[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

文字の大きさ
28 / 80
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

17、封印とは 3

しおりを挟む
「当たり前ではないですか。貴方は私のの鍵の様なものだ。貴方がいなければ私の封印など、意味がないのですから…」

 後ろから大神官はそっと耳元に口を近づけてそんな事をコソリと言ってくる。後ろにはカーペ君が従順な犬の様に張り付いているのに…!

「ばっ!あんた、馬鹿なのか!封印とかそんな事、人前でペラペラ喋ったら…カーペ君が怖がるじゃないか!?大神官っていう自覚をもっとしっかり持って!!」

 もう大神官だって魔王だって構わないと、必死に声を落として俺は大神官に抗議する。カーペ君は本当に良く働くいい子であった。良い所の家に養子にでも貰ってもらい、可愛がられて幸せに暮らして欲しいと思う程には、物凄く世話になっている。それなのに、封印やら何やらとここで大神殿話すには少々敏感にもなろうと言う単語を出して…カーペ君が巻き込まれて酷い事にでもなったら…そんな事を考えてたら涙がジワッと出そうになる…今の俺の状況だって受け入れ難いのに、完全に心が病んでしまうかも知れない……

「………ふふ!貴方は本当に可愛いですね!!」

 一瞬、ポカンと動きが止まった大神官だったけれども、次の瞬間には満面の笑顔で相好を崩し、後ろから俺にギュッと抱きついてきた。

「うわぁ!だから!!違うんだよ、カーペ君!大神官様、普通はこんな事しませんよね?ね?しませんよね?」

 カーペ君が、見ている!違う!これは何でもないんだ!!何やら勘繰られても誤解を招いても面白くはないし、何よりも大神官の真実の姿が魔王なんて事がバレるわけにはいかないだろう?

「ルアン、良いのですよ?カーペの事は置き物か何かだとでも思っておいてください。」

 抱きついてくる腕の力を緩めようともしないで、大神官はヒソヒソ声で話す俺に合わせて、わざとらしく耳元で話してくる。
何にせよ、置物は人の世話なんてできないししないでしょう!?きっと大神官が魔族だからこんな人を人とも思わない発言をするんだ!

「構いませんよ。御使様!主人と貴方様に仕える事が僕の仕事ですから!」

 さも当然と、この様な状況に疑問を持たず、あっさりと認めてしまっているカーペ君の懐の大きさに脱帽だ……

「ほら、言いましたでしょう?カーペはしっかりとしているのです…それよりも…あぁ、どうかルアン…この衣装を着てみてください。あ!直ぐに働けというのではないのです。時々これを着て私の側に居てさえくれれば良いのですから。」

 それが大神官補佐の役割?ただそこに立っていれば良いと?貴族家の義理の息子になってから死に物狂いで勉強した結果、ただ立っているだけの仕事なんてないという事はわかっているのに…

「そ、そんなの仕事の内に入りませんよ!仕事をしなくてはいけないなら、そうだ!外でして来ます!あぁ!畑がありましたね?私、これでも農民だったのですから!」

 早くこの状況を打破したくて心に思いつくままに口に出す。

「おや、庭を見たのですか?」

「はい!ね?カーペ君!昨日一緒に行きましたよね?」

「はい。庭に出てみましたところ、御使様は物凄いスピードで畑を耕されてしまわれましたので新しい仕事がないんです…」

 大変申し訳ありません、とカーペ君にペコリと頷かれてしまった。

「貴方は働き者なんですねぇ!」

「ええ、それはもう!だから、仕事を!?」

 待って?仕事ってこの大神殿で何すれば?この衣装を着て、お飾り人形の様に過ごせと?

「貴方の仕事はの側にいる事です。このままここにずっとですよ?それがとの契約ですから………」

 うっとりとするほどに良い声で、サラリと言って下さるのですね……もう、今、抵抗できる力がこれ以上ありません…昨日の今日で、まだ俺の体は痛いのです……何でこんな事に……信じられない様な魔王の話からしたら女神様に恨み言をぶつけてしまいそうだけれども、豊穣の女神として農民達の拠り所だったんだから…そういう訳にもいかないだろうし……

 ガックリと大神官の腕に抱かれた俺から力が抜けたのを確認して、大神官は俺を抱え直してニコニコしている。

「カーペ、ルアンの着替えを手伝って上げなさい。」

「はい!大神官様!」

 カーペ君の明るい声が二つ返事で答えるのを聞いて、今朝の俺は抵抗を諦めました………そして大人しくカーペ君の手伝いを受ける事になり、用意された衣装に袖を通した。サイズもピッタリ…で思ったよりも動きやすくて肩は凝らなそうだ。でも、やっぱり姿見に写っている自分にはピッタリだけれども、それを後ろで見つめながら満足そうにニコニコしている二人の様に、自分に似合っているとは思わないんだが……

「ふふふ…まるで、ルシェーラが私の目の前にいる様ですよ?」

 満足気に大神官はそんな事を言う。

「ええ、本当に!下々の者に見せるのが惜しゅうございますね。」

「そうですね…では、このまま部屋にいてもらいましょうか?」

「監禁、ですか?大神官様…それはちょっと…」

 御使様がお可哀想ですよ、と可愛い顔をしたカーぺ君が少しだけ困った顔をして苦笑する。

 監禁……?ゾワリ…と背筋に悪寒が走るけれども、そう、目の前にいるこいつは魔王だった…………












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...