[完結]その手中に収めるものは

小葉石

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58 赤い石

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 バート、ガイ、ソウの組が北東結界領境界付近近隣の村を警邏けいら中に、住民から近ごろ魔物が多いと訴えられた。

 村に沿う様に有る森の中は見通しも良く、大型獣の住処ではないらしいのだが、この所大型の魔物が増え領主に嘆願書を出す準備をしていたとか。
 
 何か情報を聞き込もうとした所にフードをしっかり被った男が怪しい動きをする。村人の目に着かない様に森の方へ移動しているのだ。
 情報を得たいならば少しの変化も逃さない目と勘も必要だろう。

 バート、ガイは静かに男の後方へ、ソウが男の前に出て声をかける。

「ここから先は危ないです。まさか今から森の中に入るのですか?」

 見たところ30代位の男である。目元まで灰色のフードでしっかりと覆っており視界は悪かろう。
 昼間でも魔物は活動するし、例え魔物狩りであったとしても流石に一人では行かないものだ。

「いやぁ、この森には慣れてましてね、いつものことなんで心配いらんですよ。」 

「慣れているのなら、貴方もあの村の方でしょう?今魔物の話で持ちきりでしたから、僕らが一度警邏してきます。その後に入られては?」
 ソウ達は長いロングマントの下に揃いの黒の隊服だ。腰に帯剣しているのをマントから覗かせて見せれば騎士と分かるだろう。

 剣を見せた所で男の顔色が変わる。ソウは顔色を変えずに一歩小さく後ろに足を引く。それを見た後ろのバートは剣に手を置き、ガイは腰の後ろの縄に手をかける。

 男は胸元に手を入れる。
「いえ、お守りが有るんですよ、こういう日の為に。魔物除けにもなるやつでしてね。」

 バッとソウの顔面に何かかかった。

 シュウシュウ、辺りに霧の様な煙が立ち込め、独特の鼻に突く臭いが立ち込めた。

「酸か!!」

バートが叫び、剣を抜く。

「ハハハハハハハッバカな坊やだ!
 のこのこと前を塞ぐからこうなるんだ!
 それは骨をも溶かす強酸だぞ!
 俺の相手をするよりも早く水でも掛けてやるんだな。」
 言うなり懐剣を抜き放ちソウに斬りかかる。

 が、ドンと顔を押さえたままのソウに胸元を蹴り返され後ろへ飛ばされ倒れ込んだ。その拍子に手に持つ懐剣はバートが蹴り飛ばす。

 男が体を起こそうとうつ伏せになった所で、ガイが風魔法で上から圧をかけて押さえ込んだ。

「ぐっうっ」
 身動き一つ出来ない程押さえつけガイは有無を言わさず頭部に一撃、男の意識を奪う。


「ありったけの水を持ってきてくれ!!」
 バートが村人に向かって叫ぶ。
 
 未だモウモウとけぶっているソウに向かって次から次に水がかけられる。

 "毒物や薬は試したことがない"

 って言ってなかったか?
 焦る、自分のこと以上に焦るバートが必死に水を掛け酸を流す。
  
「騎士様大丈夫かい?」
 水瓶を持って駆けつけてくれた村人が恐る恐るソウに話しかけている。

「まず、凄い不味い!」 
 いきなりソウは、ガッと瓶を掴んで口に運びうがいをし、そのままバシャバシャと水を飛ばして、ガシガシ洗い流していく。 

「うぇ、不味い…口に入った…」

 ホ~~~、バートの力が抜けていく。どうやら酸も大丈夫らしい。

 被害はソウのマントと上着に当たる衣類のみ。ボロボロになった物をパッパッと払っている。見える肌には傷はない。
 
 嫌、いや、いや、いや、これはこれで色々まずい!
バッとバートはマントを脱ぐとソウに放り投げる。
 
 頼むからガッチリ着ておけ、と。まだ、自分は死にたくはないんだ。

「ガイ、その人胸に何か隠してる。後ろに飛ぶ時に胸を庇ってたんだ。」
 グッタリ疲れているバートからマントを借りると、プルプルと頭の水気を飛ばしながら、上半身を隠す様に着直す。

 ガイが男の胸を探ると、真赤な小石?宝石?の様な物を見つける。魔法石なのか?強い魔力を感じるが、でも今まで見た事あるものより異質な魔力だ。
 石を見ているバートもガイもこれは見たことがないらしい。村人に聞いても誰も知らないばかりか、今捕まえたこの男はここの村人でさえないと言う。
 
 ガイが風魔法でソウの身体を乾かす内にバートは男に猿ぐつわを噛ませ手足を縛り上げる。

 魔法石の事ならプロに聞くべき、と男の身柄と共に王城に帰る判断をした。

「騎士様良かったらこれを。」

帰りの馬に男を縛り上げて固定し、荷物を積み込む。ソウは流石に上半身裸に近い状態で疾走する訳には行かず、親切な村人に茶色の上着を分けてもらって着替えている所だ。
 口直しに、と盛大に不味いを繰り返していたので気の利く村の娘が果実水を持ってきてくれる。

「ありがとう、生き返ります。」
 丁寧にお礼を言って飲んでいる様を見ながら、陛下のライバル(違う意味での)増えてるな、とバートが呟く。

 何にしても、結界が崩れていない所でこれだ。ゴアラの手の者か分からないが、大方はずれてはいないだろう。

 






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