[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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18 マリーアンヌの想い

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"人間…国へ帰れ…自分の大事な者の側に居てやれ…お前達は直ぐに…"

 龍のリレランと比べてだが、人間は直ぐにその短い人生を終わらせてしまう。リレランはレギル王子のその最後を見たくも感じたくも無かった。早く、自分の国に帰って自分の居るべき場所で己の人生を全うして欲しい。リレランは自分がレギル王子と離れてしまえば自分の魔力に当てられた影響もそんなに出ないと考えているから。

"!!?……直ぐに?直ぐに何だと言うのだ!?リレラン!?まさか………!まさか!!カシュクールは……?カシュクールは滅びるのか?私の、私だけの命では……足りない…と……?"

 リレランの言葉を聞いたレギル王子は取り乱し、言葉の最後には絶望がにじみ出でいた。

"僕は人の命を取る趣味はない…もう憂いはないと思うから、国に帰りな…"

 不安からか揺らめき輝くレギルのその輝きにリレランも目が離せなくなった。

 人間の寿命なんて一瞬の事…ここで離れてしまえばそれで終いだ……

 リレランは両翼をはためかせ、一気に巨木の最上部まで登りゆく…

"待て!待ってくれ!!リレラン!!国はどうなったのだ!?何を君に差し出せば、国を救ってくれる…!?リレラン…!!"

 上昇しつつ側を離れるリレランに向かってレギル王子は声を上げた。

「!?王子!!」

 レギル王子が叫び声を上げた瞬間に、フッと糸が切れた様にレギル王子は意識を手放した……




------------------



 
 キラキラとただ煌めいているそんな光の中でレギル王子は目が覚める。

"お目覚め?"

 ここは、何処だ…ぼんやりとしている頭の中に色々な記憶が巡り行くのだが絵を鑑賞しているかの様にただ素通りして行く。

"私はどうなった?"

 龍を追って…蝶の谷へ……そして…それから…

"魔力切れを起こしたのね?貴方死にかけたのよ?" 
 
 無茶をしてはダメね?と、優しい声が先程から聞こえてくるのだが、誰が?

"誰だ?"

 眩い光の中にいるから姿が見えないのか?

"貴方よ?"

"は?"

 しまった、王族らしからぬ答え方だ。近くに側近の者達がいたらお小言を貰ってしまう。ただでさえ呪われた王子と言われているのに…これ以上の汚名を作るつもりはない。

"貴方の中に居るの…だから私の姿はないのよ?"

"私の中に?誰が、居ると言う?"

 自分の中に違う自分が居るなんて、そんな事考えた事もない…頭がどうかしてしまったのか?

"ふふ。貴方は正常…何処も悪くはないわ"

"!?"

"今、貴方魔力切れを起こして死にそうだったの…ランの魔力に繋げてもらってるからこうしてお話しする事もできる様になったわ"

"貴方は…誰だ?"

 ランとはリレランだろう。私は蝶の谷にいてそこで倒れたのか?私は貴方だ、と言った声の主は明らかに精霊だ…先程から何の抵抗もなく私も精霊語を話している……

"シェルツェインの教育の賜物ね。何の淀みもなくお話ができるなんて!"

 嬉しそうに弾む声。シェルツェイン!?

"シェルツェインの所縁の者か?"

"違うわ、けれどお友達ね…貴方のことを頼んだの"

"貴方が?"

"そう…私達の、宝の為に…いいえ。私達との架け橋になって貰いたくて……"

 根気よく話して行くと、声の主はマリーアンヌと言う…やはり、あの蝶の谷の精霊でリレランの事がことさら心配だったと言う。
 
 蝶はそれぞれ記憶を運ぶ。世界中から集めたものをリレランに渡して行く役目をしていたそうな。彼女、マリーアンヌは愛情を担当している。けれど、精霊は他者を愛する心なんてほぼ皆無。ただ自分の存在意義の為に存在して行動している。リレランという宝を預かったはいいが、心を育てる為に愛情を教えたかったマリーアンヌ。
 長く長く生きる龍はその内心が鈍麻して全てに関心を持てなくなる様で、古の龍達は全ての交流を絶って深い地中で惰眠を貪っているという…リレランに会って、その輝きを見てマリーアンヌは希望を得た。また、かつての記憶の中にある様な交流を持てるかもしれない、と。味気ない精霊の中にも人間との交流が、陰気だが優しさもある龍との交流も深まるかもしれない…ただこれだけの為に、リレランをたった一人で惰眠を貪る龍になどしたく無くて… 

 マリーアンヌのこの思いの為に、レギル王子に自分の精霊としての時間が切れる際に、自分の精霊の力をほぼ全て譲り与えたそうな……

 精霊の愛子、呪われた王子……この名前の由来をこの光の主が作った、と……

"どうして?私だったのだ?"

"精霊の魔力を与えるのですもの…一般の人間では熟し切れないと思ったの。"

 精霊との交流も希薄過ぎる現世では、何の知識もない者にそれを与えても一生宝の持ち腐れ、で終わると危惧した。そして力無い者では帰ってこの精霊の力を悪用される恐れがあった。では知識もあり、悪用しようとする者からその人間を守れる様な所に与えれば良い…それがシェルツェインという精霊との契約を唯一結んでいたカシュクール国の、今正に産まれんとする王子レギルだった。

"はっ……貴方の考えに添えなくて申し訳ないが…この祝福も…宝の持ち腐れになりそうだ………"

"まぁ!なんて事を言うの?あの子に会ったでしょう?あの、素晴らしく美しい龍に…私のラン………"

 私は、その龍に助けて貰いたかった……腐り、滅び行く国を、人々を生かして貰えるように………だが……

"大丈夫…目を開けてごらんなさいな…あの子は非情な龍では無くてよ?"

 言われるままにレギル王子は目を覚ます…
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