[完結]そうきましたか。分かりました、最後まで愛し抜きます!

小葉石

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「どこに行くんだって?」


 あら、もう本当に驚いてくれないのね?お姉さん少し寂しいな。


「ここよりも、遠いところ。」

「で、頼みたいことって?」

「フフフ、これよ、これ!」

 
 はい、とスカートのポケットの中に入っていた小さな袋を取り出してカインに渡す。


「ん?何これ?」

「開けてみて。多分分からないと思うけど。」

 ニッコリとおすまし笑顔でカインの反応を見てみましょう。あら、やっぱりなんだこりゃ?という顔で袋の中を覗き込んでるわね。


「何かの……種?」

「正解!カイン凄いじゃない!」

「いや、見たら分かるけどさ…何の種?」


「花の種……」

 ローニスが好きだと言った、コスモスの種。

「で、これ、僕が撒くの?」

「そう!お願いできる?」

「姉さん撒けないの?」

 ここにいるのに?コテン、と小首を傾げる様はまだまだ大人になりきっていないなぁ、と感慨深げにもなるわね。
 

「少し、ここから離れている所に行くのよ。種を巻く時期にここに居られないから。」

「さっき言ってたやつか。旅行?」

「ううん。遠くに家を買おうと思って…」

 
 はぁぁぁぁぁぁ~~~?


「家、此処にあるじゃない?こんな立派な家が!ローニス義兄さんとの思い出の家でしょ?」

「違うのよ。以前から住みたいなっていう所があってね。」

「以前って結婚する前から?」

「ううん。結婚してから。」

「家、もうあるのに?」

「そう。」

「これ、向こうの家族は知ってる?」

「さあ?」

 入れ立ての紅茶の香りのいい事。鼻腔から胸いっぱいに吸い込むと爽やかさに癒されるのよね。
 
 十分に堪能していたら、カインってば青い顔して、また来るよ!と急いで帰り支度を始めてる。

「カイン、撒く場所はローニスのお墓の周辺にねーー」

 あの子、ちゃんと聞こえたかしら?返事もしないで足早に帰っちゃったけど…


「ま、後で手紙でも書いとけばいいか…」

 まだまだやらなくてはいけない事が残っているもの。

「明日も来客の嵐だわ~、えーと、商会関係と、質屋と、あぁ忙しくなりそうね。」

 
 手帳には少し先まで予定がビッシリだ。


 うん、先日先生の所からもらって来た薬はまだあるし、もう少し、もう少しだから……

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