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37 結界の亀裂
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ダァン!! ドッ!
重量物が打ち付けられる音が辺りに響く。
辺りに舞った土埃の奥に、こんもりと何かの塊が見えて来た。よく見れば大、小併せてこんもりと小山がいくつも出来ている。
本日何体目かの討伐達成だ。
武器を持った騎士らしき者たちが周囲にいるにも関わらず、周りからは歓声も上がらず、静寂が広がる。
広く視界が効く様になると、岩肌が目に付く乾燥地帯である事がわかった。
ズシャッ
地面に愛刀を突き刺したのは、西武結界領タンチラード辺境伯が長女シャーリン・レン・タンチラードだ。
西部結界境界の亀裂部近くに陣を張り、昼夜交代で結界内への魔物の侵入を防いでいる。現在第一線で防衛に当たっている隊がここにあたる。
「次から次へと、鼻が効く事よな。」
本日に入ってから、何体目であろうか?時間は既に昼を超えた。
陣展開直後であったなら、倒した獲物の数を数えもしようが最早飽きた。後程報告にあげるのだ。優秀な部下が今頃記録を取っている。
飽きた、シャーリンが愚痴を零せば語弊が生じるが、飽きたのはここを守る事ではなくて、此奴らに飽きたのだ。
亀裂を嗅ぎつけては、その隙間を抉じ開け入って来る魔物は後を絶たず。その度に討伐劇が始まるが、討伐慣れしているシャーリンや周りの騎士に取って、彼らの攻撃は単調で新鮮味も手応えもないと言っているのだ。
「若様、では外に打って出ますか?」
シャーリンの後方より、シャーリンよりも長身の若者が声をかける。戦闘には加わっていなかったのか、服装にも汚れの一点もない。
若様と呼ばれていたのは、シャーリンが時期当主に他ならないからである。
シャーリンは西部の民の特徴濃く、長身で、手足も長く、女性ながらがっちりとした筋肉が付いている。頭の高い位置で結えて、腰の辺りにまで垂らされた豊かな赤髪は、光を受けると眩しいほどだ。
戦闘用と言うよりは、体を動かす事に重視したほぼ軽装備のままでの戦闘である。防具と言えば左胸に当てられた皮の胸当てと膝当てのみ。
大腿までのショートパンツにブーツ、肘までの丈のシャツである。
「ジャン、我らの任務は結界境界での防衛だ。結界外に躍り出ては消耗するだけだろう。」
攻撃は最大の防御、を鉄則とする様な民である。今の状況よりも、積極的に魔物狩りに出たい気持ちも分かる。
この状態で結界と睨み合って、かれこれ数ヶ月経つ。
戦場ならばいざ知らず、今は、ただただテリトリー内に入った物のみを打つ、地味な作業になっている。不満が出てくる者も居るだろう事は予想通りだ。
華やかな戦闘に明け暮れたいのは分かる、分かるのだが、それをやっては本末転倒である。
結界外に出て思うがままに暴れようとも、取り逃した魔物が、この亀裂より領内に入った時点でこちらの負けだ。
後方には人が住む集落があり、もう少し領内に入れば大きな街にも通じるのだ。そんな所に魔物を野放しにするわけには行かない。まして、縦横無尽に暴れられるのは、結界が領を守っていてくれていればこそだからだ。
その結界が、この度は危機なのだ。
「気持ちは分からんでもないがな。」
シャーリンは苦笑混じりに溜息を付く。
ジャンもフッと短くため息をつくと、手短に連絡事項を伝える。
「陛下を迎える為の一団が出発しました。」
「ならば、ここも後数日の辛抱だろう。」
陛下が、王都から出立した、と知らせが入ったのだろう。東の領土境界まで、護衛騎士団が出ることになっていた。これから数日後には、結界補強の儀式が行われると言う事だ。
吉と出るか凶と出るか、終わって見なければ分からないものだが。どうあってもあの陛下もまた、結界だけは必ず守ろうとするだろうから、数日で、兵士たちの不満も治ろう。
幼い頃から知ってる者としては、複雑だがな…
「ジャン、巡回警備の人数と、回数を増やせ。父上の陣と、他小隊とも連絡を密に入れろ。亀裂発見時、または魔物遭遇時には必ず上空へ知らせを打たせるように徹底させろ。結界の亀裂が若干広がっている。次はどこに亀裂が入るか分からんぞ。」
「はっ。」
「お前の隊は後方丘に待機。前が獲り逃した物は全て狩れ。」
後方には小高い丘がある。辺り一帯を見渡せる為、いち早く戦況を把握できるのだ。今後亀裂が増えた場合、魔物出現率も上がるだろう。前衛が防ぎきれなかった全てを防げとはこの広大な結界を前にやや無茶振りではある。
しかし、そこは流石の戦闘好き民族であろう。
全て、宜しいのですね?
顔色一つ変える事なく、不適な笑みを称えては、深く肯き、足取りも軽く主人の前から辞したのである。
逃げ果せた魔物に取って、待つのは果たして幸運か?
重量物が打ち付けられる音が辺りに響く。
辺りに舞った土埃の奥に、こんもりと何かの塊が見えて来た。よく見れば大、小併せてこんもりと小山がいくつも出来ている。
本日何体目かの討伐達成だ。
武器を持った騎士らしき者たちが周囲にいるにも関わらず、周りからは歓声も上がらず、静寂が広がる。
広く視界が効く様になると、岩肌が目に付く乾燥地帯である事がわかった。
ズシャッ
地面に愛刀を突き刺したのは、西武結界領タンチラード辺境伯が長女シャーリン・レン・タンチラードだ。
西部結界境界の亀裂部近くに陣を張り、昼夜交代で結界内への魔物の侵入を防いでいる。現在第一線で防衛に当たっている隊がここにあたる。
「次から次へと、鼻が効く事よな。」
本日に入ってから、何体目であろうか?時間は既に昼を超えた。
陣展開直後であったなら、倒した獲物の数を数えもしようが最早飽きた。後程報告にあげるのだ。優秀な部下が今頃記録を取っている。
飽きた、シャーリンが愚痴を零せば語弊が生じるが、飽きたのはここを守る事ではなくて、此奴らに飽きたのだ。
亀裂を嗅ぎつけては、その隙間を抉じ開け入って来る魔物は後を絶たず。その度に討伐劇が始まるが、討伐慣れしているシャーリンや周りの騎士に取って、彼らの攻撃は単調で新鮮味も手応えもないと言っているのだ。
「若様、では外に打って出ますか?」
シャーリンの後方より、シャーリンよりも長身の若者が声をかける。戦闘には加わっていなかったのか、服装にも汚れの一点もない。
若様と呼ばれていたのは、シャーリンが時期当主に他ならないからである。
シャーリンは西部の民の特徴濃く、長身で、手足も長く、女性ながらがっちりとした筋肉が付いている。頭の高い位置で結えて、腰の辺りにまで垂らされた豊かな赤髪は、光を受けると眩しいほどだ。
戦闘用と言うよりは、体を動かす事に重視したほぼ軽装備のままでの戦闘である。防具と言えば左胸に当てられた皮の胸当てと膝当てのみ。
大腿までのショートパンツにブーツ、肘までの丈のシャツである。
「ジャン、我らの任務は結界境界での防衛だ。結界外に躍り出ては消耗するだけだろう。」
攻撃は最大の防御、を鉄則とする様な民である。今の状況よりも、積極的に魔物狩りに出たい気持ちも分かる。
この状態で結界と睨み合って、かれこれ数ヶ月経つ。
戦場ならばいざ知らず、今は、ただただテリトリー内に入った物のみを打つ、地味な作業になっている。不満が出てくる者も居るだろう事は予想通りだ。
華やかな戦闘に明け暮れたいのは分かる、分かるのだが、それをやっては本末転倒である。
結界外に出て思うがままに暴れようとも、取り逃した魔物が、この亀裂より領内に入った時点でこちらの負けだ。
後方には人が住む集落があり、もう少し領内に入れば大きな街にも通じるのだ。そんな所に魔物を野放しにするわけには行かない。まして、縦横無尽に暴れられるのは、結界が領を守っていてくれていればこそだからだ。
その結界が、この度は危機なのだ。
「気持ちは分からんでもないがな。」
シャーリンは苦笑混じりに溜息を付く。
ジャンもフッと短くため息をつくと、手短に連絡事項を伝える。
「陛下を迎える為の一団が出発しました。」
「ならば、ここも後数日の辛抱だろう。」
陛下が、王都から出立した、と知らせが入ったのだろう。東の領土境界まで、護衛騎士団が出ることになっていた。これから数日後には、結界補強の儀式が行われると言う事だ。
吉と出るか凶と出るか、終わって見なければ分からないものだが。どうあってもあの陛下もまた、結界だけは必ず守ろうとするだろうから、数日で、兵士たちの不満も治ろう。
幼い頃から知ってる者としては、複雑だがな…
「ジャン、巡回警備の人数と、回数を増やせ。父上の陣と、他小隊とも連絡を密に入れろ。亀裂発見時、または魔物遭遇時には必ず上空へ知らせを打たせるように徹底させろ。結界の亀裂が若干広がっている。次はどこに亀裂が入るか分からんぞ。」
「はっ。」
「お前の隊は後方丘に待機。前が獲り逃した物は全て狩れ。」
後方には小高い丘がある。辺り一帯を見渡せる為、いち早く戦況を把握できるのだ。今後亀裂が増えた場合、魔物出現率も上がるだろう。前衛が防ぎきれなかった全てを防げとはこの広大な結界を前にやや無茶振りではある。
しかし、そこは流石の戦闘好き民族であろう。
全て、宜しいのですね?
顔色一つ変える事なく、不適な笑みを称えては、深く肯き、足取りも軽く主人の前から辞したのである。
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