25 / 190
First Contact 海へいこう!
24
しおりを挟む
隣からは絶え間なく寝息が聞こえてくる。スースーと実に気持ち良さそうだった。
翔子はまた人差し指で脇腹を突付きたい衝動に駆られたが、何とか自制する。
(今度こそ怒られちゃうかな? もしかしてキスマークだけじゃ済まなくなるかもっ)
何故か顔がにやけてしまう。これではお仕置きを期待しているただの変な女である。
(けど、こうやって気持ち良さそうに寝てるとなんっかちょっかい出したくなるじゃない?
例えば蟻が行列作って歩いてたら、石を置いて通せんぼしたりとか、餌運んでたら突付いちゃうとか~。仏の顔も三度までって言うし、あと一回くらいいいよね?)
一体誰に許しを得ようとしているのか、取り敢えずウォルターと円華の視線がコチラに向いていないのを確認すると、浩司に顔を近付けていった。
(こんだけキスマーク付けられたんだもん。付け返してあげないと、ね)
浩司の首筋に唇を当て力いっぱいに吸い上げた。チュウッという音と共に、ガバッと浩司が飛び起きた。だが、先刻と同じく目が据わっているところを見ると、やはり意識は飛んでいるらしい。
「お・ま・え・なぁ……っっ」
首筋に手を当てながらギロリと睨み付けた。
「邪魔すんなって言っただろっ」
「んな怒んないでよぉ。お返ししただけなのにぃ。ちとモノ足んないだろうケド我慢して?」
翔子は少しもひるむことなくにっこりと笑った。
「ほ、おー」
にたりと迫力のある笑みが返された。
「『お返し』ねぇ。もともとそっちが悪ぃんだろうが」
「えっ!? なんでなんでぇ」
安眠妨害に対して、丸っきり悪いことをしたとは感じていない翔子である。
「折角遊びに来てるのに、寝てるなんてつまんなーい」
「眠いんだからいいだろ。寝させろ」
「いやん。寝ようだなんて、浩司くんのエッチぃ」
打てども全く響く様子のない翔子に、浩司の唇の端が引きつった。
そして二人共にどうやらウォルターと円華の存在を綺麗さっぱりと忘れているらしい。
勿論同じシートの上にいるのだけれど、相変わらず素知らぬふりを決め込んで耳だけで二人の遣り取りを窺っているのだった。
「そーかよ……」
ついに再び浩司の堪忍袋の緒が切れたようだ。
「そぉんなに一緒に寝たいならなあ、お望みどおりそうしてやるよっ」
ぐい、と翔子の腰を引き寄せると、腕を背中に捻り上げた。
「いたたっっ」
悲鳴もお構い無しに両腕を固定したまま、ころんと横になった。
そうしてまたすぐに寝息を立て始める。元々半分眠っているような状態なので、すこぶる寝つきが良い。
翔子は何とかして浩司の手から逃れようとあがいてみるのだが、動いても痛みが増すだけで、手の力が緩む様子もない。もっと眠りが深くなれば力も抜けるだろうと考えて、諦めてじっとしていることにした。
(どうせ一緒に寝てくれるんなら、腕枕の方がいいのにぃ)
翔子はくすんと鼻を鳴らした。
翔子はまた人差し指で脇腹を突付きたい衝動に駆られたが、何とか自制する。
(今度こそ怒られちゃうかな? もしかしてキスマークだけじゃ済まなくなるかもっ)
何故か顔がにやけてしまう。これではお仕置きを期待しているただの変な女である。
(けど、こうやって気持ち良さそうに寝てるとなんっかちょっかい出したくなるじゃない?
例えば蟻が行列作って歩いてたら、石を置いて通せんぼしたりとか、餌運んでたら突付いちゃうとか~。仏の顔も三度までって言うし、あと一回くらいいいよね?)
一体誰に許しを得ようとしているのか、取り敢えずウォルターと円華の視線がコチラに向いていないのを確認すると、浩司に顔を近付けていった。
(こんだけキスマーク付けられたんだもん。付け返してあげないと、ね)
浩司の首筋に唇を当て力いっぱいに吸い上げた。チュウッという音と共に、ガバッと浩司が飛び起きた。だが、先刻と同じく目が据わっているところを見ると、やはり意識は飛んでいるらしい。
「お・ま・え・なぁ……っっ」
首筋に手を当てながらギロリと睨み付けた。
「邪魔すんなって言っただろっ」
「んな怒んないでよぉ。お返ししただけなのにぃ。ちとモノ足んないだろうケド我慢して?」
翔子は少しもひるむことなくにっこりと笑った。
「ほ、おー」
にたりと迫力のある笑みが返された。
「『お返し』ねぇ。もともとそっちが悪ぃんだろうが」
「えっ!? なんでなんでぇ」
安眠妨害に対して、丸っきり悪いことをしたとは感じていない翔子である。
「折角遊びに来てるのに、寝てるなんてつまんなーい」
「眠いんだからいいだろ。寝させろ」
「いやん。寝ようだなんて、浩司くんのエッチぃ」
打てども全く響く様子のない翔子に、浩司の唇の端が引きつった。
そして二人共にどうやらウォルターと円華の存在を綺麗さっぱりと忘れているらしい。
勿論同じシートの上にいるのだけれど、相変わらず素知らぬふりを決め込んで耳だけで二人の遣り取りを窺っているのだった。
「そーかよ……」
ついに再び浩司の堪忍袋の緒が切れたようだ。
「そぉんなに一緒に寝たいならなあ、お望みどおりそうしてやるよっ」
ぐい、と翔子の腰を引き寄せると、腕を背中に捻り上げた。
「いたたっっ」
悲鳴もお構い無しに両腕を固定したまま、ころんと横になった。
そうしてまたすぐに寝息を立て始める。元々半分眠っているような状態なので、すこぶる寝つきが良い。
翔子は何とかして浩司の手から逃れようとあがいてみるのだが、動いても痛みが増すだけで、手の力が緩む様子もない。もっと眠りが深くなれば力も抜けるだろうと考えて、諦めてじっとしていることにした。
(どうせ一緒に寝てくれるんなら、腕枕の方がいいのにぃ)
翔子はくすんと鼻を鳴らした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる