上 下
9 / 19

9

しおりを挟む
「あら、カインいらっしゃい。」

「お邪魔してます。奥さん、旦那さんかい?」

「まさか!弟ですわ。」

 昨日も今日も足繁くやってくるわね、カイン?

 ニールさんが並べた釣竿を繁々と眺めつつ、

「姉さん、釣り出来ないだろ?」


 んも~~~、興醒めもいいところ!余計なこと言ってくれたわね?


「カイン、出来ないかも知れないけど、教えて貰えば出来るようになるものよ?」

「そうさ、形から入る人も居るんだし、ゆっくりと教えて貰えばいいさ、なぁ奥さん。うちのは丈夫だから長持ちするしね!」

「助かりますわニールさん。一緒に楽しむならお道具も凝りたくなっちゃいますものね?」

「ははは!そうさな!また気になるものがあったら声かけてくれよ、奥さん!」

 お題を払ってご挨拶して、にこやかにニールさんは帰って行く。


「姉さん、誰に教えて貰うのさ?こんなに買っちゃって…」

 こんなにって言うけど、3本だけよ?

「勿論、釣り好きの人から教えてもらうのよ?その為に買ったんだもの。」

「ふ~~~ん……」

「…?なあに?何かあったの?今日はやけに大人しいじゃない?」


「姉さん、今日の予定は?」

 ま、カインったら私の質問は無視なのね?もう…


「来た荷物をしまって…お義父様とお義母様の所に顔を出しに行くわよ?」

 後は、質屋さんが来る予定なんだけど、またカインが煩そうね…言わないでおこう。


「家には帰ってこないの?父さんも、母さんも心配してたよ?」

「あら、昨日大丈夫って伝えてくれたんじゃないの?」

 貴方、その為に来たんでしょう?

「うん。僕の口からは言ったけどさ。実際に元気な姿を見た方が安心するんじゃないかな?」

「う~~ん。そうね。言われてみれば…でも今日は如何してもあちらのお家にご挨拶に行きたいのよ。葬儀以後…中々顔を出していないから…」

 カチャカチャと釣竿を束ねては、玄関の隅へ立てかける。

「二階へは上げないの?持って行こうか?」

「ううん。これは持って行くものだから。ここでいいわ。」




******


 
 どうして、何処に持って行くか聞けなかったんだろ?あの釣竿、明らかに男女ペア物だよね?

 誰に教えてもらうつもりだよ?家の家族にも、ローニス義兄さんの所にも釣りの得意な人いなかったと思うんだけど?


姉さん……なんか、僕に隠してないよね?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,036pt お気に入り:1,426

運命の番(同性)と婚約者がバチバチにやりあっています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,621pt お気に入り:30

平凡な私が選ばれるはずがない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,137pt お気に入り:12

秘密の男の娘〜僕らは可愛いアイドルちゃん〜 (匂わせBL)(完結)

Oj
BL / 完結 24h.ポイント:560pt お気に入り:8

会社を辞めて騎士団長を拾う

BL / 完結 24h.ポイント:3,933pt お気に入り:40

処理中です...