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50、竜の決断 2
ミルカイ国王宮はコロント伯爵家よりも大きく洗練されている。コロント伯爵家は全ての調度品に贅を尽くしたような内装だが、王宮の調度品は高級な物を使用しているが無駄な飾りなどなく返って質素に映るくらいだった。もちろんサリャーナ自身はミルカイ王宮は初めて訪れるところだ。それも今はカーリスの腕に抱かれたまま、カーリスが掛けてきたカーリスの外套の隙間から外を覗くような体でそんな城中を観察していたりする。
意識を無くしたのは一瞬だったのか…自分の体調を伺えばそんなに時間は経っていないと思える。それなのにカーリスはどうやってか、すでにミルカイ王国の城にまできていた。
「……ここは…?」
「ミルカイの王城だよ?サリャーナはまだ寝ていていい。」
覗き見える立派な城内に不釣り合いな自分がいてゆっくりと居眠り?そんな馬鹿げた事などできないのに、ことも無げにカーリスはサラリとそんなことを言う。
「これは!お越しですか?」
突然の訪問なのだろう。カーリスの姿に気がついた周囲の騎士達が一斉に駆け寄ってくる。
「王はどこに?」
遠慮のかけらもなくそれが当然と言っているカーリスの態度が、カーリスの立場をまざまざとサリャーナに証明してくる。
「は!謁見室に居られますゆえ、直ぐに知らせて参ります!」
騎士の一人が城内ではあり得ないほどの速度で走り去る。
「お、王様に会うの!?」
カーリスの腕の中にいるサリャーナは王城にいると言うだけでビクビクと恐れ多く縮こまりそうになっているのに、まさかの王様との謁見なんて…あり得ないほどの出来事だ…!
「大丈夫。大切な番の君を人目に晒すような馬鹿な真似はしない。ただ、不敬を働いたあの者達の処罰を言いつけなければね?」
あの者達…サリャーナが必死になって救命したコロント伯爵家の人達…住む屋敷を失って彼らは今日からどうなるんだろう…とやんごとなき貴族達の今後が少し心配になってしまうサリャーナなのだが、サリャーナに毒を盛った、その事実をカーリスは有耶無耶にはしないと言うことだ。
「久しぶりだな。ミルカイの王。」
謁見室に入るなり、挨拶も発言の許可もなくカーリスは話し出す。
「はっ…お越しをお待ちしておりました。」
何と言うことだろうか…国王の方が膝を折る勢いでカーリスを迎え入れている。
「至急、君達に返答を求めよう。」
「は?何に対してでございましょうか?」
「我が番に毒を盛った者がいる…」
「は?コロント伯爵令嬢に!?」
そうなるだろう。カーリスの番はコロント伯爵令嬢ロデアンネだと周知されているから。
「………そうではない。私の本当の番は今私の腕の中にいるこの令嬢だ。」
「は……?…え?どう言うことでございますか!?」
全く状況が飲み込めていないミルカイ国王はカーリスとカーリスの腕に抱えられている外套を掛けられた人物らしき塊へと忙しなく視線を動かしながらオロオロとしている。一国の国王のこんな情けない姿は今後一生見る事はないだろうと思うほどの場面である。サリャーナの意識ははっきりとしていたが、声も出せずにただじっとしていることしかできなかった。
意識を無くしたのは一瞬だったのか…自分の体調を伺えばそんなに時間は経っていないと思える。それなのにカーリスはどうやってか、すでにミルカイ王国の城にまできていた。
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覗き見える立派な城内に不釣り合いな自分がいてゆっくりと居眠り?そんな馬鹿げた事などできないのに、ことも無げにカーリスはサラリとそんなことを言う。
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あの者達…サリャーナが必死になって救命したコロント伯爵家の人達…住む屋敷を失って彼らは今日からどうなるんだろう…とやんごとなき貴族達の今後が少し心配になってしまうサリャーナなのだが、サリャーナに毒を盛った、その事実をカーリスは有耶無耶にはしないと言うことだ。
「久しぶりだな。ミルカイの王。」
謁見室に入るなり、挨拶も発言の許可もなくカーリスは話し出す。
「はっ…お越しをお待ちしておりました。」
何と言うことだろうか…国王の方が膝を折る勢いでカーリスを迎え入れている。
「至急、君達に返答を求めよう。」
「は?何に対してでございましょうか?」
「我が番に毒を盛った者がいる…」
「は?コロント伯爵令嬢に!?」
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