[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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天との断絶、魔王が決断いたしました

15、聖戦再び 7

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 シュウウウ………天からの雷撃を自分の羽で軽く受け止めたイグショールはフッと不敵に笑う。かなりの衝撃であったろうに、漆黒の翼には傷一つついていない。

「女神の祝福?……周りを見て見るが良い…ここに、女神を慕って何人の人間が残っているのだ?」

 大神殿正門の前は大きく敷地が取られており、連日波の様に押し寄せる貴族の馬車や市民達で溢れかえっていたものだったが今や人っ子一人として誰も居ない。勿論、天からの御使を歓迎する者も、女神の尊い御技に感涙を流す者も誰一人として…

「何を言う!ただの人間に、高尚な女神様の御心は分からんだけだろう!」

「ふん…御心?」

「そうだ!だから我等がいるのだ!」

「ならば、がいるのもその女神の御心か?」

 イグショールの声が一層低くなる。我等…魔族がいる意味、その理由…ただ存在するだけで人々に忌み嫌われ、天からは侮蔑される…それも女神の心なのかと、イグショールは問う。魔族の存在が女神の意思ならば未来永劫何の干渉もしてほしくはないと静かな意思を込めて…

「何を言う!下等な魔族めが!貴様らの醜悪さは女神様の御心なはずがない!魔界に降り、一歩も外に出てこなければ良いものを!」

「ひどい………」

 思わずルアンは口を挟む。魔族は魔族なんだろう…かつては悪事をてんこ盛りにしてきたのかもしれない。けれど今は違うだろう?この地上に上がって来てから何一つ、俺が知っている事で何一つ悪事を働いていないじゃないか!

 訳もわからずムカムカと腹が立ってくる。

 いくらこの世界を造った女神といえども、自分の創造物の管理も碌にしないで好き勝手ばかり……!

「ふふふ…ルアンは優しいな…」

 怒って顔を赤くしているであろうルアンを見て、イグショールが心から嬉しそうに笑っている。地下へ帰って引っ込んどけと暴言を吐かれたのに…それさえ聞こえていないのか、御使の言葉を無視したままイグショールは優しい笑顔をルアンに向け、頬の感触を楽しむようにゆっくりと触れてくる。

「女神様の御器に、触れるなぁぁ!」

 頬に触れていたイグショールがそのままルアンの唇を悪戯に塞ぎに来たところで御使達が一斉にイグショールへと攻撃を始める。

「ひっ…!」

 ここに向かって…!?

 イグショールの腕の中にはルアンがいる。目の前に天の御使の攻撃が迫る中、ボロボロにされた魔王城が頭に浮かび、ルアンは恐怖にギュッと目を瞑った。

「……大丈夫だ………」

 暖かい腕に抱きしめ直されながら、ルアンの視界はまた真っ暗に染まる。

「…単調だな…」

 イグショールは余裕だ。それもそのはず、自分の羽でルアンを包み込んだイグショールの目の前には、牙を剥き出したカーペが臨戦体制で立ちはだかっているのだから。御使達が放った光は全てカーペの口の中に吸い込まれ飲み込まれて、黒い煙となって燻っていた。

「主人、全部食って良い?」

 光の攻撃を飲み込んだカーペは長い舌をペロリと出してまだまだ食い足りないと獰猛に御使達を睨め付ける。

「食え…お前の望むままに…一人も逃すな?なに…ここ暫く天にこもっていた間に天の者共はをすっかりと忘れてしまっているらしい。女神の権威も随分と地に落ちたな?」

「な……何を!!魔族の分際で!!」

 熱り立った御使達は一斉に攻撃に転じる。四方八方に分かれては一気に攻撃するつもりだ。

「遅ーい。」

 ペロリと舌舐めずりをしたカーペが一瞬消えた…

「なっ!」

「何処に!」

 攻撃に転じていた御使達は皆カーペを探す。

 グシュウウウ…………

 何かが潰される音とともに光が周囲に霧散した。

「遅い…これが天の御使の仕事か?」

 大きく開けたカーペの口の中には御使2人分と思しき衣類の欠片がぶら下がっている。
 
「貴様!!」
 
「食べた……食べたのか!!」

「そりゃ喰うだろう?僕、虎だし、魔族だし?でも天界の者は肉質が無いから物足りないな。」

 カーペ君…恐ろしい言葉が聞こえてくるよ?
 俺はイグショールの腕の中でフルフル震えてる…
 
「喰われて激怒?聖戦の折には、手足もぎ取られても頭を吹き飛ばされてもまだ戦っていたぞ?喰われるくらい普通だろ?何を今更?」

 魔王と同じく漆黒の色へと染まっていく瞳をカーペはスッと細めて、次なる獲物を定めようとしている。

「教育もなって無いのだろう。仕方がないさカーペ。何しろ、自分の足元も見えぬような神ではな?」
 
 カカッ……!!!

 周囲に落雷が落ち、雷鳴が響き渡る。イグショールはそれを難なくヒョイヒョイと躱し、時には翼で雨か何かの様に受け止めていく。自然界では起こらない様な落雷の数々だ。きっとこれは天が怒っているんだ…

「どこまで……どこまで!女神様を愚弄するつもりなのだ!!」

 御使達の声が天へと向かって響き渡った…




















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