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First Contact 海へいこう!
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「おっかえりー」
にこやかに迎えに来た満は、浮き輪を見て吹き出してしまった。
「き、キティちゃん!?」
「な、何だよ。んなに笑わなくたっていいじゃんか! 好きなんだからっ」
むうっとして新菜が声を荒げた。
「ご、御免。でもギャップが……」
何とか堪えようとしているらしいのだが、結局込み上げるものを押さえきれずヒーヒー笑い声を上げている。
「最近ちょっと流行ってるんだかんなっ。あたしは前から好きだったけどさ」
言い訳めいたことを言いながら、新菜はぱふんと浮き輪で満を叩いた。
「うんうん……た、確かに女子大生とかOLの間で流行ってるらしいけど」
笑いながら腕でガードされてしまった。
「新菜ちゃんの性格とのギャップが激しすぎて……」
「ん、もうっ。いいじゃんかっ、別にっっ!」
ぱふぱふぱふっ。連続して浮き輪で殴り続ける新菜、恥ずかしすぎて足元が疎かになってしまい石に躓いて前につんのめった。
「うきゃ」
「あぶなっ」
浮き輪は放り出され少し離れたところに落ちた。
パシャンと水の音がして飛沫が顔に掛かる。が、予想していたより随分少なかったので、反射的に目を瞑ってしまっていた新菜はパチリと開いた。
そして満の顔のアップにギョッとなり固まってしまう。
こちらもとっさに新菜を受け止めようとしたのだが、勢いに負けて一緒に倒れてしまったらしい。つまり、満が背中から水に落ちてその胸の上に新菜が倒れたので、殆ど濡れずに済んだというわけだ。
両手を満の顔の脇についたまま、新菜は呆然としていた。
満もそおっと目を開けて新菜を見上げた。お互いの視線がぶつかる。
「あっ、あの……っ」
新菜の顔は真っ赤になっていた。何か言わなくてはと口を開いたものの、結局何も言えずに語尾を濁したまま口を噤んでしまう。
「綺麗……」
不意に満が呟いた。
「え?」
「髪が、日に透けて……キラキラって」
目を細めて自分を見つめている満に、新菜はどう反応してよいものやら判断がつかず、また黙り込んでいた。
それからしばらく後に、
「しっかし」
と口を開いた満の瞳は、いつも通りの茶目っ気を宿していた。
「意外とよくこけるんだな、新菜ちゃん」
「だっ」
ガバッと上半身を起こす新菜。
「誰のせいだと思ってんだよっ!!」
「って、ええー!? オレのせいかぁ??」
体の裏半分水に浸かったまま大仰に驚いて見せる満。その上に乗ったままだった新菜はパッと立ち上がると身軽に浮き輪の元へと駆け寄った。
後から立ち上がった満も、ゆっくりとそちらへ向かう。
新菜はギュッと浮き輪を抱きしめて、満に背中を向けたまま呟くように謝った。
「ご……ゴメン」
満にその声が届いたかどうかは判らなかった。
先刻のことを思い出し、脳内でリピートして自分が今どういう態度を取ればよいのか全く判断できないのだ。
前髪をかき上げている反対側の手を、浮き輪ごと満が後ろから引いた。
「うん」と聞こえたような気がした。
(え? なに? 何に対しての「うん」!?)
「沖の方へ行くんだろ。行こうぜっ」
ぐいぐいと引かれるままに任せ、二人は海へと入って行く。
「はい新菜ちゃんバンザーイ!!」
突然言われて素直に従ってしまう。そこへスポッと浮き輪が通された。
「オレが押してったげるからさ。うーんと沖の方まで行こうっ」
グイグイと背中を押されながら、ようやく二人は沖に向けて泳ぎ始めたのだった。
にこやかに迎えに来た満は、浮き輪を見て吹き出してしまった。
「き、キティちゃん!?」
「な、何だよ。んなに笑わなくたっていいじゃんか! 好きなんだからっ」
むうっとして新菜が声を荒げた。
「ご、御免。でもギャップが……」
何とか堪えようとしているらしいのだが、結局込み上げるものを押さえきれずヒーヒー笑い声を上げている。
「最近ちょっと流行ってるんだかんなっ。あたしは前から好きだったけどさ」
言い訳めいたことを言いながら、新菜はぱふんと浮き輪で満を叩いた。
「うんうん……た、確かに女子大生とかOLの間で流行ってるらしいけど」
笑いながら腕でガードされてしまった。
「新菜ちゃんの性格とのギャップが激しすぎて……」
「ん、もうっ。いいじゃんかっ、別にっっ!」
ぱふぱふぱふっ。連続して浮き輪で殴り続ける新菜、恥ずかしすぎて足元が疎かになってしまい石に躓いて前につんのめった。
「うきゃ」
「あぶなっ」
浮き輪は放り出され少し離れたところに落ちた。
パシャンと水の音がして飛沫が顔に掛かる。が、予想していたより随分少なかったので、反射的に目を瞑ってしまっていた新菜はパチリと開いた。
そして満の顔のアップにギョッとなり固まってしまう。
こちらもとっさに新菜を受け止めようとしたのだが、勢いに負けて一緒に倒れてしまったらしい。つまり、満が背中から水に落ちてその胸の上に新菜が倒れたので、殆ど濡れずに済んだというわけだ。
両手を満の顔の脇についたまま、新菜は呆然としていた。
満もそおっと目を開けて新菜を見上げた。お互いの視線がぶつかる。
「あっ、あの……っ」
新菜の顔は真っ赤になっていた。何か言わなくてはと口を開いたものの、結局何も言えずに語尾を濁したまま口を噤んでしまう。
「綺麗……」
不意に満が呟いた。
「え?」
「髪が、日に透けて……キラキラって」
目を細めて自分を見つめている満に、新菜はどう反応してよいものやら判断がつかず、また黙り込んでいた。
それからしばらく後に、
「しっかし」
と口を開いた満の瞳は、いつも通りの茶目っ気を宿していた。
「意外とよくこけるんだな、新菜ちゃん」
「だっ」
ガバッと上半身を起こす新菜。
「誰のせいだと思ってんだよっ!!」
「って、ええー!? オレのせいかぁ??」
体の裏半分水に浸かったまま大仰に驚いて見せる満。その上に乗ったままだった新菜はパッと立ち上がると身軽に浮き輪の元へと駆け寄った。
後から立ち上がった満も、ゆっくりとそちらへ向かう。
新菜はギュッと浮き輪を抱きしめて、満に背中を向けたまま呟くように謝った。
「ご……ゴメン」
満にその声が届いたかどうかは判らなかった。
先刻のことを思い出し、脳内でリピートして自分が今どういう態度を取ればよいのか全く判断できないのだ。
前髪をかき上げている反対側の手を、浮き輪ごと満が後ろから引いた。
「うん」と聞こえたような気がした。
(え? なに? 何に対しての「うん」!?)
「沖の方へ行くんだろ。行こうぜっ」
ぐいぐいと引かれるままに任せ、二人は海へと入って行く。
「はい新菜ちゃんバンザーイ!!」
突然言われて素直に従ってしまう。そこへスポッと浮き輪が通された。
「オレが押してったげるからさ。うーんと沖の方まで行こうっ」
グイグイと背中を押されながら、ようやく二人は沖に向けて泳ぎ始めたのだった。
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