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閑古鳥が鳴く純喫茶店主の口唇に 3
【3】
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バケツゼリーがメニューに追加されると、SNS映えを狙う若者を中心に少し話題にはなったが、大サイズは値段が高く、注文は少なかったが、店の看板として客寄せ効果を発揮していた。
(大サイズの代わりに小中サイズの注文が、よく入った)
そんなある日、店に変わった三人組がやってきた。
「ふーん、ここが最近話題になってる喫茶店か。流行りのレトロ風で、なかなかいいんじゃな~い」
サングラスをかけた威圧感のある男性が、店内を見回しながらつぶやく。
彼らはサナエの許可を得て写真を撮ったり、メニューを細かく確認したりと、明らかに普通の客とは違う様子だった。
SNSで耳にしていた大サイズのバケツコーヒーゼリーを注文した。
「これ、良いね。インパクト十分じゃない? ねえ、これをストーリーに組み込めたりする?」
男性がぼそりとつぶやくと、そばにいた女性が頷き、持っていたタブレットに何やら入力を始め、サトルとサナエはその様子を見合わせ、訝しげな表情を浮かべたのであった。
後日、サナエのもとに一本の電話が入る。
先の三人組の正体はテレビドラマのロケハンチームだった。彼らは店をドラマのロケ地として使用したいと言い、さらに劇中で大サイズのバケツコーヒーゼリーを登場させたいと申し出てきたのだ。
自分の店がドラマにロケ地になるという興味と好奇心に駆られ、店の宣伝にもなるとサナエは二つ返事で了承したのてある。
やがてドラマの放送が始まると、主役がバケツコーヒーゼリーを注文するシーンがSNSで話題を呼び、一躍店は注目の的となった。
連日多くの客が訪れ、店内は人と活気であふれ、大勢の客に対応しきれなくなったサナエに頼まれ、サトルも臨時バイトとして店を手伝うことになった。
ある日の閉店後。
「ふいー、疲れた…」
今日も大勢のお客を応対したサトルはテーブルにうつ伏せになり、肩で息をつく。
そんな彼の前にサナエがコーヒーを差し出した。
「サトルくん、お疲れ様」
「サナエさん、ありがとうございます」
湯気の立つコーヒーを手に取ったサトルは、しばし静かな時間を楽しむ。テレビの影響力の大きさに改めて驚いてしまう
「テレビの効果って、まだまだ凄いわ。これほどまでにお客さんが来るなんて想像だにしていなかったわ」
「そうですね。それに最近はミーハーなお客さんが減ってきて、常連さんっぽい人も増えた気がしますね」
「ええ、それでなんとか軌道に乗れそうだわ」
サナエはサトルを見つめ、感慨深げに言葉を続けた。
「それもこれもサトルくんのお陰ね」
「え?」
「サトルくんがバケツコーヒーゼリーを提案していなかったら、店がドラマのロケ地になることも無かったんだし、すべてはサトルくんがキッカケを作ってくれたお陰よ」
そう言ってサナエは優しくサトルの手を握った。その温かさにサトルは少し驚きながらも微笑んだ。
「いやいや、そんなことないですよ。ドラマの影響力や物珍しさはあったかもしれないですけど、結局はここのコーヒーが美味しいから、お客が途切れないんですよ」
「ふふ、ありがとう」
店にはサトルとサナエの二人だけだった。
サナエの夫は町内会の集まりで出かけており、閉店後の店内は電気が落とされ、薄暗い中で二人の声だけが響いていた。
ふとした沈黙の後、二人は自然に視線を交わし合い、気がつけばお互いの顔が徐々に近づいていった。
そして、ほんの一瞬‥‥二人の唇が重なった。
(大サイズの代わりに小中サイズの注文が、よく入った)
そんなある日、店に変わった三人組がやってきた。
「ふーん、ここが最近話題になってる喫茶店か。流行りのレトロ風で、なかなかいいんじゃな~い」
サングラスをかけた威圧感のある男性が、店内を見回しながらつぶやく。
彼らはサナエの許可を得て写真を撮ったり、メニューを細かく確認したりと、明らかに普通の客とは違う様子だった。
SNSで耳にしていた大サイズのバケツコーヒーゼリーを注文した。
「これ、良いね。インパクト十分じゃない? ねえ、これをストーリーに組み込めたりする?」
男性がぼそりとつぶやくと、そばにいた女性が頷き、持っていたタブレットに何やら入力を始め、サトルとサナエはその様子を見合わせ、訝しげな表情を浮かべたのであった。
後日、サナエのもとに一本の電話が入る。
先の三人組の正体はテレビドラマのロケハンチームだった。彼らは店をドラマのロケ地として使用したいと言い、さらに劇中で大サイズのバケツコーヒーゼリーを登場させたいと申し出てきたのだ。
自分の店がドラマにロケ地になるという興味と好奇心に駆られ、店の宣伝にもなるとサナエは二つ返事で了承したのてある。
やがてドラマの放送が始まると、主役がバケツコーヒーゼリーを注文するシーンがSNSで話題を呼び、一躍店は注目の的となった。
連日多くの客が訪れ、店内は人と活気であふれ、大勢の客に対応しきれなくなったサナエに頼まれ、サトルも臨時バイトとして店を手伝うことになった。
ある日の閉店後。
「ふいー、疲れた…」
今日も大勢のお客を応対したサトルはテーブルにうつ伏せになり、肩で息をつく。
そんな彼の前にサナエがコーヒーを差し出した。
「サトルくん、お疲れ様」
「サナエさん、ありがとうございます」
湯気の立つコーヒーを手に取ったサトルは、しばし静かな時間を楽しむ。テレビの影響力の大きさに改めて驚いてしまう
「テレビの効果って、まだまだ凄いわ。これほどまでにお客さんが来るなんて想像だにしていなかったわ」
「そうですね。それに最近はミーハーなお客さんが減ってきて、常連さんっぽい人も増えた気がしますね」
「ええ、それでなんとか軌道に乗れそうだわ」
サナエはサトルを見つめ、感慨深げに言葉を続けた。
「それもこれもサトルくんのお陰ね」
「え?」
「サトルくんがバケツコーヒーゼリーを提案していなかったら、店がドラマのロケ地になることも無かったんだし、すべてはサトルくんがキッカケを作ってくれたお陰よ」
そう言ってサナエは優しくサトルの手を握った。その温かさにサトルは少し驚きながらも微笑んだ。
「いやいや、そんなことないですよ。ドラマの影響力や物珍しさはあったかもしれないですけど、結局はここのコーヒーが美味しいから、お客が途切れないんですよ」
「ふふ、ありがとう」
店にはサトルとサナエの二人だけだった。
サナエの夫は町内会の集まりで出かけており、閉店後の店内は電気が落とされ、薄暗い中で二人の声だけが響いていた。
ふとした沈黙の後、二人は自然に視線を交わし合い、気がつけばお互いの顔が徐々に近づいていった。
そして、ほんの一瞬‥‥二人の唇が重なった。
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