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17 囚われた王子
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そんな事はごめん被る!そんな事のためにこの人間はここまできたのか?
リレランは人間が信じられなかった。
なんて、馬鹿な事を……この人間は自分がどれだけの価値を持っているのかも分かっていない…世界の頂点に立つ龍をその光で起こしておいて、あっさり命を捨てようとは……
マリーを失ってからもう、二度と御免だと思った…もう二度と失いたくないと。このマリーの光を、この人間を見てから一層強くそう思う…こんな馬鹿な事をするなんてなんと言う浅慮……!後先考えずにこんな事をするのは子供だけだとマリーは言っていたのに。子供よりも危ない人間の大人がここにいた……
この赤子のような人間の王子は天変地異を静めてもらいたいと言っていたか?
リレランは見る。現カシュクールの姿を。国の民は疲弊して、植物も動物も人々も徐々に徐々に失われていっている。これを仕掛けているのは……古の龍、土龍ゲルガンか……
キュゥ~~~~~~~~~~~~
突然に、目の前にフワリと飛んでいる龍が高く高く鳴き声を上げる。細く、高く切れ目なく初めて聞く龍の美しい声に、うっとりとレギル王子もマーレンも心を奪われた…
「……王子、魔力の残は…?」
リレランが泣き続ける中、マーレンはざっとレギル王子の状態を確認する。卵を孵化させんとして相当量の魔力を、多分王子の限界を超える量の魔力を注ぎ込んでいたように感じた…現に今王子は立ち上がることさえもできない。それであるのにレギル王子は自分の身体を守ろうとしないばかりか、龍から目を離そうともしないで先程から宙に浮かぶ龍に視線が釘付けになっていた。
「王子…!」
「私は……大丈夫…なぜ、リレランはあのように鳴くのです?」
鳴きやまない龍の姿のみをレギル王子は見つめ続けていた。
魔力を注ぎ出してから、レギル王子は直ぐに限界を感じた。自分の中の魔力がこんなにも乏しく脆弱だった事を今程恨めしく思った事はない…
それでも、この龍の顔が見たくて卵から出てきて欲しくて、なけなしの魔力を注ぎ続ける…
最後には願いとも祈りとも、懇願とも言えぬありったけの気持ちを込めて"出ておいで"と呟いた…
パチンッ…目の前でまた、火花が散る…その瞬間卵は眩く光り、レギル王子が再び目を開けた瞬間………レギル王子の全ては目の前の龍に、いや、自分の全てが龍の一部となったと感じる程、龍に心を奪われてリレランから目が離せなくなった……
レギル王子の目の前には、龍が浮いていた。全身真珠色で滑らかな閃きを、スラっと伸びた尾の先まで纏い、水晶の様に透き通った輝きの瞳を持つ美しい龍…羽を広げ、勢いよく卵から出たままの姿で空中に静止している。その龍の瞳は、見つめ続けているレギル王子の瞳から全てを吸い上げ、絡めとってしまう程に魅力に溢れていた。言葉ではなんと表現したら良いのか…レギル王子は魔力尽きかけて死にそうなのに、何にも増して、物凄い優越感と、幸福感と、満足感と、独占欲と一気に自分の中に溢れて混ざり合って今自分がどんな状況にいるのかも分からなくなりそうだった。強い酒に飲まれたときの様な状態と似ているのだろうか?ここ数年カシュクールの国民はその酒さえもまともに口にしたこともないと言うのに…今、自分は確かに何かに酔っている……
"人間…なぜ命を無駄にする?"
どれくらいレギル王子はリレランをボゥッと見つめ続けていただろうか?気がつけばもうリレランは既に鳴きやんでいた。
"…命を無駄にした事など一度も無い…"
"さっき、僕にその身を差し出そうとしたろう?なぜ?"
"私達は、龍である君に無理を頼むんだ。だから、その代償は払わなければいけないだろう?"
"それが人間の命?"
"君が望むなら…私達にはそうするしか、もう何も持ち合わせてはいないのだから。"
寂しそうに笑う人間には、成る程金銀財宝など持ち合わせてはいない様子。持っていてもきっとリレランは欲しいとは思わないと思うけど…ただその寂しそうな瞳の光…これは本物だ。マリーの気配が色濃く残る。では、人間の欲するものを叶えたなら、その目をよこせと言うか?
命も無い、ただの人間の目玉など持っていて楽しいのか?懐かしいマリーの気配だけを追って僕はずっと一人で生きていくのか…?
マリーはこの人間に己を写した……なのに、ぼくが取ったらマリーの遺志を壊してしまう……
リレランはこの人間に死んで欲しいわけでは無い。勿論、マリーの気配強いその目玉を抉り取るつもりもない…マリーが許し、与えた命、力なのなら生きていて欲しいと願う。人間がマリーの記憶を持っているか分からないが、それも併せてマリーの遺志なのだろう。マリーに会いたかった…でも今は合わなければ良かったとさえ思っている。人間は弱い…たったあれしきのの魔力でもう息も絶え絶えだ…流石に蝶よりは長生きだろうが、いずれあっという間に訪れる別れの時など考えたくも無かったから。リレランは決めた。レギル王子がどう思おうが、ここにこれ以上いるつもりもなかった。
リレランは人間が信じられなかった。
なんて、馬鹿な事を……この人間は自分がどれだけの価値を持っているのかも分かっていない…世界の頂点に立つ龍をその光で起こしておいて、あっさり命を捨てようとは……
マリーを失ってからもう、二度と御免だと思った…もう二度と失いたくないと。このマリーの光を、この人間を見てから一層強くそう思う…こんな馬鹿な事をするなんてなんと言う浅慮……!後先考えずにこんな事をするのは子供だけだとマリーは言っていたのに。子供よりも危ない人間の大人がここにいた……
この赤子のような人間の王子は天変地異を静めてもらいたいと言っていたか?
リレランは見る。現カシュクールの姿を。国の民は疲弊して、植物も動物も人々も徐々に徐々に失われていっている。これを仕掛けているのは……古の龍、土龍ゲルガンか……
キュゥ~~~~~~~~~~~~
突然に、目の前にフワリと飛んでいる龍が高く高く鳴き声を上げる。細く、高く切れ目なく初めて聞く龍の美しい声に、うっとりとレギル王子もマーレンも心を奪われた…
「……王子、魔力の残は…?」
リレランが泣き続ける中、マーレンはざっとレギル王子の状態を確認する。卵を孵化させんとして相当量の魔力を、多分王子の限界を超える量の魔力を注ぎ込んでいたように感じた…現に今王子は立ち上がることさえもできない。それであるのにレギル王子は自分の身体を守ろうとしないばかりか、龍から目を離そうともしないで先程から宙に浮かぶ龍に視線が釘付けになっていた。
「王子…!」
「私は……大丈夫…なぜ、リレランはあのように鳴くのです?」
鳴きやまない龍の姿のみをレギル王子は見つめ続けていた。
魔力を注ぎ出してから、レギル王子は直ぐに限界を感じた。自分の中の魔力がこんなにも乏しく脆弱だった事を今程恨めしく思った事はない…
それでも、この龍の顔が見たくて卵から出てきて欲しくて、なけなしの魔力を注ぎ続ける…
最後には願いとも祈りとも、懇願とも言えぬありったけの気持ちを込めて"出ておいで"と呟いた…
パチンッ…目の前でまた、火花が散る…その瞬間卵は眩く光り、レギル王子が再び目を開けた瞬間………レギル王子の全ては目の前の龍に、いや、自分の全てが龍の一部となったと感じる程、龍に心を奪われてリレランから目が離せなくなった……
レギル王子の目の前には、龍が浮いていた。全身真珠色で滑らかな閃きを、スラっと伸びた尾の先まで纏い、水晶の様に透き通った輝きの瞳を持つ美しい龍…羽を広げ、勢いよく卵から出たままの姿で空中に静止している。その龍の瞳は、見つめ続けているレギル王子の瞳から全てを吸い上げ、絡めとってしまう程に魅力に溢れていた。言葉ではなんと表現したら良いのか…レギル王子は魔力尽きかけて死にそうなのに、何にも増して、物凄い優越感と、幸福感と、満足感と、独占欲と一気に自分の中に溢れて混ざり合って今自分がどんな状況にいるのかも分からなくなりそうだった。強い酒に飲まれたときの様な状態と似ているのだろうか?ここ数年カシュクールの国民はその酒さえもまともに口にしたこともないと言うのに…今、自分は確かに何かに酔っている……
"人間…なぜ命を無駄にする?"
どれくらいレギル王子はリレランをボゥッと見つめ続けていただろうか?気がつけばもうリレランは既に鳴きやんでいた。
"…命を無駄にした事など一度も無い…"
"さっき、僕にその身を差し出そうとしたろう?なぜ?"
"私達は、龍である君に無理を頼むんだ。だから、その代償は払わなければいけないだろう?"
"それが人間の命?"
"君が望むなら…私達にはそうするしか、もう何も持ち合わせてはいないのだから。"
寂しそうに笑う人間には、成る程金銀財宝など持ち合わせてはいない様子。持っていてもきっとリレランは欲しいとは思わないと思うけど…ただその寂しそうな瞳の光…これは本物だ。マリーの気配が色濃く残る。では、人間の欲するものを叶えたなら、その目をよこせと言うか?
命も無い、ただの人間の目玉など持っていて楽しいのか?懐かしいマリーの気配だけを追って僕はずっと一人で生きていくのか…?
マリーはこの人間に己を写した……なのに、ぼくが取ったらマリーの遺志を壊してしまう……
リレランはこの人間に死んで欲しいわけでは無い。勿論、マリーの気配強いその目玉を抉り取るつもりもない…マリーが許し、与えた命、力なのなら生きていて欲しいと願う。人間がマリーの記憶を持っているか分からないが、それも併せてマリーの遺志なのだろう。マリーに会いたかった…でも今は合わなければ良かったとさえ思っている。人間は弱い…たったあれしきのの魔力でもう息も絶え絶えだ…流石に蝶よりは長生きだろうが、いずれあっという間に訪れる別れの時など考えたくも無かったから。リレランは決めた。レギル王子がどう思おうが、ここにこれ以上いるつもりもなかった。
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