[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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天との断絶、魔王が決断いたしました

3、怒れる魔王 3

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 魔王イグショールは今までにない程怒り狂っていた。それは自分のものとして手に入れた最愛のルアンを、あろう事か何度となく執拗に殺されかけたからである。
 
 魔王は魔王である。この世界ができてから何人の命を奪って来たか数えきれないほどであろう。しかしそれはこの世の魔王としての存在意義であった。として生じた以上、この世界の均衡の一つとしてそのように組み込まれていた。
 その均衡を過去に一つ、自ら壊した。女神ルシェーラを求めたからである。女神は神の中の一人だ。地上に対しては過度に干渉はできない存在であり、ましてや魔なる者の手に堕ちてやる理由もなかった。けれども魔王は女神を乞うた。自分達が均衡の一つである事を理解していながら、求める事を放棄できなかった。

「良い選択肢だとでも思ったのだろうが……」

 女神ルシェーラは狡猾な神だ。自身の存在を上手く操り民衆の心を掴んでいく。人間相手であればそれでも良かったのだろうが…魔王は少しだけむしゃくしゃしていたのだ。この世の理と神の怠惰さに。だから一石投じてやるつもりで神に戦いを臨んだ。理由など後からいくらでも付けられる。流れが動けばそれで良いと思っていたのだが…しかし女神の容姿に囚われたのは計算外。少しばかり大人しくしてやろうと思う程には心を動かされたものだった。

 そして女神が戯れで放り投げて寄越した人形に

 女神は天界から人形を掴まされた魔王の情けない姿でも嘲笑うつもりでいたに違いない。

「お互い誤算よな…ルシェーラ……」
 
 明るい性格に、クルクルと動く表情。恐ろしい者にも動ぜずに食ってかかる胆力などどこにあるのかとさえ思わされる容姿をしていると言うのに…

 ルアンを見ていて全く飽きないのだ。戯れに手に入れば良いと思っていた位のルシェーラではなく、その心の動きの一片でさえも自分に向けられなければ腹立たしいと思う程に、魔王たる自分に心を寄せさせ、ルアンが見せる全てのものが自分の物であると実感したい。外見だけではなく、内面全てが自分の物だと…自分の魂がそう叫んでいるのだから否定などできようはずがない。

 それをルシェーラは壊そうとした……

 ルアンは神でも人でもない。我らの理の中で生きてはいない。だからと言って、心を持たせて打ち殺し悪戯に苦しめようなどと、女神こそが魔王の如き所業をするではないか。

「フフ…」  

 我を張る事は悪いことではない。が、ルシェーラは怠惰すぎたのだ。魔が溢れかえる前に、勇者となる者を導き鍛え、地上を守る。これ位の仕事も遂行できない様では、ルシェーラよ、を問われまいか?

 魔王イグショールは今己の腕の中で眠る愛しい者にもう一度視線を落とす。

「………焼きもちとは、可愛いではないか…?」

 腸が煮えくり返っていたのだ。もう一度、地上の全てを破壊尽くしてしまおうと思える程には…が、それをしたらルアン愛しい者はきっと心を閉ざし憎むだろう。強欲な魔王は、一つ残らず愛しい者が欲しいのだ。憎しみもいいが自分に向けられるルアンの執着の方が事の他気分が良かった。だから憎しみを買うよりも、ルアンの執着を買うために、天を引き摺り下ろすつもりでいる……

「……身をもって知るがいい……」

 怠惰で傲慢な美しい女神、必ずお前を引き摺り下ろす……!











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