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63 オレイン公の思い
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「まさかとは思うが……其方…何かの当て付けに選んだのではあるまいな?」
オレイン公が選んだのは、侯爵家でも伯爵家でもなく、男爵家…貴族の末席と言ってもいいほどの家の令嬢だ。
「まさか…兄上に非難が集まる様な真似は致しません。」
「では、何故に男爵家を?」
まだ、王家と釣り合う貴族の家柄に未婚の令嬢はいると言うのに……
"悪い選択ではなさそうよ…"
シェルツェインも珍しく口を挟んで来た。
"シェル…後でたっぷりと聞かせてもらおう…勿論サンスルトもだ…"
ふむ、と何か納得した様な表情を見せて国王ギルダインは一人肯く。
スッとシェルツェインが手を挙げると、シュルシュルシュルと風の塊が集まって来た。小さな掌サイズのその風は、シェルツェインの手から離れると一気にオレイン公の胸を目掛けてまるで矢のように飛び込み胸を貫いた…!貫かれたと思いきや、オレイン公の体に走ったのは風の矢と共に身体の中を吹き抜けて行く風の感覚……身体の中に風が通るなど、なんとも不思議な感覚ではある。
"サンスルト…加護は授けたわ。男爵令嬢にはこの城に足を踏み入れた瞬間に加護を授けるつもりよ。だから、早めにこの城にお呼びなさいな…"
次期皇太子妃候補を決める夜会はつい最近終わったばかりである。決定の旨を男爵家に伝えて返答を貰い、あちらは城に来る準備、こちらは迎え入れる準備をしてからの移動となるだろうから、どう早めても数週間後になるだろう。
"相変わらず人間はややこしいわね……"
シェルツェインは一言言い残して、ふっとその場を後にした。
「さあ、どう言うつもりだね?」
シェルツェインから話を聞くと言っていた国王ギルダインは先にオレイン公の口を割るらしい…
「どうもこうもありませんよ。」
「まさか、高位のご令嬢の顔が気に入らなかったからなんて事ではないだろうね?」
キラリ、と光る金の瞳に見つめられればきっと皆んな嘘なんてつけないだろう、とオレイン公はいつも思う。
「この国に派閥をのさばらせない様にする為です。」
さらり、と兄王の求めに応じてオレイン公は話し出す。
侯爵家、伯爵家それぞれに大なり小なり王家につながりがあり、高位貴族ならば王族との関わりも必然的に深くなって行く。今回は直系ではない王族が皇太子の座につくのだ。サンスルトの妃が高位の貴族から選ばれれば、今までサンスルトを支持して来た家も加わって、直系王家を支えて来た派閥が勢力的に弱くなる。ただでさえ、呪われた王子とレギル王子は叩かれ続けて来たのだからこれ以上、兄ギルダイン側の勢力を削ぐわけにはいかなかった。ならば、長いものには巻かれ続けて来ているであろう下位の貴族の中から選べばこの派閥の中に波風を立てる事もできるだろう。皇太子妃となる者に人間の後ろ盾が弱くともカシュクールにとっては問題ない。何故なら、風の精霊王である、シェルツェインの加護付きなのだから。彼女が認めてしまえば、この国の誰が反発し得ようか…
「なるほど、お見事と言わざるを得ませんわね。オレイン公。感服いたしましたわ。」
チャリティーのお茶会から帰城していた王妃レイチェルも加わってオレイン公の考えに賛同を示す。
「これは、姉上にまでお褒め頂けるなんて思ってもおりませんでした。」
「オレイン公、姉上ではなく、王妃とお呼びくださいませ……」
オレイン公はまだ立太子として立ってはいない。その為、教育係なる者がオレイン公の執務中には絶えず側に付いている。国王夫妻を兄姉としてではなく、王と王妃として敬う様にと横から小言を述べてくるのだ。
「分かっている。公の場では兄上の身分を立てているのだ。公務中で無ければ数少ない肉親へ親しみを込めて兄上、姉上とお呼びしてもいいではないか?お許しくださいますね?姉上…?」
物凄くいい笑顔でニッコリと王妃レイチェルに向かってオレイン公は笑顔を向けた。
「はぁ……貴方はいつまで経ってもそのままなのですね…」
「申し訳ありませぬ、王妃…!私が至らぬばかりに……」
何故か側付きの教育係が深く頭を下げて謝罪を口にした。
「…良いのです。これでもオレイン公は立場を弁えておられるお方ですから。」
「お分かりいただけた様で姉上、感謝いたします。」
「それよりも、皇太子妃候補のスルジー男爵令嬢はいつ頃、城へ入られますか?」
シェルツェインが認めたならば、次期王妃は決まった様なもの。これから早急に城へ入ってもらって妃教育を始めなければならないのだから。
「レギル王子殿下に早馬を送らせましょう。スルジー男爵領を優先させるべきですからね。並行してスルジー男爵へ書簡を送りますので、入城の時期決定には一週間程頂きとうございます。」
同席していた宰相フラトが書記官へと指示を出す。
「一月を目処に…こちらの準備を進める様に…」
後は、レギル王子の報告を待つばかりとなる。
オレイン公が選んだのは、侯爵家でも伯爵家でもなく、男爵家…貴族の末席と言ってもいいほどの家の令嬢だ。
「まさか…兄上に非難が集まる様な真似は致しません。」
「では、何故に男爵家を?」
まだ、王家と釣り合う貴族の家柄に未婚の令嬢はいると言うのに……
"悪い選択ではなさそうよ…"
シェルツェインも珍しく口を挟んで来た。
"シェル…後でたっぷりと聞かせてもらおう…勿論サンスルトもだ…"
ふむ、と何か納得した様な表情を見せて国王ギルダインは一人肯く。
スッとシェルツェインが手を挙げると、シュルシュルシュルと風の塊が集まって来た。小さな掌サイズのその風は、シェルツェインの手から離れると一気にオレイン公の胸を目掛けてまるで矢のように飛び込み胸を貫いた…!貫かれたと思いきや、オレイン公の体に走ったのは風の矢と共に身体の中を吹き抜けて行く風の感覚……身体の中に風が通るなど、なんとも不思議な感覚ではある。
"サンスルト…加護は授けたわ。男爵令嬢にはこの城に足を踏み入れた瞬間に加護を授けるつもりよ。だから、早めにこの城にお呼びなさいな…"
次期皇太子妃候補を決める夜会はつい最近終わったばかりである。決定の旨を男爵家に伝えて返答を貰い、あちらは城に来る準備、こちらは迎え入れる準備をしてからの移動となるだろうから、どう早めても数週間後になるだろう。
"相変わらず人間はややこしいわね……"
シェルツェインは一言言い残して、ふっとその場を後にした。
「さあ、どう言うつもりだね?」
シェルツェインから話を聞くと言っていた国王ギルダインは先にオレイン公の口を割るらしい…
「どうもこうもありませんよ。」
「まさか、高位のご令嬢の顔が気に入らなかったからなんて事ではないだろうね?」
キラリ、と光る金の瞳に見つめられればきっと皆んな嘘なんてつけないだろう、とオレイン公はいつも思う。
「この国に派閥をのさばらせない様にする為です。」
さらり、と兄王の求めに応じてオレイン公は話し出す。
侯爵家、伯爵家それぞれに大なり小なり王家につながりがあり、高位貴族ならば王族との関わりも必然的に深くなって行く。今回は直系ではない王族が皇太子の座につくのだ。サンスルトの妃が高位の貴族から選ばれれば、今までサンスルトを支持して来た家も加わって、直系王家を支えて来た派閥が勢力的に弱くなる。ただでさえ、呪われた王子とレギル王子は叩かれ続けて来たのだからこれ以上、兄ギルダイン側の勢力を削ぐわけにはいかなかった。ならば、長いものには巻かれ続けて来ているであろう下位の貴族の中から選べばこの派閥の中に波風を立てる事もできるだろう。皇太子妃となる者に人間の後ろ盾が弱くともカシュクールにとっては問題ない。何故なら、風の精霊王である、シェルツェインの加護付きなのだから。彼女が認めてしまえば、この国の誰が反発し得ようか…
「なるほど、お見事と言わざるを得ませんわね。オレイン公。感服いたしましたわ。」
チャリティーのお茶会から帰城していた王妃レイチェルも加わってオレイン公の考えに賛同を示す。
「これは、姉上にまでお褒め頂けるなんて思ってもおりませんでした。」
「オレイン公、姉上ではなく、王妃とお呼びくださいませ……」
オレイン公はまだ立太子として立ってはいない。その為、教育係なる者がオレイン公の執務中には絶えず側に付いている。国王夫妻を兄姉としてではなく、王と王妃として敬う様にと横から小言を述べてくるのだ。
「分かっている。公の場では兄上の身分を立てているのだ。公務中で無ければ数少ない肉親へ親しみを込めて兄上、姉上とお呼びしてもいいではないか?お許しくださいますね?姉上…?」
物凄くいい笑顔でニッコリと王妃レイチェルに向かってオレイン公は笑顔を向けた。
「はぁ……貴方はいつまで経ってもそのままなのですね…」
「申し訳ありませぬ、王妃…!私が至らぬばかりに……」
何故か側付きの教育係が深く頭を下げて謝罪を口にした。
「…良いのです。これでもオレイン公は立場を弁えておられるお方ですから。」
「お分かりいただけた様で姉上、感謝いたします。」
「それよりも、皇太子妃候補のスルジー男爵令嬢はいつ頃、城へ入られますか?」
シェルツェインが認めたならば、次期王妃は決まった様なもの。これから早急に城へ入ってもらって妃教育を始めなければならないのだから。
「レギル王子殿下に早馬を送らせましょう。スルジー男爵領を優先させるべきですからね。並行してスルジー男爵へ書簡を送りますので、入城の時期決定には一週間程頂きとうございます。」
同席していた宰相フラトが書記官へと指示を出す。
「一月を目処に…こちらの準備を進める様に…」
後は、レギル王子の報告を待つばかりとなる。
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