[完結]ひきこもり執事のオンオフスイッチ!あ、今それ押さないでくださいね!

小葉石

文字の大きさ
2 / 76

2 呼び鈴ならぬスイッチ

しおりを挟む

 執事と言えば朝は早い。
 主人の起きる前から全て準備万端で控えておくのは基本中の基本。


 うん、これは以外と面倒くさいのと、主人を良く知らなければ先回りし難い。昨日就職したシェインには無理な話。

 
 フフ、しかし秘策があるのだ。


「おはよう御座います。ご主人様、お目覚めのお茶をご用意しておりますが、如何でしょうか?」

 その日の気分に合わせられる様に数種類は用意しておく。


「……懐かしいね…シェイン、おはよう…」

「お茶が懐かしいのでございますか?メアリーさんは忙しくてお茶のご用意も出来なかったと?」



「いや、メアリーはよくやっているよ。」

「そうでございましょうね。とても丁寧に仕事内容を教えていただきました。」



「ほう?例えば?」


 短めの金髪に、淡いピンクの優しい瞳。世の女性達が放っておきはしないだろう美貌の持ち主がガラット王子だ。


「そうですね。ご主人様の朝はノンシュガーのお茶に具沢山のスープ、昼食後は必ず午睡をなさって午後の政務、晩餐後は入浴を終えて趣味のお部屋に…此方がご主人様の毎日の行動パターンだと。」


「社交界はお嫌いで殆どの出席は無いため、ほぼこのお屋敷でお過ごしです。時間があれば温室で読書をされるので、軽食とコールドドリンクをご用意します。趣味の部屋には使用人は入れません。そしてこれから朝のお仕事ですね。必ずタイをお召しになられますので。」


 ガラット王子がゆっくりと朝のお茶を飲んでいる時に、タイを数本トレーに並べ運んでくる。


「一晩で覚えたのか?」

「はい。記憶力は良いのです。屋敷の間取りも頭に入れました。」



「かなり、有能な執事のようだね。なのになぜ?曰く付きの私の所になど来たの?」


「…私には、目指すものがあるのです!が、どうも今までのご主人様とは私のやりたい事が合わなくてですね…」



「何か、酷いことをされたのかい?」

 心配そうに覗き込んでくる視線にびっくりして、ピッと背を伸ばす。



「いえ、私の希望と反りが合わなかったと言うだけの話です。此方のお屋敷では、使用人部屋を好きにしていいということで、満足して働けそうです。」


 安心させるように、にっこりと微笑み返す。年齢よりは幾らか童顔に見えてしまうシェインの瞳は深い緑。整えた髪は夜の色。


「希望とは何?」

「私の休みを絶対に守って欲しいのです。」


「それは、了承しよう。けど、急に君を呼びたくなった時はどうしたらいいのかな?」


「いえ、それでなのですが、此方をお持ちください!」


 コロン、とエメラルドの様な石がガラット王子の掌に乗せられた。まるでシェインの瞳と瓜二つ、同じ色をしている石だ。


「……これは?」
 

 愛おしそうに見つめているガラットの顔を見るのはなんとなく照れ臭い…


 いかん!これは仕事だ!


「私の分身の様なものです。御用の時は此方に触れて下さいませ。私に分かるようになっておりますから。」

 
「触れるだけでいいの?魔法みたいなんだね?」


「勿論、プチッと押しても構いませんよ。壊れる物では無いでしょうし、そちらの方がより確実に私まで届きますから。勤務中は此方を押して呼んでくださっても構いません。」


「便利な使い方をしているものだね……」


「そうですね。そちらは便利です。あの、ご主人様?何故に手を握ってこられるのです?」


 話しながら、側にいたシェインの手を、ガラット王子が手に取って繁々と見つめていた。


「君の手は、こんなにも滑らかで柔らかなのに、仕事を押し付けてしまうなんて忍びないな…」


「は?それで生きていますので、人間は仕事が無いと死んでしまうんですって!働かざるもの食うべからずと言いますからね。仕事ができることは喜ばしいことでしょう。」


 ニコニコと胸を張って自論を展開するシェインの手をガラット王子はギュウッと握りしめる。


「そう。君が楽しそうでよかったよ。これからもよろしくね?」


 笑顔絶えぬガラット王子に笑顔で返して、今日の仕事が始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...