ぽんくら短編集

タカハシU太

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御馳走

【透明エイリアン来襲、女子高生ハンターいただきます】



 果林はJK制服姿で住宅街の路上を歩いていた。背中には、ギターケースを抱えて。学校帰りの軽音楽部といういでたちだ。
「ぎゃああああああっ!」
 曲がり角の向こうから、悲鳴が聞こえた。果林は駆け出して、十字路まで来ると左手を向いた。
 スーツ姿の男性がアスファルト上に倒れている。白目を剥いたまま、こと切れていた。
「……!」
 何かがいる。果林は気配を察知して、今来た道を急いで戻り始めた。どこへ行くべきか、見回す。人家はまずい。公園のような開けた場所も。ちょうどいいところに、町工場の倉庫があった。
 鍵のない鉄製のドアが横にスライドした。中に入ると、無人。即座に閉めた。
 準備をし、物陰から様子をうかがいながら、じっと待つ。
 ドアが開いた。外には誰もいない。ドアが閉まり、足音だけが響く。姿の見えない誰かが歩いているのだ。まるで透明人間のように。
 やつらは人間を刈る。我々は獲物。果林も先ほどの死体の男性も、餌なのだ。
 空のかなたから飛来し、地上に舞い降りてくる。特殊なシールドを全身に装着しており、人類には、やつらの姿は目視できない。
 床上五センチに張った横一本のピアノ線に、何かが引っかかった。やつの足だ。
 果林は虚空に向かって、白い粉を盛大に撒いた。
 小麦粉にまみれた人間大の生物が浮き彫りになった。二足歩行の巨大バッタのような気色悪い害虫。
「くたばれ!」
 果林はギターケースの中から日本刀を取り出し、鞘を投げ捨てると、白塗りモンスターに向かって刃を振り下ろした。やつはハンティング用の大剣で受け止めた。
 火花が散る。
 果林が何度も打って出るが、地球上にはない物質で作られた剣には歯が立たなかった。逆に果林の日本刀が根元から折れてしまった。
「クソ!」
 丸腰でひざまずいた果林は見返した。やつらのご馳走になるのか。
 モンスターが振り下ろしてくる。果林はよけることなく、両の手のひらでパッと挟んで受け止めた。
 真剣白刃取り。
「やあっ!」
 挟んだままねじり伏せ、相手を横転させた。そして、モンスターの大剣を奪い取る。
「いただき!」
 大剣を横に薙ぎ払った。化け物の首が撥ね飛び、胴体が崩れ落ちた。
「本日の食材、ゲット……」
 果林は満足そうな笑みを浮かべ、白い粉まみれの死骸を見下ろした。

 このモンスターは美味である。カニやエビのような味わい。これがグルメ通で話題になり、高値で売れた。しかも、やつらは次々とこの地球へとやってくる。我々の食糧になることも知らずに。
 倉庫の外へ出た果林は、視線を空へ向けた。
「さあ、もっと来い!」
 ハンターの瞳は、きらきらと輝いていた。

                 (了)
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