[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

文字の大きさ
29 / 80
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

18、封印とは 4

しおりを挟む
 魔王の話をまとめてみた。

 俺は女神の代わりとして、ルシェーラ様に求婚した魔王の元に?で、それで俺は女神ルシェーラ様、と言う事になるのか?そう、なのか?
 自分には全くと言うほどに自覚も、記憶も…そういえば魔王は俺の記憶はないとか何とか言ってなかった?あの時色々あり過ぎて言われた事を十分理解できていない…
 
 人身御供………生贄………程の良い人質

 悲しい程にそんな言葉が頭を駆け巡る。

 帰りたい、な…正直、この現実は自分には荷が重すぎる…素朴で、優しくて、人々も温かい、既に懐かしいものとなった故郷の村に帰りたい…義父であるイリマウス侯爵に迷惑がかからないならば、今にも走って逃げて行きたいのが本音でもある…

「……ここに……いなければ、いけないのですか?」

 半ば絶望感に押しつぶされそうになりながらもポツリと呟く。

「はい!御使様は女神様と同位ですからね。大神官様のお隣に立つにふさわしい方は御使様の他にいませんとも!」

 カーペ君は元気いっぱいにそんな答えをくれた。

「さ、お着替えされた所ですけれど、湯浴みに行かれませんか?今日は、その、お疲れでしょう?そちらのご衣装は合わせて頂きたかったので着て頂きましたが、今日はゆっくりとお寛ぎください。」

 和かに微笑むカーペ君は既に訳知り顔なんですね……同じ男としてはいたたまれませんが…まだ身体がしんどいのは事実なので、カーペ君の意見に従いましょう。

「あれ?大神官様は?」

 カーペ君と話している内に既に大神官の姿は見えなくなっていた。

「お仕事に行かれましたよ?今日はゆっくりとしておられましたから、お仕事、詰まってきそうですね~」

 いかにも他人事のカーペ君はいそいそと俺の着替えを用意して浴室に俺を追い込んだ。
 

 見なきゃよかった…………

 豪華ではないけれども簡素で清潔な、平民としては落ち着く浴室に、カーペ君は貴族であって御使である俺のお世話に浴室も一緒に来るのだけれど、着替えの時とか、ス……と目線を逸らすんだよね?
 ん、何だ?と思って視線を落とせば、見事にパラパラと自分の身体に付いている赤い鬱血が目に飛び込んできて、急いで湯船に飛び込んだ。

「………~~~!!!」

 声にならない声ってあるもんなんだな……見た事もない、跡が沢山…明らかに昨日された時のものに間違えないと思う…

「ふふふ…愛されておいでですねぇ?御使様!」
 
 カーペ君はホンワリとした声でそんな事を言ってくるけれど、慰めにもなっていない…!
 愛されてるって、魔王だよ?魔王!!
人の良さそうな、外見が抜群に良いただの大神官じゃないんだよ!?と、喉元まで出掛かって、カーペ君に良からぬ災いが降りかかる事を考えたら、グッと言葉を飲み込むしかない。

 ダメだ…愛されるって何?俺の中にはそんな気持ちこれっぽっちもないんだけど?

 それよりも魔王イグショールはずっとって言ってなかっただろうか?ずっと?こんな生活が……?イリマウス侯爵は聖石を持つ俺の身分を引き上げる為に養子に迎えてくれて、俺は無事ここに大神殿に送り届けられた。そうしたら、もう義父とは共に住む必要も無くなって…俺だけがここに残って……?先程のカーペ君の言葉じゃないけれど、ほぼここから出られない監禁生活が待っているのか?

 え、封印されてるの俺じゃない?

 だって、封印されてるはずの魔王は大神官なんかに擬態して、国の中でも最高位の神殿を牛耳って裏では俺に好き勝手してくるんだろ?俺だけ、ここから出られなくて何も出来ないんじゃ!?

「そんな……理不尽な……」

「はい?どうかなさいましたか?御使様?」

「………………カーペ君…動きやすい服ってあるかな?」

 さっきみたいなキラキラしい衣装じゃなくて………

 ブスブスと不満で焦げついていく心で、俺はある事を実行すると自分に誓う…!

「はい、ございますよ?この後はお休みにならなくて良いんですか?」

 こちらの身体を労っての発言だとはわかるのだけれど、後ろめたさが押し寄せてきて居た堪れない…

「そう!少し休んだらさ、また散歩にでも行こうかと!だから動きやすいのが良いな。あと、あんまり華美なのは好きじゃないから目立たない様な質素なやつがいい!」

「ん~?分かりました!では用意しておきますからゆっくりとご入浴して下さいませ!」

 よし!!

 カーペ君の気が変わらない内に、自分の身体はできる限り見ない様にして手早く入浴を終える。身体を拭き終える頃にはカーペ君はこちらが望んだ様な服を持ってきてくれて助かった。

「こちらでは如何でしょう?」
 
 装飾が何も付いていない、シンプルな綿の衣服。裾が長い神官服と同じなのか、白と言うのも、神殿なんだからきっとこれしか置いてないのかもしれない……まっさらのおろしたて、で目立たないか、と聞かれたら、いかにも新参者です…と言う事を表す事になるかもしれないけれども仕方ないだろう。

「ありがとう。」

 早く衣類を着てしまいたかったので、これ以上我儘を言わずに着用した。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

歪の中のTrust

光海 流星
BL
人にはあまり言えない性癖を持つ健。 職場の友達に知られてしまいショックから記憶をなくす。 そして友達を好きになるが自分の性癖と葛藤する。 SM表現が含まれますので苦手な方は注意してください。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...