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18 王の心中2
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「ふむ、なるほど、気分転換は必要か。」
納得した様にルーシウスが肯くと、嫌そうに眉を少し顰めたシガレットに満面の笑顔を向ける。
「う…」
こんな眩しい笑顔でルーシウスに見られては、黙っていなくならないで下さいね、と小さなお小言だけで、主人の願いを叶える為に動くしか無い、と諦めたシガレットである。
サウラと共に城外に出る。
ルーシウスは城内でしかサウラに会うこともなかった為、どんな反応をするのかすこぶる楽しみである。
どんな顔をするのだろうか、喜んでくれるのか。自分が誘いに行ったら、逃げずに今度はちゃんと顔を見てくれるだろうか。
執務中であるにも関わらず、心ここにあらず、だ。
数日前の自分なら想像できもしなかった事が起こったのである。まさか、自分が番を得るなど考えてもいなかった。
ルーシウスは兄王の2人のどちらかが番を得、時期国王となると信じて疑わなかった。
王となった兄を見つつ自分は儚くなるだろうと思っていたのだ。
生きる事を諦めるというよりは、幼い頃より納得していたという方がいい。
王家の子供達は皆同じ様に帝王学を学ぶが、なぜ皆同じように育てられるのか、と言うことも繰り返し教えられるのだ。
自分の運命を物心付く前に伝える事に残酷さも感じるが、その分惰性に生きる者よりかは充実した日々を過ごしたと思う。
欲しい物や、学びたい事、優しい父王は法に触れる事以外なら許容してくれていた。王の子供達は各々自由奔放に成長したと思うのだ。
長兄はお忍びて出かけた城下の祭りで、並び売られた庶民の飯が甚く気に入り、食べ過ぎて腹を壊したというのに日参し、庶民飯を極めたいと息巻いていた。
次兄は次兄で物に意匠を凝らすのが好きで、良く工房に籠もっていた。
そんな兄二人にくっついて行っては邪魔者扱いされて、嫌々ながらも相手をしてもらっていたのが自分だった。
勿論、勉強に礼儀作法、必要な事は無難に熟してきたが、これと言って優秀であった訳では無い。
シガレットや他の兄弟達と悪戯を沢山したし、怒られ過ぎて食事を抜かれたこともある。
楽しかったな。ふっと書類を書きながらも笑みが漏れる。
まあ、王になる事も、ここから逃げる事も出来ないのだから受け入れるしか無いのだが、弱って行った兄達は何を思っていたのだろうか?
考えても答えはもらえず、また自分も聞かなかった。
弱り行く兄をただ側で見ていただけだ。
次は自分だと、心に刻み付けていたのかもしれない。
召喚の儀が行われた時は、生きる残る事など到底考えていなかった。
魂の内側から焼き尽くされる様な苦しみの中で、まだ倒れてやるものか、と意地をはった。
ただの意地だ。
残される家族、友、民、国、他の者達の為に立っていたのではない。
兄王達が最後まで生き抜いたその跡を、自分もまた意地でも辿ってやろうとしただけだ。
これでは王が聞いて呆れる。シガレットにもこんな事言えやしない。本当になまくらな王なのだ。
そんな自分の前に番が現れるとは、誰も思わないだろう。
召喚時はその場繋ぎの治療師が来ると思っていた。
次の弟に王位を委ねる迄、この苦痛が続くのだと、腹を括る儀式でしか無かった。
サウラを見た時、身体に残った力が全てその場に縫い止められた様な感覚があった。
体の全てが彼女に吸い付けられる。大した体力は残っていなかったがその場で身動ぎも出来なかった。
サウラは気が付いていない様だが、あの漆黒の目を見た瞬間からサウラの内から命が流れてくる様に感じたのだ。
立って側まで行こうにも、体は言うことを効かず現実を突きつける。
しかし干からびた自分はまだ足りないと更に、彼女を求め吸い付くして行く。
絡め取り、引き込んでいく。
呼吸は楽になり、痛みが潮のように引いて行く。自分に入り満ちて行く彼女の魂は、体の隅々まで行き渡り、消えかけた魂を編み出す糸として、共に、もう一度縒り合わせられた。
彼女が 「番だ。」 口から思わず零れ落ちた。
以前の魂はもう戻らない。彼女が、我が半身、我が全て。離れる事など、どうして出来ようか!
番とは信じられない力を打ち出す。歩けない程弱っていたのに、その後自分の足で移動した。
食事も満足に取れていなかった為、筋力は落ちてはいるが体を動かす分には全く遜色無かった。
サウラに礼を述べたいが、なんと言ったら良いか言葉に出来ない。
父は母になんと言って側にいてもらったのだろうか?他人事としてちゃんと聞いていなかった事が悔やまれる。父の言葉はちゃんと聞いておくべきだった。
番の存在は衰える事なく、毎朝続く回復魔法にも存外な影響を出している。
己の強大な魔力に耐え得る生命力は直に溜まるだろう。西の結界補強にも間に合いそうだ。
もう帰ってくる事などないと思って墓に挨拶も行ったのだが、まだ先が見える。
降ろされた緞帳が再び上がった。晴れ晴れとした新たな舞台を、彼女からはどう見えるのだろう?
自分ばかりが幸せにしてもらっては、また罰が当たりそうだ。そうなる前に彼女にも幸せになってもらおう。
サウラが泣くなら今度は私が引き上げればいいのだ。
納得した様にルーシウスが肯くと、嫌そうに眉を少し顰めたシガレットに満面の笑顔を向ける。
「う…」
こんな眩しい笑顔でルーシウスに見られては、黙っていなくならないで下さいね、と小さなお小言だけで、主人の願いを叶える為に動くしか無い、と諦めたシガレットである。
サウラと共に城外に出る。
ルーシウスは城内でしかサウラに会うこともなかった為、どんな反応をするのかすこぶる楽しみである。
どんな顔をするのだろうか、喜んでくれるのか。自分が誘いに行ったら、逃げずに今度はちゃんと顔を見てくれるだろうか。
執務中であるにも関わらず、心ここにあらず、だ。
数日前の自分なら想像できもしなかった事が起こったのである。まさか、自分が番を得るなど考えてもいなかった。
ルーシウスは兄王の2人のどちらかが番を得、時期国王となると信じて疑わなかった。
王となった兄を見つつ自分は儚くなるだろうと思っていたのだ。
生きる事を諦めるというよりは、幼い頃より納得していたという方がいい。
王家の子供達は皆同じ様に帝王学を学ぶが、なぜ皆同じように育てられるのか、と言うことも繰り返し教えられるのだ。
自分の運命を物心付く前に伝える事に残酷さも感じるが、その分惰性に生きる者よりかは充実した日々を過ごしたと思う。
欲しい物や、学びたい事、優しい父王は法に触れる事以外なら許容してくれていた。王の子供達は各々自由奔放に成長したと思うのだ。
長兄はお忍びて出かけた城下の祭りで、並び売られた庶民の飯が甚く気に入り、食べ過ぎて腹を壊したというのに日参し、庶民飯を極めたいと息巻いていた。
次兄は次兄で物に意匠を凝らすのが好きで、良く工房に籠もっていた。
そんな兄二人にくっついて行っては邪魔者扱いされて、嫌々ながらも相手をしてもらっていたのが自分だった。
勿論、勉強に礼儀作法、必要な事は無難に熟してきたが、これと言って優秀であった訳では無い。
シガレットや他の兄弟達と悪戯を沢山したし、怒られ過ぎて食事を抜かれたこともある。
楽しかったな。ふっと書類を書きながらも笑みが漏れる。
まあ、王になる事も、ここから逃げる事も出来ないのだから受け入れるしか無いのだが、弱って行った兄達は何を思っていたのだろうか?
考えても答えはもらえず、また自分も聞かなかった。
弱り行く兄をただ側で見ていただけだ。
次は自分だと、心に刻み付けていたのかもしれない。
召喚の儀が行われた時は、生きる残る事など到底考えていなかった。
魂の内側から焼き尽くされる様な苦しみの中で、まだ倒れてやるものか、と意地をはった。
ただの意地だ。
残される家族、友、民、国、他の者達の為に立っていたのではない。
兄王達が最後まで生き抜いたその跡を、自分もまた意地でも辿ってやろうとしただけだ。
これでは王が聞いて呆れる。シガレットにもこんな事言えやしない。本当になまくらな王なのだ。
そんな自分の前に番が現れるとは、誰も思わないだろう。
召喚時はその場繋ぎの治療師が来ると思っていた。
次の弟に王位を委ねる迄、この苦痛が続くのだと、腹を括る儀式でしか無かった。
サウラを見た時、身体に残った力が全てその場に縫い止められた様な感覚があった。
体の全てが彼女に吸い付けられる。大した体力は残っていなかったがその場で身動ぎも出来なかった。
サウラは気が付いていない様だが、あの漆黒の目を見た瞬間からサウラの内から命が流れてくる様に感じたのだ。
立って側まで行こうにも、体は言うことを効かず現実を突きつける。
しかし干からびた自分はまだ足りないと更に、彼女を求め吸い付くして行く。
絡め取り、引き込んでいく。
呼吸は楽になり、痛みが潮のように引いて行く。自分に入り満ちて行く彼女の魂は、体の隅々まで行き渡り、消えかけた魂を編み出す糸として、共に、もう一度縒り合わせられた。
彼女が 「番だ。」 口から思わず零れ落ちた。
以前の魂はもう戻らない。彼女が、我が半身、我が全て。離れる事など、どうして出来ようか!
番とは信じられない力を打ち出す。歩けない程弱っていたのに、その後自分の足で移動した。
食事も満足に取れていなかった為、筋力は落ちてはいるが体を動かす分には全く遜色無かった。
サウラに礼を述べたいが、なんと言ったら良いか言葉に出来ない。
父は母になんと言って側にいてもらったのだろうか?他人事としてちゃんと聞いていなかった事が悔やまれる。父の言葉はちゃんと聞いておくべきだった。
番の存在は衰える事なく、毎朝続く回復魔法にも存外な影響を出している。
己の強大な魔力に耐え得る生命力は直に溜まるだろう。西の結界補強にも間に合いそうだ。
もう帰ってくる事などないと思って墓に挨拶も行ったのだが、まだ先が見える。
降ろされた緞帳が再び上がった。晴れ晴れとした新たな舞台を、彼女からはどう見えるのだろう?
自分ばかりが幸せにしてもらっては、また罰が当たりそうだ。そうなる前に彼女にも幸せになってもらおう。
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