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麗人先輩の口唇に 8
【1】
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サトルの胸の奥では、まるでそこに小さな炉でも据え付けられたかのように不穏な熱がじわりじわりと脈を打ち、その熱は意識の表面をじわっと曇らせながら、言い訳できない焦燥を静かに積み上げていっていた。
昨夜、深夜テンションに任せてゲームを徹夜で走り抜けてしまった報い──襲いくる眠気の重さに負けない為に、講義が始まる直前、飲んだ強めの栄養ドリンク。
その“覚醒作用”が、予想外の方向へと効力を示し始め、下腹の奥で波紋のように広がった熱が、じんわりと、しかし確実にサトルのアソコを刺激していく。
(……嘘だろ、よりによってこんな時に、こんな時に?!)
ゆるやかな鼓動とともに股間が自己主張を強めはじめ、パンツの中で勝手気ままに角度を変え、窮屈な布地を押しあげるたび、肌に伝わるわずかな摩擦さえ刺激に変わり、意図せず下腹の鼓動と連動してしまう。
歩けば歩くほど、存在を訴える疼きが鋭さを増し、そのどうしようもなさにサトルは苦々しく眉根を寄せた。
「……トイレに行って……ちんポジ、直すしかねぇな、これ」
サトルは早足で男子トイレへ駆け込み、勢いよくドアを押し開ける。
内部は珍しく静まり返っており、誰ひとりいない。彼は胸の奥でひそかに安堵の息をつきつつ、個室まで行くまでもないと判断し、小便器の前に立ち、動作は焦りに追い立てられるように素早くなり、ズボンとパンツをまとめて一気に下ろした──まさにその刹那だった。
トイレの入口から、金具の触れ合うような小さな音が響き、続けて空気がわずかに揺れた。
視界の端に影が落ち、まるで暗転した舞台にただ一筋のスポットライトが射し込んだかのように、異様な存在感を纏った人物が姿を現した。
すらりと伸びた長い脚、涼しげな目元を縁取る端整な骨格、無駄のない精悍さを宿す輪郭。周囲の風景が一気に背景として引いていくような、圧倒的な“絵になる”気配。学内で何度か噂に聞いた、あのイケメンが、そこにいた。
サトルが半ば反射的に身じろぎする間もなく、イケメンの視線は既にサトルの熱り立った中心へと、驚くほど真っ直ぐに落ちてしまっていた。
「!?」
ただそれだけの出来事なのに、場の空気はぴたりと止まり、わずか一秒にも満たない沈黙が、息を呑むほど長い時間に歪んで感じられ、サトルの心臓は自分のものとは思えない音を立てながら暴れる。
次の瞬間、イケメンは、触れるか触れないかほど繊細に眉を跳ねさせ、はっとわずかに目を見開いたが、何も言葉を発さず、表情の続きを見せることなく、無音のすべり込みのような滑らかさでそのまま個室へと身を消した。
取り残された静寂は、耳鳴りすら奪うように深く澄んでいた。
サトルはただひとり、熱の引かぬ鼓動に胸を波立たせながら立ち尽くし、その緊張の余韻がかえって逆効果になったのか、いつのまにか下腹の昂ぶりは急速にしぼみ、先ほどまで反逆者のように主張していたムスコは、何事もなかったかのように平常へと戻っていった。
昨夜、深夜テンションに任せてゲームを徹夜で走り抜けてしまった報い──襲いくる眠気の重さに負けない為に、講義が始まる直前、飲んだ強めの栄養ドリンク。
その“覚醒作用”が、予想外の方向へと効力を示し始め、下腹の奥で波紋のように広がった熱が、じんわりと、しかし確実にサトルのアソコを刺激していく。
(……嘘だろ、よりによってこんな時に、こんな時に?!)
ゆるやかな鼓動とともに股間が自己主張を強めはじめ、パンツの中で勝手気ままに角度を変え、窮屈な布地を押しあげるたび、肌に伝わるわずかな摩擦さえ刺激に変わり、意図せず下腹の鼓動と連動してしまう。
歩けば歩くほど、存在を訴える疼きが鋭さを増し、そのどうしようもなさにサトルは苦々しく眉根を寄せた。
「……トイレに行って……ちんポジ、直すしかねぇな、これ」
サトルは早足で男子トイレへ駆け込み、勢いよくドアを押し開ける。
内部は珍しく静まり返っており、誰ひとりいない。彼は胸の奥でひそかに安堵の息をつきつつ、個室まで行くまでもないと判断し、小便器の前に立ち、動作は焦りに追い立てられるように素早くなり、ズボンとパンツをまとめて一気に下ろした──まさにその刹那だった。
トイレの入口から、金具の触れ合うような小さな音が響き、続けて空気がわずかに揺れた。
視界の端に影が落ち、まるで暗転した舞台にただ一筋のスポットライトが射し込んだかのように、異様な存在感を纏った人物が姿を現した。
すらりと伸びた長い脚、涼しげな目元を縁取る端整な骨格、無駄のない精悍さを宿す輪郭。周囲の風景が一気に背景として引いていくような、圧倒的な“絵になる”気配。学内で何度か噂に聞いた、あのイケメンが、そこにいた。
サトルが半ば反射的に身じろぎする間もなく、イケメンの視線は既にサトルの熱り立った中心へと、驚くほど真っ直ぐに落ちてしまっていた。
「!?」
ただそれだけの出来事なのに、場の空気はぴたりと止まり、わずか一秒にも満たない沈黙が、息を呑むほど長い時間に歪んで感じられ、サトルの心臓は自分のものとは思えない音を立てながら暴れる。
次の瞬間、イケメンは、触れるか触れないかほど繊細に眉を跳ねさせ、はっとわずかに目を見開いたが、何も言葉を発さず、表情の続きを見せることなく、無音のすべり込みのような滑らかさでそのまま個室へと身を消した。
取り残された静寂は、耳鳴りすら奪うように深く澄んでいた。
サトルはただひとり、熱の引かぬ鼓動に胸を波立たせながら立ち尽くし、その緊張の余韻がかえって逆効果になったのか、いつのまにか下腹の昂ぶりは急速にしぼみ、先ほどまで反逆者のように主張していたムスコは、何事もなかったかのように平常へと戻っていった。
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