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たいけみお

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第6章:「4人目、5人目、そして新たなる事実」

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中学2年の夏休みは、すごく穏やか。

きっと今までの人生の中で、最も幸せな日々。


精神的に不安定な両親は、本当に予測不可能。

幼い俺には、なんでお袋が朝から泣いてんのか、なんで親父が何も話さないのか全然わからなかったけど、

とにかく、自分がなんか悪いことをしてるみたいでいつも不安だった。


叔父さんのところに引き取られたのは俺が5年生の時。

親父もお袋も入退院を繰り返すようになったから。


今から思うと。

叔父さん夫婦がすごくいい人なのにもかかわらず居心地が悪かったのは、

俺の不安定なココロのせいもあったと思う。

見えない何かに脅えることが、クセになってたんだ。


それが分かったのは、ここで暮らし始めたから。

美和が、こういう穏やかで楽しい毎日を送ってもいいんだって、

俺も、普通に幸せな生活を送っていいんだって、教えてくれた。


だから、すごく美和には感謝してる。

俺を拾ってくれたことも、

そのままここに置いてくれたことも、

一緒に叔父さん夫婦と両親に会いに行ってくれたことも、

明良さんと祥吾さんと、仲良くしてくれてることも。


「杏はツイテるよなぁ」

明良さんが縁側で呟いた。

「ホントだよなぁ」

祥吾さんも頷いた。


「俺たちも杏くらいの時に美和さんに出会ってたら、全然違う人生を歩んでたかもなぁ」

明良さんも祥吾さんも顔を見合わせて笑っていた。

「俺ら、今も充分幸せだけどな?」


「明良さんと祥吾さんは・・・今までなんか、諦めたこととかあるんですか?」

「そうだなぁ・・・たぶんあと10年して後悔するのは、勉強しなかったことかな」

「俺もそうだと思うなぁ」

「自分たちの子供を前に、勉強しろとか絶対言えねぇだろ?」

「だよなぁ?でも、言わなきゃいけなくなるんだろうな。くくっ」


明良さんと祥吾さんはお互いのことならなんでも知ってて、すごく信頼し合ってる。

こういう関係、すげぇ羨ましい。


「じゃ、今から勉強すればいいのに」

背後から、ぬっ、と美和が現れた。

「「え??」」


「まだ高2でしょ?ウチで勉強していけば?杏が教えてくれるよ?」

「「は?!」」


たしかに俺は、高校の教科書も読んでいる。

ヒマつぶしに。


「大学は試験に通ればいいんだから。暴走族の総長とか副総長とか、関係ないでしょ?」

美和は笑ってそう言い残し、その場を去った。


「杏、マジで俺らに勉強教えられんの?!」

祥吾さんが慌てた顔をしてる。

「・・・たぶん。でもそれは俺の頭がいいとかじゃなくて、美和が勉強の仕方を教えてくれたからなんですけど」


「それって、狂嵐と両立できんの?」

「できるんじゃないですか?」

「マジで?」


明良さんと祥吾さんは顔を見合わせた。

「「やってみる?」」


それから2週間、明良さんと祥吾さんはここに住むことにした。

勉強をするために。


知らなかったんだけど、2人は実はそこそこレベルの高い高校に行ってるらしい。

でも、高校入学してから今まで、全く授業を聞いてないから、今となっては何が何だかわかんないと言っていた。

つい最近までの俺と、全く一緒。


俺たち3人は、早朝と夕方、コンちゃんの手伝いをして、

昼間の暑い時間にクーラーを利かせて教科書を読み、

たまに掃除をして、

夜は毎日、花火とかバーベキューをして遊んだ。


「杏も喜ぶだろうし、平井くんも松本くんもずっとここに住んだら?今も実家暮らしじゃないんでしょう?」

「ここは楽しいですけど、ちょっとムリなんですよ」

祥吾さんが苦笑いをした。


「なんで?」

美和が首をかしげると、コンちゃんが笑って説明した。

「どうせこの子たちは、外でエロいことしてんのよ」


「美和さんの前ではっきり言わないでくださいよ」

「だって本当のことでしょう?ここに女の子連れ込めないから住めないんでしょう?」

祥吾さんが頭を抱えたのを見て、明良さんが爆笑しながら言った。


「ここは俺らの聖域だから、汚せないんですよ」

「つまんないの~!」

美和はいつかみたいにほっぺたを膨らませた。

俺はまたあのヘボい顔が見たくて、両手で美和のほっぺたをぎゅっと挟んだ。


「美和の顔、ヘボすぎる」

おもしろすぎて、お腹が痛い。

みんなも大爆笑した。

明良さんと祥吾さんの勉強の成果があったかなかったのかはまだわからないけど、すげぇ楽しい2週間だった。




そして、夏休みも終わりに近づき。

コンちゃんの時と同じように、しばらく部屋を貸してほしいという人が2人現れた。


1人はまた依子さん経由。

哲ちゃんという売れないマンガ家。


あと1年で30歳になる哲ちゃんは、最後になるかもしれない作品をここで集中して書きたいらしい。

その一本が売れなかったら、諦めて九州の田舎に戻り、家業のミカン畑を継ぐ覚悟だと言っていた。


なんで依子さんがこういう変わった人たちの知り合いなのかはわからないけど、いい人そうだからと言って、美和はOKした。

ちなみに哲ちゃんは、マンガで食べていけなかったので、某一流ホテル内にある高級フレンチレストランの厨房でバイトをしていたらしい。

だから料理を担当したいと自ら申し出た。

「僕、まずいものは絶対食べません!だからみなさんにも絶対にまずいものは出しません!」


その宣言通り、この家の広いキッチンは哲ちゃんのものになった。

朝、昼、晩、哲ちゃんは俺たちにおいしい料理をこれでもかというほど振る舞ってくれる。


「料理をしてるとね、アイデアがフッって、どこからか沸いてくるんですよ!なんでですかね・・・無心でやってるからですかねぇ?」

いくら哲ちゃんの料理が美味しいとはいえ、俺は美和の作る料理が大好きだからちょっと寂しい気もしたけど・・・

美和が嬉しそうだったから、まぁいいか、と納得することにした。

美和の料理が食べたくなったら、頼めばいいだけだし。



とにかく。



美和(18歳)、コンちゃん(25歳)、哲ちゃん(29歳)、そして俺(14歳)の4人は、年齢はバラバラだったけど、すぐに仲良くなった。



そして哲っちゃんがここに来てから数日後。

ここにもう一人住人が増えた。

加納里香さん、20歳。

明良さんと祥吾さんが連れてきた。


「美和さんすみません。ムリを承知でお願いしてます。コイツをしばらく預かってもらえませんか?」

2人は美和に頭を下げた。

でも里香さんは俯いてその場に立ったまま。

どうしたんだろう、右の頬が腫れてる。


実は・・・


里香さんのことを、俺は前に何度か見かけたことがある。

狂嵐の溜まり場に、たまに出入りしていたから。


明良さんと祥吾さんと仲が良かったから、どちらかの彼女なんだろうとメンバーには噂をされてたけど、里香さんのことを守れとか、手を出すなとか、そういう通達がメンバーに渡ったことは一度もないらしい。

俺にも別に、説明なかったし。

だから3人の関係は俺にはよくわからない。



「ほら里香、オマエもお願いしろよ」

明良さんは里香さんの頭を上から押した。


「こんなこと頼んでないもん!」

「オマエいい加減にしろよ。またあんな思いをしたいのか?!」

「あんな思いって?」

美和がそういうと、コンちゃんも哲ちゃんも頷いている。


「コイツ、彼氏に暴力振るわれてるんですよ。どうしようもない男で・・・」

「竜二のこと、悪く言わないで!」

「あんな男の、どこがいいんだよ!」

「明良なんか大っきらいっ!!」

里香さんはその場で泣き始めた。



「里香ちゃん、アイツはまずいって。正気じゃない」

祥吾さんが里香さんの左肩に手を置く。


「竜二って、もしかして石黒竜二、じゃないわよね?」

コンちゃんが徐に3人の会話を遮った。


「・・・その竜二ですよ」

明良さんが、今まで見たこともないような、哀しそうな、情けなさそうな顔をした。


「それは・・・さすがにマズいわよ」

「知ってる人なの、コンちゃん?」

美和が聞き返すと、コンちゃんも哀しそうな顔をした。



「知ってるもなにも・・・竜二は近藤組と敵対してる石黒組の若頭。狂嵐と抗争を続ける暴走族「ROSE」の初代総長・・・つまり、アタシと昌の永遠の敵」

「「「えぇ?」」」


俺たちは玄関先からリビングに移動した。

哲ちゃんが全員にアイスコーヒーを出してくれている。


「それで、里香さんと2人はどういう関係なの?」

それ、俺も聞きたい。


「里香と俺は異父姉弟で、祥吾と俺らは幼なじみです」

明良さんは、ふぅ、とため息をついた。


「とにかく石黒のヤツ、里香を必死に探してるんですよ。迷惑掛けたくないと思ってたんですけど、ここより安全な場所が他になくて・・・すみません」

明良さんが美和に頭を下げた。


「その石黒ってヤツのこと、本当に好きなんですか?暴力を振るわれても?」

哲ちゃんはそう言って里香さんを見つめたけど、里香さんはすぐにその視線を逸らして、何も答えなかった。


その様子を見ていた美和は静かにこう切り出した。

「今から言う二つの条件を絶対に守るって約束ができるんだったら、ここにいていいよ」

「なんですか?」

声に出したのは明良さんだったけど、里香さんも顔を上げた。


「1つは、私が良いって言うまでこの家から出ないこと。もう1つはカウンセリングを受けること。カウンセラーは私が連れてくるから」

そう言えばこの間、麻生図書館で読んだ本に、DVを受けた人は恐怖で感覚が麻痺して、普通の判断ができなくなることがあるって書いてあった。

暴力を振るわれてるのに、振う人を庇ったり、その人の元へ戻ったり。


「それともう1つ!」

コンちゃんがそう言い放って、明良さんと祥吾さんを交互に見た。

「なんでしょう?」

「ここで里香さんを預かるんだったら、念のため、昌にこのことを言うわ」

「・・・それは、近藤組と石黒組の抗争に発展する可能性があるってことですか?」

俺はコンちゃんに聞いた。


「なきにしもあらず、ね。でもそれだけじゃなくて、ROSEと狂嵐の抗争が悪化する可能性もあるわ。偶然とはいえアタシがここにいるわけで、ROSEからしたら初代総長のオンナが狂嵐と近藤組に囲われてるわけだし―――ところで竜二は、里香さんが明良くんのお姉さんで、狂嵐に出入りしてること、知ってるんでしょう?」

「・・・はい」

里香さんは小さく頷いた。


「ってことは、いずれ昌が絡んでくることもわかってるわ。竜二、バカじゃないから」

「・・・」


「そこまでわかってて、なんで竜二さんは里香さんと?」

「それはアタシにはまだわからないわ。里香さん、竜二はなんか大きな獲物を狙ってた?」


「わかりません・・・そういう話は、私には全く・・・」

「そう・・・で、里香さんどうする?ここに残る?」


里香さんは少し間をおいて言った。

「・・・お願いします」




実はその後、更に驚くことが起きた。

コンちゃんが昌太郎さんに電話をして、事情を説明した一時間後。

夜10時だと言うのにインターホンが鳴った。


里香さんを含めた俺たち5人全員が、慌ててモニター付きのインターホンの前に立った。

この家に、こんな時間に誰かがやってくるなんて、どう考えてもおかしいから。


「誰だろう、こんな時間に・・・」

「まさか石黒竜二?」

「えぇ?!」

「そうだったらどうする?」

「そんなはずないわ、アイツがこの場所を知ってるわけないし。とりあえずアタシが出るわね―――どちら様ですか?」



「―――孝太郎か?」

「え?!」

コンちゃんが奇声を上げた。

誰だ?!



「ショータローさん?」

美和がコンちゃんに口のカタチだけで聞く。

コンちゃんは首を横に振ってる。

じゃあ、誰だ?

他にコンちゃんを本名で呼ぶ人って?



そして。



コンちゃんの発した次の言葉に、俺は心底驚くことになる。

「どうしたんですか、組長が自ら足を運ぶなんて―――そんなに事が大きくなってるんですか?」



組長?

ってことは、コンちゃんのお父さん?!


「いや、美和ちゃんに会いにきたんだ」

「「えぇえぇぇぇ?!!!」」


なんで近藤組の組長が美和に会いにくるんだ?

コンちゃんがセキュリティカメラを確認したら、写っていたのは組長と昌太郎さんで間違いないと言ったので、俺は門を開けた。



「孝太郎、正月以来だな」

そこに立っているのは、漆黒のスーツにサングラス姿の、貫禄ある男性。

隣に立ってる人が昌太郎さんだと思う。

二卵性とはいえ、やっぱコンちゃんに似てるし若いから。


「ご無沙汰してます」

コンちゃんはオンナ言葉じゃなかった。


「け、圭ちゃん?!」

美和が呆然とそこに立ちつくしている。


「そうだよ、美和ちゃん」

サングラスの人が美和の名を呼んだ。


「ああああああ!!!圭ちゃん!!!」

「美和ちゃん!」


美和はコンちゃんのお父さんである、圭さんに飛びついた。

「「「「え?」」」」


俺だけじゃない。

そこにいた全員が腰が抜けるほど驚いた。

里香さんと哲ちゃんは、口が開いたまんま。



「圭ちゃん、どういうこと?!」

美和はまだ抱きついてる。

「いやぁ、孝太郎がここに住んでるとはねぇ」

組長はすっかり顔が緩んでいて、ヤクザの面影もない。



そして。

そこに突っ込みを入れたのはコンちゃんだった。


「おい、エロ親父」

「なんだ?久しぶりに会ったって言うのにその言い様は?」

「美和ちゃんを離せ」

美和を片手で軽々抱きかかえる圭さんは、こう言った。


「ヤだね」

「何言ってんだよ。昌もなんとか言え!」

「オマエ、忘れてんのか?美和ちゃんのこと」

「は?」


「親父は今まで2度命を落としそうになった」

「あぁ。胸を撃たれた時と、薬漬けにされた時・・・え、美和ちゃんって、あの美和ちゃん?!」

「そのまさかだ」

「マジかよ―――あれって、ここだったのか」


俺には何が何だかわからなかった。

「美和ちゃん」

圭さんの声が、優しすぎる。

逆に怖いんだけど。



「健ちゃんと花ちゃんにお線香を上げさせてもらえるかい?」

「うん!」

圭さんはゆっくり美和を床に下ろした。

美和は圭さんの左手を掴んで、どこかへ連れて行こうとする。


「みんなはリビングで待ってて?ちょっと行ってくる」

俺たちはその場に呆然と立ち尽くした。


「おい、親父と2人きりにして大丈夫なのか?」

「美和ちゃんには手はださねぇよ。それに、2人はいつも会ってるし」

「そうなのか?!」

昌太郎さんとコンちゃんのヒソヒソ話が続いているけど、よく聞こえない。


俺は今まで、美和の両親の仏壇を見たことがない。

どこにあるんだろう。

どこかの隠し部屋にあるんだろうか?



俺たちがどよめいている間に、哲ちゃんはさくさくとお茶を入れてくれた。

リビングには、俺と哲ちゃんが横一列、向かいにコンちゃんと昌太郎さん、

里香さんは、慌ててここに舞い戻ってきた明良さんと祥吾さんと、垂直に配置されてるソファーに座っていた。


しばらくして、圭さんと美和は、手を繋いだままリビングに戻ってきた。

なんなんだ、この異常な仲の良さは。


「さてと、じゃ、本題に移るか。そちらのお嬢さんが里香さんだね?」

圭さんが美和の手を握ったまま、話を切り出した。

「はい」


「率直に言うと、石黒の若頭はキミを血眼になって捜してるよ」

「・・・」


「だけど、石黒組自体は動いてない。ROSEも動いてない」

「え?それはどういう・・・」

明良さんが圭さんに聞き返した。


「これは石黒竜二、個人の問題なんだろうな」

―――って、どういうことだ?



「でも、暴力振るわれてたんでしょう?」

美和が里香さんの右手に両手を乗せた。

「はい・・・」


「アイツ、アホだな―――正真正銘の」

コンちゃんは昌太郎さんを見た。

「自分の惚れた女の扱い方もわかんねぇなんて」

昌太郎さんも困った顔をしてる。


「里香さん」

圭さんが里香さんをじっと見据えた。

「はい」


「石黒はたぶん本気でアンタに惚れてるよ。でもな、オンナに手を上げるヤツは病気だ」

「・・・」

「治らない可能性が高い」

「・・・」


「俺が口出しできる立場じゃないのはわかってるけど、これがもし美和ちゃんに起こってることだったら、俺は絶対に石黒の元には返さない。監禁してでも石黒の元へは行かせない」

「・・・」

「意味、分かってくれるかな?」

「・・・はい」


「とにかく、しばらくここにいて、美和ちゃんの言うことを聞いてたら大丈夫。君も目が醒めるよ」

「・・・はい」


里香さんは明良さんと祥吾さんに付き添われて、美和が用意した部屋へ入って行った。

3人で、話をしてるんだと思う。



「圭ちゃ~ん」

美和はまた、圭さんに抱きついている。

おまけに膝の上に乗ってるし。

まぁ、お父さんが子供をあやすようにしか見えないけど。


「なぁ美和ちゃん、ウチで一緒に暮らそうよ」

「「「「え??」」」」


「そんなこと出来ないよ―――私はこの家から出られない」

「そうだよね。健ちゃんに怒られちゃうよね。じゃあまたすぐ来るよ」

「うん。待ってる」

美和のその返事が大変気に入ったみたいで、圭さんは美和のオデコにちゅっとキスをした。



正直言って、俺はこの展開に全くついていってない。

たぶん、哲ちゃんも同じ。


「で、孝太郎。ちゃんと紹介しろよ」

圭さんが哲ちゃんと俺を見た。

「ったく、エロ親父のくせに偉そうに・・・っと、こっちは哲ちゃんでマンガ家さん。こっちは杏くん。中学2年生」

「「どうも」」



「っていうか、親父と美和ちゃんとの関係をちゃんと説明した方がいいんじゃねぇの?」

そうだ、そうしてもらえると助かる。

哲ちゃんと俺は、首を縦になんども振った。


「えっと・・・圭ちゃんはあたしの初恋の人で」

「「「え?!」」」

「美和ちゃんは俺を2度救ったエンジェルだよ」


圭さんは今度は、美和のほっぺたにキスを落とした。

なんかヤバい雰囲気なんだけど。


「でも美和ちゃん、近藤組の名前を聞いても気がつかなかったわよね?」

「それは、俺が近藤組のことを美和ちゃんに言ってなかったから」

「「「は?」」」



「薬漬にされた時、俺は近藤組の地下牢じゃなくて、ここで薬を抜いた。その時に俺を世話してくれたのは、当時6歳の美和ちゃんさ」

信じられない―――、そんな表情でコンちゃんは美和を見た。


「撃たれた時も同じ。それは美和ちゃんが10歳の時かな?組長っていう立場上、そういうことは表ざたに出来ねぇから、健ちゃんがここで全て取り計らってくれて」

昌太郎さんはコンちゃんを見て「あの時だよ」みたいな合図を送ってる。


「それ以降、ずっとデートしてるんだよね、美和ちゃん?」

「うん!」

「「「え?」」」


「ま、美和ちゃんにとって俺はあくまで「圭ちゃん」で、それ以外の肩書には興味なかったと思うな」

「ん~、そうだね。でもそっか、コンちゃんは圭ちゃんの子供なんだぁ。すごいなぁ」


美和は変なところで感動してる。

相変わらずトンチンカンな美和。


「じゃ、また来週迎えにくるよ」

そう言うと、圭さんと昌太郎さんは笑って帰って行った。

呆然としたコンちゃんを残して。


その後すぐ分かったことだけど、例の運転手つきの車に乗って美和を迎えに来るのが、圭さんだった。




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