[完結]その手中に収めるものは

小葉石

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61 久方の逢瀬2

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 大陸の北東には大国の一つである、カザンシャル王国がある。中立国という立場であっても昔から良い関係は築けていたのだ。

 しかし、ここ数年旗色が変わってきている。第1皇女であるサザーニャとの婚姻の打診を頻回に受け、断れなくなってきた所で、サウスバーゲン第2皇女セーランと、カザンシャル王国皇太子ボウシュ皇子との婚約という形で落ち着いたと思われていた。

 しかし来たる皇太子の生誕祭に皇太子の婚約者であるセーランと、国王と番であるサウラがカザンシャル王国から招待された。
 招待自体は全く問題なく他国の安泰を祝福すべき事であるが、番であるサウラが出席しない時のカザンシャルから出るであろう提案の内容が些か問題になる、とサウラが分かりやすい様にルーシウスは話してくれた。

 何故かサウラを膝の上に乗せて…


 遠征から城に帰ってきたのは確かまだ午前だった。入浴をしてルーシウスと話をしてそこ迄は覚えている。

 空腹で目が覚めた時に、なぜルーシウスまで隣で寝ているのか?誰かに聞こうにも部屋にはいつもいる侍女はやはりいません…

 安らかそうなルーシウスの寝顔を見たらこの人が無事で安心する。どうしたものかと思案しつつ身動ぎすればルーシウスも目を覚ました。目が合ってしまった所でとてつも無く居た堪れなくて、ガバッと寝台から出て行きたくなる衝動に駆られるが、それより先にぎゅうっと抱きしめられてしまっては身動きできない。

「うっ」

 体術や剣技に心得があったとしてもサウラは細めの女子だ。男性の力で思いっきり?抱きしめられれば息も詰まる。

「すまん。強過ぎたな。」

パッとルーシウスの方から離れてくれて、息をつく。

「良く寝ていたが、疲れは取れたか?」
ルーシウスは優しく微笑んで聞いてくれるが、それよりも目覚めの原因の空腹が答える。

 クゥゥゥゥゥ

 恥ずかしさにサウラは固まる。
が、ルーシウスはふむ、と肯き寝台からヒョイと降りて侍女を呼ぶためにベルを鳴らした。

「城へ戻ってからまともに食べてないのだろう?食事にしよう。」

 ルーシウスの一言で食事の準備が整えられ、久しぶりの二人での食事を取る。
 2人だけの時に直ぐに消えてしまう侍女達はいつもどこにいるのかと素朴な疑問であるが、そう言えばルーシウスについても、仕事は?

「あの、仕事は?」
其方そなたが帰城しているからな。今日は休みをもらったんだ。」

 晴れやかな笑顔が帰ってきたが、そんな理由で休んでいいものか更なる疑問が頭に浮かぶ。

 いい、いい、と手をひらひらさせるルーシウス。食事もしっかりと食べられている様だ。

 食後のデザートが運ばれてきてからルーシウスに手招きされ側に寄るとヒョイと膝の上に、そこから膝の上の住人となりカザンシャル王国の説明に至る。

「出来れば生誕祭に其方を隣に置きたい。嫌か?」

 お願いでも命令でも無い、サウラに嫌か?と聞いてきたのだ。命令ならば誰も断れないだろうに。
いつもサウラの意見を優先させようとしてくれる。

 今迄ならば、国内でならば問題は無いのだろうが、流石に他国が絡んできてはそうも言ってはいられなくなってきた。ましてゴアラの介入の隙を見せる様な外交は王としては出来ないのだ。

「笑顔でいる自信がありません。」

「構わん。其方が居てくれればそれで良い。」

「マナーもまだ身についてませんよ?」

「番は貴族から出るとは決まっていない。市井の者であるならマナーも不十分でも問題はなかろう。それは彼方あちらも良くわかっているはずだ。母も一般の市井の出だ。話しただろう?」

「貴族の方と上手く話せないと思います。」

「いや、むしろ誰とも話さなくても良いと思うぞ。」

「まだセーラン様にお会いしたことがありません。」

「では、後ほど呼ぼう。あれもサウラに会いたがっていた。」

 サウラが頭から断らない事に気を良くしたのか、ルーシウスはずっとサウラの結えていない髪を弄っている。
顔は勿論ニコニコだ。

「急に泣き出してしまうかも。」
 他国に行くのだ。何があるか分からない。
何かのきっかけで、あの時の情景を目の前に見てしまうかも知れない。そんな時はっきり言って平静を保てるのかも分からないのだ。

「何の為に俺がいる?王の背には長すぎるマントがある。泣いている女1人位十分に隠せるさ。」

 断る理由が見つからない。サウラの方が今回は全面降伏だ。カザンシャルへの同行を了承するしか無い様である。
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