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122 邂逅の神殿2
しおりを挟む大勢の人でごった返して山の麓は人の山だ。処刑の広場となった所も素晴らしい人混みであったが、此処もなんと言ったら良いか分からない熱気が渦巻いている。
ゴアラの王城を右手に見て整備された道を進みゆくこと数時間。中腹の辺りまで緑生茂る山が見えてくる。頂上の方は酷く切り立った崖が目立つが、中腹あたりまでなら幾らかなだらかな所も多く、しっかりと階段が整備されて登るに難しくは無い様だ。
階段を辿り上を見れば山の中腹辺りに白い大きな城とも言える神殿が建っている。
これが邂逅の神殿である。
かなり上の方に神殿はある筈だが、この登り口に当たるところにまで人が溢れている位には大勢の人が集まってきている様だ。
「すごいな、これ。」
「これ全部、ゴアラ王の妃候補?」
「の、様だがどうだかな?」
一国の王の妻となる為にはこんな中から選ばれるものなのか…
「サウスバーゲンでは見た事ないよね?」
「当たり前だろ?王が体調を崩していてそれどころじゃ無かっただろ?後は番が見つかったんだからハッキリ言って必要なかったんだよ。」
ポン、とバートに頭を撫でられる。
「妃を娶る事は国の一大イベントだからな。他は知らんがこれでも良いんじゃ無いのか?」
ガイはさして興味なさそう。
「さて、どうするか?」
神殿は、川の上に建てられている。流れがあるって事は頂上付近には泉が湧いていてもおかしくはないはず。
無いはずなのだが、神殿の上にこれ以上上がる道が無いのなら自力で山肌をよじ登る事になる、その前に当の神殿にまでいつ入れる様になるのか分からない位に混んでいるのだ。
神殿へと続く階段登り口では入殿予約表なるものに記名が始まっている。如何やら今日中には神殿までも辿り着くのは無理だろう。
「正攻法では辿り着けないなこれ…」
「夜を待つか?」
「今の内に登れるルートを探そう。」
バート組他、1組が、付近に潜入中だ。こちらの動きは常に他暗部には伝わる様にしている為他の組も後から合流するかもしれない。
その前の下調べとして、3人は人混みを掻き分けながら更に山の麓へ近づき消えて行った。
「3日だ、3日でこの馬鹿騒ぎを終わらせろ。」
コアラ城執務室には冷たい王の声が響く。
国内随所からやって来る妃候補達で溢れ返り小さな幼子を連れた親達が悲鳴の声を上げ始めた。元より、資金にゆとりある者達は宿屋を抑え我が物顔で逗留しているが、遠方から祝福の為にやって来た者達にとっては寝耳に水である。祝福を受ける為に留まる宿屋も無ければ、いつ祝福を受けられるともわからない。そしてまた次に来れるかどうかも分からないのだから必死になるのも無理はない。
無理やり山を登り怪我をする者も出で来ては流石に無視はできなかろう。
「全く、やる事なす事後手に回ってるよな。兄上もあれじゃ大変か。」
手を出すつもりは毛頭無いのだが、兄の気苦労は思いやりつつ、手は貸さないアルフィスは高みの見物中。
王家専用通路を歩きながらチラリと外を覗いて居る。
「殿下。如何やらネズミが紛れて居る様ですよ?」
「へぇ、何処の?」
「陛下からの伝言ですが、カザンシャルとサウスバーゲンだそうです。」
「ふん。いつもの事でしょ?それとも好きにして良いのかな?」
「…いえ、此度は陛下が、手を下されると。」
「は?兄上が?何時も見て見ぬ振りしてたのに?」
驚きに目を開く。大国に他国からの間諜など当たり前のことだ。今までとて何も手を下さず、悠然と構えていた兄が手を下す?
信じられない…
「何処の者に手を出すと?」
「サウスバーゲンですよ。殿下。」
コツコツと、前方から歩いてくるのは、先ほどまで地下牢にいた男だ。
「お前ね…何も言わずに消えたり、現れたり忙しないことだな。」
綺麗な碧眼の瞳に鋭さを増す。
「……サウスバーゲンの目的地を報告せよとのことでしたが、如何やら此処の様ですね。」
何かに導かれた様にこの地に集まってきている事はアルフィスは知らないだろう。カザンシャルの姫君も来られた様だ。やはり此処に何某かの答えがある。
真の開放を得たいものだ…
「私はまた少し、此処を離れます。あぁ、そう言えば、山奥で飼っているアレを開放すると言っていましたよ。」
「アレをか?兄上は何を考えて?」
美しい眉は寄せられて足元の床を凝視するその内に地下牢の男は踵を返しコツコツと歩いて行ってしまう。
「待て!古の魔法使い!お前は何をするつもりだ?」
呼ばれた男は振り返る。
「殿下、客を迎えよ、と仰せつかっておりますので。それと私の事はトランジェスとお呼びください。」
トランジェス、200年間も神殿地下牢に閉じ込められていた古の大魔法士とも言われている掴み所のない男だ。
恩赦によって数十年前に牢から出されて今に至るが、ゴアラに寝返った訳ではないだろうに未だ尻尾は掴めない……いや、掴ませてもらえないのが正しいのかもしれないが。
不思議な事にトランジェスの中の魔力が無くなったわけでは無いらしいのだが、全くと言って良いほど不快を感じさせない。性格上の良し悪しや合う合わないではなくて、魔力持ち特有の匂いが無いのだ…
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