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「お前如きの意見では、この私を縛る事などできないのよ?」
随分と傲慢な言い方にセフェーリア・フリンジ公爵令嬢の世間で言われる悪評はただの噂ではないと大聖女レシェルランが納得した瞬間、大聖女レシェルランの視界にヒラリと白く舞う物が入る。そして目の前の聖火の赤い炎がいきなり燃え上がり青く変わった。
「え……?」
と、同時に大聖女レシェルランは自分から多量の魔力が流れ出た事を感じる。これは術の完成を意味するものだ。
「なぜ…?」
大聖女レシェルランは最後の仕上げの願いの書をまだ聖火に投げ入れておらず手に持っている。そしてなぜと呟いたその瞬間に、自分の視界が一気に変わってしまったのだ。
大聖女レシェルランは今高所から下、聖火を見下ろしていた。聖火の色は青く輝き轟々と燃え続けている。
術の完成……
聖女になってから何度も見てきたこの祭りのクライマックスにはいつも青々と輝く聖火が輝いている。と同時に周囲からは大勢の人々の歓喜の歓声が湧き上がった。聖女の技を目にした人々の熱狂的な声である。だが、これも同じだ。大聖女レシェルランが知っている祭りに関しては以前と異なるところはない。
ただ、自分が置かれている所が、違う………
眼下に見えるのは青く輝く聖火と、その前に並び座る聖女達…その筆頭として大聖女レシェルランが座っているべきところには、真っ赤なドレスを身に纏い、呆然と聖火を見上げているセフェーリア・フリンジ公爵令嬢が座り込んでいた。
「まさか………」
突然のことに大聖女レシェルランは思わず呟く…何がどうなって、自分とフリンジ公爵令嬢が入れ替わったのか?
「あ、あの……フリンジ公爵令嬢?」
歓声の中、隣からはおずおずとした男性の声が聞こえてきた。
「フリンジ…公爵令嬢?」
その方ならばどうやってか祭壇の目の前に座っている。
「は、はい!申し訳ありません。尊いお名前をお呼びしまして…!お許しくださいませ!」
目の前で今にも土下座せんばかりの勢いで頭を下げている男性は、どうやら何処かの家の使いの者らしい。高位貴族家の席である所には似つかわしくない質の衣類だ。どうやらどこぞの家からの使いの者だろう。
…その者が私をフリンジ公爵令嬢と言う…
「…………お前、今日の私の姿はどう?」
大聖女たる自分は平常時ならば他人にこんな言葉遣いはしない。が………
「は、はい!と、とても良くお似合いです!本日のお召し物であられます真紅のドレスはお嬢様の瞳に良くお似合いですし、見事な黒髪を際立たせてより一層魅力的におなりです。」
…やっぱり、この者には私がフリンジ公爵令嬢に見えている…
叱責をされないと分かったからか、目の前の使用人はここぞと言わんばかりに、本日のフリンジ公爵令嬢の姿を褒め称えるのだった。
随分と傲慢な言い方にセフェーリア・フリンジ公爵令嬢の世間で言われる悪評はただの噂ではないと大聖女レシェルランが納得した瞬間、大聖女レシェルランの視界にヒラリと白く舞う物が入る。そして目の前の聖火の赤い炎がいきなり燃え上がり青く変わった。
「え……?」
と、同時に大聖女レシェルランは自分から多量の魔力が流れ出た事を感じる。これは術の完成を意味するものだ。
「なぜ…?」
大聖女レシェルランは最後の仕上げの願いの書をまだ聖火に投げ入れておらず手に持っている。そしてなぜと呟いたその瞬間に、自分の視界が一気に変わってしまったのだ。
大聖女レシェルランは今高所から下、聖火を見下ろしていた。聖火の色は青く輝き轟々と燃え続けている。
術の完成……
聖女になってから何度も見てきたこの祭りのクライマックスにはいつも青々と輝く聖火が輝いている。と同時に周囲からは大勢の人々の歓喜の歓声が湧き上がった。聖女の技を目にした人々の熱狂的な声である。だが、これも同じだ。大聖女レシェルランが知っている祭りに関しては以前と異なるところはない。
ただ、自分が置かれている所が、違う………
眼下に見えるのは青く輝く聖火と、その前に並び座る聖女達…その筆頭として大聖女レシェルランが座っているべきところには、真っ赤なドレスを身に纏い、呆然と聖火を見上げているセフェーリア・フリンジ公爵令嬢が座り込んでいた。
「まさか………」
突然のことに大聖女レシェルランは思わず呟く…何がどうなって、自分とフリンジ公爵令嬢が入れ替わったのか?
「あ、あの……フリンジ公爵令嬢?」
歓声の中、隣からはおずおずとした男性の声が聞こえてきた。
「フリンジ…公爵令嬢?」
その方ならばどうやってか祭壇の目の前に座っている。
「は、はい!申し訳ありません。尊いお名前をお呼びしまして…!お許しくださいませ!」
目の前で今にも土下座せんばかりの勢いで頭を下げている男性は、どうやら何処かの家の使いの者らしい。高位貴族家の席である所には似つかわしくない質の衣類だ。どうやらどこぞの家からの使いの者だろう。
…その者が私をフリンジ公爵令嬢と言う…
「…………お前、今日の私の姿はどう?」
大聖女たる自分は平常時ならば他人にこんな言葉遣いはしない。が………
「は、はい!と、とても良くお似合いです!本日のお召し物であられます真紅のドレスはお嬢様の瞳に良くお似合いですし、見事な黒髪を際立たせてより一層魅力的におなりです。」
…やっぱり、この者には私がフリンジ公爵令嬢に見えている…
叱責をされないと分かったからか、目の前の使用人はここぞと言わんばかりに、本日のフリンジ公爵令嬢の姿を褒め称えるのだった。
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