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33 混乱
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突如として、幕の裏から悲鳴が上がった。
金切り声を上げて幕をめくり上げてどう見てもサーカス団の一員と思しき者達が次々と出て来る。観客はそれも何かの余興一つと捉えてしばらく何が起こるのかワクワクして見守っていた。
「ベレッサ、セラ早めにここを出た方がいいよ。」
幕間から出て来るのは、なんとも珍妙な団員で、例えばどう見ても着替え途中だとか、中には何か飲んでいたのかコップまで手にしながら慌てふためいて舞台上でも右往左往していた。そんな彼らを見ながらリレランはスッと立ち上がり、ヒョイッとセラとベレッサの腕を掴むと軽々と2人を立たせてしまう。
「え、なあに?リラ?まだ公演の途中なんでしょう?」
不思議に見つめて来るセラの視界の端に、ゴゥッと唸りを上げて幕間から現れた猛獣と一目散に逃げ出している団員の姿が写った……
「何か、様子が変ね?」
ベレッサにとっては初めてでは無いサーカス公演、余興にしてはおかしい…なぜか、誰も出てきた猛獣を相手に制御しようとする人がいなかったから………
それに気がついた人々の悲鳴で、一気に会場が騒然としだす…!
------------------
レギル王子は内心、物凄く焦っていた。南の町カタンナから休まず疾走してきても、龍の姿どころか噂もない…それに加えてカタンナから離れてしばらくは森の道を走ったが、宿屋で会ったデイルのしつこい事にも辟易とする。森の途中馬を休ませる為に水辺に寄れば、後から追いついてきたデイルも追いつく。どうか次の町で仕事をしている所に寄って欲しいのだそうだ。物珍しい商売をしているとかで、レギル王子を満足させる自信があるからと。途中まで丁寧に断りを入れていたレギル王子も途中からは相手にもしないで走り出していた。
虹色の帯は町へと続く…が、ここで問題なのが、道はそこまでだと言う事。蝶の谷の時もそうであったが、目的地に着いたならそこからは自分の目で探さなくてはならなくなる。今回は蝶の精霊達は居ない…勿論手助けしてくれたモールも。姿形も、噂もないのなら、龍は何処かと町民に尋ねたとしてもレギル王子が変な目で見られるだけだろう。それだけ龍などとは御伽噺の中の存在だからだ。
"どこにいる?"
何度も精霊語で話しかける。精霊魔法を試したいが、ここでは人が多いし門も開けないだろう。幸いこの町にいる事は確かならば虱潰しに探すか…龍の体躯を隠せる森やら山やらに行くか…迷うところだ…
取り敢えず、一旦町に入って動く拠点を確保しようとそのまま森を切り抜ける。と、一気に景色が騒然とし出した。街の方からは大勢の人々が、馬やら、ロバやら、牛やらを連れて急いで森に向かって移動してくる。中には素足のままで走り出して…
町で…何かあった?森の方に来るものもいれば森に入らず道なき道を行こうとするものもいる。
「何があったのだ!!」
レギル王子は大声で道ゆく人々に呼びかける。
「猛獣だ!!!」
「猛獣が逃げたぞーーー!食われちまう!!」
逃げ惑う人々は口々に猛獣と叫んでは逃げ惑う。
「猛獣だと?」
どこだ?森ではない町中で?そんな事があるものなのか?レギル王子は視線を周囲に走らせるが未だに猛獣らしき物を捕らえる事ができないでいる。
「旦那!!どうしたんですかい?これは!?」
後から追いついたであろうデイルとその仲間も慌てふためいて周囲を見渡すばかりだ。
「なんてこった…こんな事今まで無かったぞ…!」
「町民は猛獣が逃げたと言っているが、ここには猛獣使いがいるのか?」
「うぇ!猛獣!?ってまさか!!うちの職場じゃねぇだろうな?」
「職場とは?そもそも何なんだ!?」
逃げ惑う人々を避け上手く馬を繰りながら町の方へと歩を進めていく。
「サーカスでさぁ!知ってますかい?猛獣共が芸を見せるんですよ!!」
「サーカス!?」
話には聞いた事がある。その様な芸当がある事は…しかし、カシュクール国は貧しさに喘いでいた折、遊興ごとに贅を尽くす事もできず、見たこともない国民が殆どだと思う。
「この町にその曲芸師達が居るのか?」
「へい!この時期はこの町で興業をしてますんで!!」
「そこに案内しろ!」
猛獣が暴れているとなれば一般人には太刀打ちできないだろう。ここは、騎士の心得ある者か、冒険者の如く腕に自信のある者しかそれらを狩ることは難しい。
「へい!こっちです!!」
レギル王子は速やかにデイルの後を追う。ここの町民は明らかに無防備すぎる。ここまで来ていない猛獣達が凄惨な結果を引き起こしていない事を祈りつつ、出来る限り馬を飛ばす!
リレラン!この騒ぎに出て来てはくれないだろうか?猛獣を鎮める為にも龍は有効だとレギル王子は考えていた。何故なら龍が全ての生物の頂点なのだから!
馬が疾走していく先には、彩り鮮やかな大きな天幕が見えている。
「旦那!!あれがサーカスの拠点です!!」
近づけば近づく程、周囲には砂埃が立ち込め、騒然としている。時折低い唸り声と、人々の悲鳴…砂埃で視界が遮られ猛獣の種類も位置も頭数も確認ができない。最早ただの恐慌状態となり人々はパニックの渦の中で蠢くばかりだった…
金切り声を上げて幕をめくり上げてどう見てもサーカス団の一員と思しき者達が次々と出て来る。観客はそれも何かの余興一つと捉えてしばらく何が起こるのかワクワクして見守っていた。
「ベレッサ、セラ早めにここを出た方がいいよ。」
幕間から出て来るのは、なんとも珍妙な団員で、例えばどう見ても着替え途中だとか、中には何か飲んでいたのかコップまで手にしながら慌てふためいて舞台上でも右往左往していた。そんな彼らを見ながらリレランはスッと立ち上がり、ヒョイッとセラとベレッサの腕を掴むと軽々と2人を立たせてしまう。
「え、なあに?リラ?まだ公演の途中なんでしょう?」
不思議に見つめて来るセラの視界の端に、ゴゥッと唸りを上げて幕間から現れた猛獣と一目散に逃げ出している団員の姿が写った……
「何か、様子が変ね?」
ベレッサにとっては初めてでは無いサーカス公演、余興にしてはおかしい…なぜか、誰も出てきた猛獣を相手に制御しようとする人がいなかったから………
それに気がついた人々の悲鳴で、一気に会場が騒然としだす…!
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レギル王子は内心、物凄く焦っていた。南の町カタンナから休まず疾走してきても、龍の姿どころか噂もない…それに加えてカタンナから離れてしばらくは森の道を走ったが、宿屋で会ったデイルのしつこい事にも辟易とする。森の途中馬を休ませる為に水辺に寄れば、後から追いついてきたデイルも追いつく。どうか次の町で仕事をしている所に寄って欲しいのだそうだ。物珍しい商売をしているとかで、レギル王子を満足させる自信があるからと。途中まで丁寧に断りを入れていたレギル王子も途中からは相手にもしないで走り出していた。
虹色の帯は町へと続く…が、ここで問題なのが、道はそこまでだと言う事。蝶の谷の時もそうであったが、目的地に着いたならそこからは自分の目で探さなくてはならなくなる。今回は蝶の精霊達は居ない…勿論手助けしてくれたモールも。姿形も、噂もないのなら、龍は何処かと町民に尋ねたとしてもレギル王子が変な目で見られるだけだろう。それだけ龍などとは御伽噺の中の存在だからだ。
"どこにいる?"
何度も精霊語で話しかける。精霊魔法を試したいが、ここでは人が多いし門も開けないだろう。幸いこの町にいる事は確かならば虱潰しに探すか…龍の体躯を隠せる森やら山やらに行くか…迷うところだ…
取り敢えず、一旦町に入って動く拠点を確保しようとそのまま森を切り抜ける。と、一気に景色が騒然とし出した。街の方からは大勢の人々が、馬やら、ロバやら、牛やらを連れて急いで森に向かって移動してくる。中には素足のままで走り出して…
町で…何かあった?森の方に来るものもいれば森に入らず道なき道を行こうとするものもいる。
「何があったのだ!!」
レギル王子は大声で道ゆく人々に呼びかける。
「猛獣だ!!!」
「猛獣が逃げたぞーーー!食われちまう!!」
逃げ惑う人々は口々に猛獣と叫んでは逃げ惑う。
「猛獣だと?」
どこだ?森ではない町中で?そんな事があるものなのか?レギル王子は視線を周囲に走らせるが未だに猛獣らしき物を捕らえる事ができないでいる。
「旦那!!どうしたんですかい?これは!?」
後から追いついたであろうデイルとその仲間も慌てふためいて周囲を見渡すばかりだ。
「なんてこった…こんな事今まで無かったぞ…!」
「町民は猛獣が逃げたと言っているが、ここには猛獣使いがいるのか?」
「うぇ!猛獣!?ってまさか!!うちの職場じゃねぇだろうな?」
「職場とは?そもそも何なんだ!?」
逃げ惑う人々を避け上手く馬を繰りながら町の方へと歩を進めていく。
「サーカスでさぁ!知ってますかい?猛獣共が芸を見せるんですよ!!」
「サーカス!?」
話には聞いた事がある。その様な芸当がある事は…しかし、カシュクール国は貧しさに喘いでいた折、遊興ごとに贅を尽くす事もできず、見たこともない国民が殆どだと思う。
「この町にその曲芸師達が居るのか?」
「へい!この時期はこの町で興業をしてますんで!!」
「そこに案内しろ!」
猛獣が暴れているとなれば一般人には太刀打ちできないだろう。ここは、騎士の心得ある者か、冒険者の如く腕に自信のある者しかそれらを狩ることは難しい。
「へい!こっちです!!」
レギル王子は速やかにデイルの後を追う。ここの町民は明らかに無防備すぎる。ここまで来ていない猛獣達が凄惨な結果を引き起こしていない事を祈りつつ、出来る限り馬を飛ばす!
リレラン!この騒ぎに出て来てはくれないだろうか?猛獣を鎮める為にも龍は有効だとレギル王子は考えていた。何故なら龍が全ての生物の頂点なのだから!
馬が疾走していく先には、彩り鮮やかな大きな天幕が見えている。
「旦那!!あれがサーカスの拠点です!!」
近づけば近づく程、周囲には砂埃が立ち込め、騒然としている。時折低い唸り声と、人々の悲鳴…砂埃で視界が遮られ猛獣の種類も位置も頭数も確認ができない。最早ただの恐慌状態となり人々はパニックの渦の中で蠢くばかりだった…
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