[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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31 アーラン名物 2

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「そうだわ!二人とも。これ、行ってみない?」

 リレランの髪を梳き終わったベレッサはリレランが食事をしている横で忙しそうに店の支度をしながら二人の前に一枚の紙を出す。カラフルな紙には、サーカス、と書いてある。

「なんですか?ベレッサさん、これ?」

 リレランは勿論のこと、セラもサーカスなんて聞いたこともない名前。

「サーカスよ?聞いたことない?」

 盛りのついた牡?はて?そんな所にセラの様な幼い娘を行かせるものなのか?リレランは怪訝そうな顔でベレッサを見つめ返した。

「盛りのついた牡?」

「ぷぅ!!違うわよ!リラ!あはは!サーカス!あなた、字は読める?この町の名物よ?聞いた事ないかしら?」

「サーカスとはなんだ?」

 字は少しなら読めるのだが、細かい使い方がまだよく分からない…

「見たことない…」

 セラもキョトンとしている。

「曲芸をする一団の事よ。人間離れした技や動物の芸を見せてくれるのよ?大人の人もすっごい楽しめると思うわ。どう?」

「ぅわ~そんなのが有るんですね?知らなかった~」

「ふふ。毎年この時期になるとこの町で興業していくのよ。すごい人気でね…町の人間は安く券を買えるから、三枚、買っちゃった!」

 ふふふっと嬉しそうに子供みたいにベレッサは笑う。秘密にして驚かせたかったそうで誘おうと思っていたリレランがいつ来るかとも分からないのに先走って券を買ったそうな…

「うわ!うわ~ベレッサさん良いんですか?」

 セラは余程うれしかったのか、その場でバタバタッと足踏みをして喜んでいる。

「いいの!セラはいつも一生懸命に働いてくれるし?リラは町を守ってくれるし、ご褒美みたいなものね?」

「行こう!リラ!あなたも見た事ないでしょ?」
 
 ズイッと食後のお茶を飲んでいたリレランを覗き込みセラは誘った。

「動物……出るんだろう?僕は動物に嫌われてるよ?」

 龍だから……多分、視線を合わせただけで向こうが逃げていく。

「え~~大丈夫よ!人間に慣れた動物で、猛獣もいるんだから、見ものよ?人生は何事も経験が命、ね?リラ、行きましょうね?」

 有無を言わさぬベレッサの押し。セラにも負けずに更にズイッとリレランに押し迫った。

 人間はこんなにも押し付けが激しいものだったっけ?

 あぁそうだ……国を救うために蝶の谷まで探し当てて来る王子もいたんだ。これ位の押しの強さが普通なのかも………

「………分かった……」

 人間のところに来て隠れると決めたのは自分だからな、と人間側のルールにリレランは従う事にした。

「やったー!約束よ?リラ?ふふ、楽しみね?」

 約束とは守らなければいけないものだろう?この間、町の片隅で約束を破ったと人間の女から詰られて平手打ちを食らっていた人間の男を見たリレランは、元気なセラからは平手を食いたくないと思っている。これは必ず、行かなければならない様だ……

「あ、そうだ。リラは仕事は大丈夫なの?こんな約束してても忙しかったりしない?」

「仕事……?ならず者どもを捕まえることを言っている?」

「そう!用心棒でしょ?」

 確かに、時折見つける不届き者をチョイッと捕まえては投げ渡しているが………

「別に、誰かの元で働いているわけではないからな……どこへ行こうとも自由だろ?」

「本当ね?嬉しい!リラと出かけるなんて出来ないと思っていだだもの!」

 いつもフラッと来てはフラッと知らないうちに帰ってしまうリレラン。知っている事は名前とその容姿の素晴らしさと、強いっていう事と、森に住んでる?位だ。その他の事は何にも知らない…多分、誰も知らない…少し、心を許してもらっていると思えるセラはもう少しリレランの事を知りたいと思っていた。純粋な興味と好奇心とでワクワクした瞳にはキラキラした活力と生命力に溢れている。

 精霊も姿形は美しい者達も多いと思う。蝶の谷の蝶達も夢の様に綺麗だと思う。けれど、活気や活力は人間には及ばない…人間は力は少ないが生命力に溢れている。精霊から見たらそこら辺は眩しく感じるんじゃないだろうか?だからリレランもセラを見るのが嫌じゃ無いんだ。なぜ、交流が絶えてしまったのか分からないが、精霊の方こそ、この生命力を必要としている様にもリレランには思えるのだが……?この世は不可解な事だらけだな…人間の世も、精霊の世も知れば知るほど不思議にはまっていく沼の様にも思えてならない。

「ふふ、楽しみねぇ?リラ!」

「…あぁ、そうだな。」

 マリーがいたら何というかな?行きたいと言うだろうか?もう、聞く事は出来ないけど… 
 フッとあの時目の前に立った人間の王子の事が頭に過ぎる…もう一度会いたいと言っていたか…もう諦めて国に帰れと忠告をするつもりだったのだが、全く通じなかった様で真っ直ぐに見つめて来るあの虹色の輝きが、初めて怖いと思った………
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