[完結]その手中に収めるものは

小葉石

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68 城下での暴走

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 ボウシュ皇太子誕生祭当日早朝から正午前まで暗部によるカザンシャル王城周囲の警邏けいら任務が入る。カザンシャル側からも了承を得ている為公的任務だ。
 昨日夕から警備のために城門は閉じられ警備兵のみしか出入りできなくなっているが、最終的な安全確認である。

 暗部は既に王都入りしており、ソウもバートとガイに合流する。夜も明けぬ前から行動を開始し、夜はカザンシャル側の兵も含め交代で警備にあたるのだ。

「お前どこ行ってたのよ?」
 城下町を徒歩で移動中、唐突にガイが聞く。ソウはサウスバーゲン城に帰ってより王命での別行動だ。任務内容は黙秘でいいが、新人が単独行動とはまた目立つ事を、と言いたいようだ。近衛騎士全ての者にソウの存在を知らされているでもなく、王の周りの極一部の騎士のみに留められているのもまた異色な待遇であろう。

「どこ、と言われても。」
 渋い顔して答えあぐねるしか無い。

「まさか、お前だけいい人に会いに行ったんじゃ…無いよな?」
 ガッシと肩を組まれて、グリグリ小突かれる。彼らの愛情表現は時に荒い。

「痛、いたた、ちょっと痛いって!」

「ガーイ…やっかみは分からんでも無いが自分の身が可愛いなら、やめとけよー。」
 何とも間延びしている警告を発するバート。

「はっ自分の身なぞ、今更可愛いも何も無いだろうが。」
 どこと無く元気ない声を発するが、ソウをガッチリ固定している腕の力は緩まない。

「クッ…ガイ!痛いって!」

 そろそろ本気の乱闘突入か?の一歩手前でソウが吹っ飛んだ。いや正しくは掴んでいたガイがソウをそのまま後ろに引き倒す反動で前方に走り込んで行った。

「うぁ!おいガイ!」
 後ろにいたバートが何とかソウを受け止める。ガイは既にかなり前方だ。

「バート!ガイはここに知り合いがいるの?」

「は?アイツは生まれも育ちもサウスバーゲンだ!」
 知り合いなんて居ようはずもない。

「アイツって言ってた!」

 取り敢えず此方こちらも全力でガイを追う。まだ夜も明け切れていない街中には二人の足音が異様に大きく響く。
 サウスバーゲンよりも建物の色は白っぽく統一感がある街中を二人はガイを追って疾走しているのだ。

「心当たりは?」

「この国に関しちゃないな。」
 何とも付き合いが長い暗部メンバー、大体のことは知っている仲であったりする。だが、今は任務中である。仕事に関してはバートよりも真面目に打ち込んできたガイが単独で動くとは。普段ならば有り得ない光景なのだ。事と次第によっては罰則ものだ。

 あいつが、こんな事するってぇと…
 嫌な確信がバートの頭をかすめる。

「あいつ、はえぇからな!」
 ソウも足は速いほうだ。だが、ガイに追いつけない!

 ガッシャン!ガン!!

 2つ先の路地から何かぶつかる物音だ!一気に駆け込む。

「ガイ!!」

 ガイは左腕で男の胸ぐらを掴み今にも顔に拳を叩き込みに行く所だった。見るからに一般人だ!

 二人同時にガイヘ飛びかかる。バートは後ろで羽交い締めに、ソウは今にも振り下ろされそうな右の拳を何とか受け止めて一般人を離し距離を取る。

「落ち着けってガイ!」
「離せ!バート!!そこにいるのに!何で邪魔すんだ!!!離せ!!」
 我を失うガイは初めてである。ソウの右手にかばわれた男性はガタガタ震えながらへたり込んでいた。所々殴られたような跡はあり服が破られてしまっているが、大きな怪我は無さそうで胸を撫で下ろす。

「待てって!そいつも様子が変だろうが!」
「うるさい!俺が見間違えるわけが無いだろうが!」

「ヒィィィィ。た、助けてくださぃぃ。あ、あの人がいきなり掴みかかってきて…」
 ソウの隊服にすがり付き男は訴える。

「ソウ!そいつから離れろ!お前も!!」
 
 今、とんでも無い言葉が聞こえた。

 お前も、殺される?

 男を見てもブルブル震える中年のやや小柄な男である。見る限り、武器を持ってはいない。魔力はどうか分からないが、今のところ何も起こってはいないようだけど…

 フウゥゥッ

 ガイの方から魔力の気配。バッとガイヘ向き直ると空いた左手を差し出し魔法を使おうとしている。それも狙いはこの男だ。

 シュッッッ

 放った!?
 風を操るガイの魔法。風を凝縮し鋭い剣のようにして敵を貫く。けれど、今やったら極刑ものじゃないか!一般人には手出しならないのに!!

 バッと男の前に身体を滑り込ませ両手を向ける。一瞬白金色の光が目の前に瞬く。考えるより先に結界を張る習慣がついている。ソウの結界はガイの魔法を弾く。

「おい、何やってんだ。」
「誰か殺されるって?」
「喧嘩か?」

 まずい、幾ら早朝であろうとも起きて活動している人はいる。騒ぎを聞きつけ路地を覗きに人が集まってきた。

「た、助けてくれ!俺は悪くないのに!あいつらが!」

 ガイが襲っていた男が野次馬に助けを求める。

「おい!誰か警備隊呼んで来い!」 

「クッ」
 ガイを抑えながら、バートの顔も険しい。隊服を着ているのだから、此方は一般人ではない。が、他国の騎士が露地で一般人を襲うなどと醜聞でしか無い。
 ガイは未だに男から目を離さず、結界を張り続けるソウも側を離れることが出来ない。
 その場を離れる事も出来ずに3人と男は警備隊に連行される事となった。






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