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Side Story 6: レーダーⅠ
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「菊川、アイツ大丈夫なのかな・・・全然自分のアパートに戻る気配ないし」
「・・・やっぱり、野崎くんとなんかあったんだよね」
等々力と沙紀ちゃんが溜息を吐く。
「美也ちゃん、自分のこと話さないから、何がどうなってんのか・・・」
俺も溜息を吐くと、等々力が言った。
「飯塚の部屋は親の手前借り続けないとマズいから、菊川が使ってくれてて全然問題はないんだけどさ・・・でも、このままあの辛そうな菊川を放置するわけにはいかないだろ」
「でも美也ちゃん、明らかに「そこは突っ込まないで」的なオーラ発してるし・・・私、どうしたらいいと思う?」
はぁ。
俺にもどうしたらいいのかわからないから、結局溜息しか出てこない。
さっき、例の如く海外一人旅をしている美也ちゃんから沙紀ちゃんにメールが届き、
4月以降も引き続き沙紀ちゃんの部屋を使わせてもらえないか、と言ってきたみたいで。
4月の新学期を前に名古屋から戻ってきた沙紀ちゃんと等々力と俺は、
いつもの居酒屋「蓮」でこうして頭を抱えている。
「渡辺、オマエ本当に何にも聞いてないのか?」
「俺だけ聞いてる訳ないだろ」
「でも・・・」
「でも?」
「渡辺、美也ちゃんのこと、好きだよね?」
は?
好きだったらなんなんだ?
「もちろん好きだよ―――仲間として、な?」
「ウソ!」
「なんだよ、その言いぐさ。勝手に決めつけんなよ。とにかく俺は、何も聞いてないよ」
ま、俺が、美也ちゃんのことを本当のところどう思っているかなんて、
誰にも、本人にも話すつもりはない。
特に今は。
なぜなら。
俺が、知ってしまってるからだ。
美也ちゃんの、あの野崎という男への、強い想いを。
そしてこの美也ちゃんの居た堪れない状況が、
それがまぎれもない真実であることを、俺に、
残酷なまでに突きつける。
美也ちゃんに促され、等々力が覚悟を決めたあの夜。
俺はある意味、意を決して、ずっと気になっていたことを美也ちゃんに聞いた。
「俺からの電話をいきなり切ったヤツとはどうなった?」と。
そう、
それまでの俺たちにとって、恋愛と将来のことはタブーなトピック。
でもその時は・・・
等々力達のこともあって、その夜だけは特別で、
俺も今なら聞けるんじゃないか、そう思ったのだ。
でも、
その問いに、美也ちゃんはストレートには答えなかった―――いつもの如く。
ただ、こう言った。
「世の中には・・・何が起こっても、時間がどれだけ経っても、変わらないものってあるんだね」と。
その、暗闇の中で垣間見える、美和ちゃんの優しい、幸せそうな表情で俺は、
美也ちゃんがソイツのことを本当に好きなんだと、悟った。
そして2か月ほど前の、試験最終日。
野崎くんが突然大学に現れたとき。
二人が高校の同級生だと知って、
あの時の美也ちゃんの言葉の、本当の意味を知った。
「世の中には・・・何が起こっても、時間がどれだけ経っても、変わらないものってあるんだね」
美也ちゃんは―――高校生の時から、野崎くんのことが好きだったんだ。
彼は、彼女がずっと想い続けてきた人だったんだ、と。
でも正直、あの時は。
なぜ二人が揉めているのかがよくわからなかった。
あれだけ素直に、人前はばからず想いをぶつけてくる野崎くんに、
美也ちゃんがなぜそこまで頑ななのか。
でも。
彼女が俺たちの前で、野崎くんに対してどんな態度を取っていようが、明らかに―――
それは美也ちゃんの本意に、反するもので。
―――何か、野崎くんも知らない、別の理由があるはずで。
だから、それと同時に、俺は感じていた。
美也ちゃんの、野崎くんへの想いは、
そんな簡単なものでも、簡単に変えられるようなものでもないのだ、と。
そして、4月になり。
美也ちゃんも日本に戻ってきて、
彼女も俺たちも、見かけ上は何もなかったように取り繕う日々の中。
ある二人の人物が―――突如、俺の前に現れた。
「・・・やっぱり、野崎くんとなんかあったんだよね」
等々力と沙紀ちゃんが溜息を吐く。
「美也ちゃん、自分のこと話さないから、何がどうなってんのか・・・」
俺も溜息を吐くと、等々力が言った。
「飯塚の部屋は親の手前借り続けないとマズいから、菊川が使ってくれてて全然問題はないんだけどさ・・・でも、このままあの辛そうな菊川を放置するわけにはいかないだろ」
「でも美也ちゃん、明らかに「そこは突っ込まないで」的なオーラ発してるし・・・私、どうしたらいいと思う?」
はぁ。
俺にもどうしたらいいのかわからないから、結局溜息しか出てこない。
さっき、例の如く海外一人旅をしている美也ちゃんから沙紀ちゃんにメールが届き、
4月以降も引き続き沙紀ちゃんの部屋を使わせてもらえないか、と言ってきたみたいで。
4月の新学期を前に名古屋から戻ってきた沙紀ちゃんと等々力と俺は、
いつもの居酒屋「蓮」でこうして頭を抱えている。
「渡辺、オマエ本当に何にも聞いてないのか?」
「俺だけ聞いてる訳ないだろ」
「でも・・・」
「でも?」
「渡辺、美也ちゃんのこと、好きだよね?」
は?
好きだったらなんなんだ?
「もちろん好きだよ―――仲間として、な?」
「ウソ!」
「なんだよ、その言いぐさ。勝手に決めつけんなよ。とにかく俺は、何も聞いてないよ」
ま、俺が、美也ちゃんのことを本当のところどう思っているかなんて、
誰にも、本人にも話すつもりはない。
特に今は。
なぜなら。
俺が、知ってしまってるからだ。
美也ちゃんの、あの野崎という男への、強い想いを。
そしてこの美也ちゃんの居た堪れない状況が、
それがまぎれもない真実であることを、俺に、
残酷なまでに突きつける。
美也ちゃんに促され、等々力が覚悟を決めたあの夜。
俺はある意味、意を決して、ずっと気になっていたことを美也ちゃんに聞いた。
「俺からの電話をいきなり切ったヤツとはどうなった?」と。
そう、
それまでの俺たちにとって、恋愛と将来のことはタブーなトピック。
でもその時は・・・
等々力達のこともあって、その夜だけは特別で、
俺も今なら聞けるんじゃないか、そう思ったのだ。
でも、
その問いに、美也ちゃんはストレートには答えなかった―――いつもの如く。
ただ、こう言った。
「世の中には・・・何が起こっても、時間がどれだけ経っても、変わらないものってあるんだね」と。
その、暗闇の中で垣間見える、美和ちゃんの優しい、幸せそうな表情で俺は、
美也ちゃんがソイツのことを本当に好きなんだと、悟った。
そして2か月ほど前の、試験最終日。
野崎くんが突然大学に現れたとき。
二人が高校の同級生だと知って、
あの時の美也ちゃんの言葉の、本当の意味を知った。
「世の中には・・・何が起こっても、時間がどれだけ経っても、変わらないものってあるんだね」
美也ちゃんは―――高校生の時から、野崎くんのことが好きだったんだ。
彼は、彼女がずっと想い続けてきた人だったんだ、と。
でも正直、あの時は。
なぜ二人が揉めているのかがよくわからなかった。
あれだけ素直に、人前はばからず想いをぶつけてくる野崎くんに、
美也ちゃんがなぜそこまで頑ななのか。
でも。
彼女が俺たちの前で、野崎くんに対してどんな態度を取っていようが、明らかに―――
それは美也ちゃんの本意に、反するもので。
―――何か、野崎くんも知らない、別の理由があるはずで。
だから、それと同時に、俺は感じていた。
美也ちゃんの、野崎くんへの想いは、
そんな簡単なものでも、簡単に変えられるようなものでもないのだ、と。
そして、4月になり。
美也ちゃんも日本に戻ってきて、
彼女も俺たちも、見かけ上は何もなかったように取り繕う日々の中。
ある二人の人物が―――突如、俺の前に現れた。
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