実は私の方が悪女では?ならこのままでいいのですが、なぜか美貌の伯爵様が迫ってきます。

小葉石

文字の大きさ
2 / 20

2

しおりを挟む
「お前如きの意見では、この私を縛る事などできないのよ?」
 
 随分と傲慢な言い方にセフェーリア・フリンジ公爵令嬢の世間で言われる悪評はただの噂ではないと大聖女レシェルランが納得した瞬間、大聖女レシェルランの視界にヒラリと白く舞う物が入る。そして目の前の聖火の赤い炎がいきなり燃え上がり青く変わった。

「え……?」

 と、同時に大聖女レシェルランは自分から多量の魔力が流れ出た事を感じる。これはを意味するものだ。

「なぜ…?」

 大聖女レシェルランは最後の仕上げの願いの書をまだ聖火に投げ入れておらず手に持っている。そしてなぜと呟いたその瞬間に、自分の視界が一気に変わってしまったのだ。


 大聖女レシェルランは今高所から下、聖火を見下ろしていた。聖火の色は青く輝き轟々と燃え続けている。
 
 術の完成……

 聖女になってから何度も見てきたこの祭りのクライマックスにはいつも青々と輝く聖火が輝いている。と同時に周囲からは大勢の人々の歓喜の歓声が湧き上がった。聖女の技を目にした人々の熱狂的な声である。だが、これも同じだ。大聖女レシェルランが知っている祭りに関しては以前と異なるところはない。

 ただ、自分が置かれているが、違う………

 眼下に見えるのは青く輝く聖火と、その前に並び座る聖女達…その筆頭として大聖女レシェルランが座っているべきところには、真っ赤なドレスを身に纏い、呆然と聖火を見上げているセフェーリア・フリンジ公爵令嬢が座り込んでいた。

「まさか………」

 突然のことに大聖女レシェルランは思わず呟く…何がどうなって、自分とフリンジ公爵令嬢が入れ替わったのか?

「あ、あの……フリンジ公爵令嬢?」

 歓声の中、隣からはおずおずとした男性の声が聞こえてきた。

「フリンジ…公爵令嬢?」

 その方ならばどうやってか祭壇の目の前に座っている。

「は、はい!申し訳ありません。尊いお名前をお呼びしまして…!お許しくださいませ!」

 目の前で今にも土下座せんばかりの勢いで頭を下げている男性は、どうやら何処かの家の使いの者らしい。高位貴族家の席である所には似つかわしくない質の衣類だ。どうやらどこぞの家からの使いの者だろう。

…その者が大聖女レシェルランをフリンジ公爵令嬢と言う…

「…………お前、今日の私の姿はどう?」

 大聖女たる自分は平常時ならば他人にこんな言葉遣いはしない。が………

「は、はい!と、とても良くお似合いです!本日のお召し物であられます真紅のドレスはお嬢様の瞳に良くお似合いですし、見事な黒髪を際立たせてより一層魅力的におなりです。」

…やっぱり、この者には私がフリンジ公爵令嬢に見えている…

 叱責をされないと分かったからか、目の前の使用人はここぞと言わんばかりに、姿を褒め称えるのだった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。

ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。 大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。 だが彼には婚約する前から恋人が居て……?

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

最低の屑になる予定だったけど隣国王子と好き放題するわ

福留しゅん
恋愛
傲慢で横暴で尊大な絶世の美女だった公爵令嬢ギゼラは聖女に婚約者の皇太子を奪われて嫉妬に駆られ、悪意の罰として火刑という最後を遂げましたとさ、ざまぁ! めでたしめでたし。 ……なんて地獄の未来から舞い戻ったギゼラことあたしは、隣国に逃げることにした。役目とか知るかバーカ。好き放題させてもらうわ。なんなら意気投合した隣国王子と一緒にな! ※小説家になろう様にも投稿してます。

[完]ごめんなさい、騎士様。あなたの意見には従えません。

小葉石
恋愛
最も小さい国と言われている小国トルンフィス王国に聖女があらわれた。 神の使いとも称される尊い聖女。 彼女達の魔を祓い邪を清める浄化の力は一介の魔道士、魔術師など足元にも及ばない。 そんな聖女を守る組織ガルンドーラ聖騎士団から小国トルンフィス王国に聖騎士アールシスが遣わされた。 女神の啓示により召し出された新たな聖女を守る為に。 その聖女の中身は15歳になったばかりの極普通の少女だった… ※あまりシリアスな感じでは書かないつもりです。面白く読んでいただけたらと。 ※完結まで描き終わりました

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

処理中です...