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133 敵陣 2
しおりを挟む岩山の巨大な空洞から見れば、何とも小さく控えめな入り口か…低い立木に覆われてすっかりとその入り口は隠されており、傍目からは見つからない様な所にポツンとあった。
「陛下、此方から中の洞窟、先程の大蛇の居る所まで繋がっておりますが、何とも広く、複雑な構造になっている様です。分かれて進むのはお勧め出来ません。」
「我らが斥候に出ますので、シエラ様と隊中列をお進み下さい。」
ルーシウスは、前列後列を暗部団員に挟まれる形を取って洞に入り、反応があった山頂に向かって地下から登っていく。
洞窟の中は魔力によって明かりが補充され、中の様子は外にいるのと同じ位明るい。外から見るのと違い洞窟内は殊更広大で、幾つかの脇道へ続くであろう入口が岩壁に沿っては点在している。
なる程、地の利に聡い者がいなければ此処から無事に出ることも不可能になりそうな程深い洞窟と見て取れた。
「マンタル!時間がない。可能な限り最短距離で行く。距離はどれ程か?」
斥候に付き従い足早に進んでいく岩の道。広さはあると言えども曲がりくねり複雑に絡み合っていては、目的地までは時間もかかるだろう。
「叩っ斬る訳にはいかんか?」
「馬鹿を言わないでください…そんな事したら落盤で全員あの世行きですよ?」
ルーシウスの最短で行きたい作戦はバートによって却下される。
王自らにこんな悪路を行かせる事の屈辱を何人もの団員が感じている。当の本人はひたすらに距離を詰めることに専念しているようで、道が悪かろうが気にしている様子はない。
時折、生暖かいような、水の臭いのようなものに混ざって顔を顰めたくなるような獣の臭いらしきものが漂ってきた。
「何の、臭い?」
シエラも顔を顰めている。
「先程の大蛇でしょうか?」
相対している時には感じなかった臭いだが、微かにこの洞窟の奥から漂って来ているのだ。
「血痕?陛下!血痕があります!」
「サウラが大蛇に付けた傷ね、急ぎましょう!」
サウラの名が出た途端に既にルーシウスは斥候が赴いていった洞窟の奥へ走り出していた…
暗い……飲み込まれてからどれ位経った?大蛇の喉に剣を突き立てた直後飲み込まれ、その痛みからか大蛇が大暴れしてくれたお陰で、一気に奥まで押し流されてここまで来れた。筋肉に圧迫されている感覚に包まれ、光も届かず目を開けても何も見えない暗闇の中で、進んでいるだろう前方に両手を伸ばしながら押し込められて行けば、手に触れる物が!
大蛇の筋肉の蠕動で奥へ押された瞬間に手に触れた物をソウは掴んだ。
人の手だ!結界を張っているだろうネイバーの魔力の気配!!
ギュッと握ると、握り返して来る!
ネイバーはまだ生きてる!!
手をそのまま握りしめて、回復魔法と全結界防御をネイバーに張る。大蛇の体内の中だからか、圧迫感や密閉感は物凄いが、寒さや暑さは全く感じ無いのが救いだ。
あと、3日…自分の限界を知ったのは幼い頃に結界を張り続けて3日目に倒れたから…大蛇に飲まれてからどれだけ時間が経ったか分からないが、優秀な暗部団員とシエラがいるのだ。万に一つも失敗など無いと確信すらしている。だから、飛び込んだ…後は、時折結界をかけて、ゆっくりするつもりで体力を温存する。
ネイバーに全結界防御を張ると同時に、左耳のピアスにも意識を集中する。ルーシウスの魔力回復に通ずる魔法石に…
私はまだ、生きている。生きる事を諦めてはいない!
あの時、ルーシウスに言った言葉が、自分の心の中にこだまする。
生きていれば、助けられる、
生きる事を、諦めないで!!!
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