか?教えれもらえるだろうか?"

 ここでもし契約範囲内のものであれば蝶の誰もが言葉を噤むはず。精霊は契約に反する事はできないから。

"……ラン…"

"…リレ、ラン……"

"寂しがり…心配……"

"その輝き……"

"リレラン…龍……"

"………の中、にいる……"

"……懐かしい…精霊?"

 この件に付いてきっと精霊の契約なんて関係ないものだったんだろう。周囲の蝶達が一斉に話し出す。それも待ってました!とばかりに一気に話し始めたのでレギル王子は理解に苦しんだ。

 リレ?リレラン?何かの名前?龍?何処かの中に入っている、寂しがりの輝きは精霊で、懐かしいのか?

 レギル王子の頭の中は混乱中だ。

"君達の中に代表は居ないのか?"

 埒が明かないやり取りにレギル王子は代表者と話す必要があると感じる。が、蝶達から帰って来たものは、代表者とは何かと言う疑問だった。彼らの中には誰が上で誰が下でと言った上下関係や一人に何かを任せると言う認識さえ無いようだった。

「精霊だからか…」

 自分と言う存在を非常に大切にして産まれた時から自分のやるべき事を知っている精霊は単独主義でもある。蝶と言う性質上彼らはここで群れているに過ぎない様で、此処から必要ならば群れを為して世界に飛び立っていく様だ。得た知識を仲間にリレーのバトンの様に渡しつつこの森の奥で大切な物にしまっていると。

 レギル王子が粘り強くここまで蝶から情報を聞き出す。これだけで随分と時間がかかってしまったが………大切な物…?それは何だろう?

"大切な、物とは?教えてもらえるだろうか?" 

 レギル王子の中には緊張が走った。多分、彼ら蝶達の話ぶりからするとその、大切な物が………自分達の探している龍ではないかとさえ思っているのだが…

"それは、自分の目で見た方がいい…人間の王子…"

 急に後ろから声がかけられる。驚き振り返れば、いつの間にか森の精霊モールがレギル王子とマラールの後ろに立っていた。

"モール殿!"

 レギル王子は驚きの声をあげた。

"人間の王子は気が長いな…これらの言葉はバラバラできっと理解に苦しむと見ていたのだが…"

 ずっと見ていたのか…どうやら助けが必要かどうか様子を伺っていてくれたらしいが。
正直言えばもっと早くに声をかけてもらいたかったと思ってしまっても悪くはないくらいの時間は費やしてしまった。

"モール…"

"…人の姿…"

"…モール、どうして?"

 口々に語っていた蝶達が一斉にモールのことについて話し出す。如何やらモールが人形になっているのが非常に不思議そうだった。

"人の客人が来ている。礼を尽くすのは我らにとってもよいことだ。お前達も、道を開けなさい。"

 モールの優しい声が谷一面に響き渡った。

"こっち…"

"……ここから、来て"

"…この道…"

 モールの声に弾かれた様に蝶が動き出す。道を開け、レギル王子達の前に飛び交い道標となってくれている様だ。これで、やっと先に進める。

"モール殿。何と感謝を表せば良いか…"

"要らぬ。人からの感謝など無用。我らはやりたくてそうしているに過ぎない。ここから先は我が小さな兄弟の願いだ……人よ。頼んだぞ…"

 そう言うなり人型を解いてモールは姿を消した。

 小さな兄弟の願い…この先に…?レギル王子が求める龍との出会いが、ここにいる精霊の願い?レギル王子が精霊の祝福を受けている事についてここの精霊が関与しているのか?
 レギル王子の中で疑問が疑問を呼ぶ……

 ここにレギル王子を導いたのは精霊……蝶の谷の精霊の願い…
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