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8・スーチェの受ける不思議な加護
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僅かに暑さを感じる。ゆっくり浮上してくる意識に合わせるように、周囲の喧騒が耳に煩わしさを与えてくる。
「おーい、そろそろ起きろ」
「ん…」
「起ーきーろー」
「わっ!!」
「ようやく起きたか?寝過ぎだろ。朝飯無くなるぞ」
カイルの声にナッシュは驚いて目を覚ました。
「あ……ああ、そっか昨夜……そういや、あいつ……」
扉を叩く音がして、間もなくスーチェが部屋に入ってくる。
「やあ、おはよう。良く眠れたようだね」
「お前、昨夜飲み物に何か混ぜたのか?」
「いや、俺は混ぜてはいない。けど……まあ、取り敢えず診察しても良いかい?痛みは?」
「ああ……ん?」
ナッシュはスーチェの問いに、身体中を触りながら首を捻っている。
「ん?どうかした?」
「ちょっと待て」
ナッシュは、軽く跳ねたり身体を捻っている。
「痛みが無い……治ったのか?」
「そう?回復は早いみたいだけどね。そこに横になってくれるかな」
「わかった」
スーチェは怪我の酷かった部分から丁寧に診察をしていく。
「うん、戦闘はさせたくないけど、旅くらいは問題なさそうだね」
「なぁ、普通はこれ程早く治らないと思うんだが、この国には何か特殊な薬があったりするのか?」
「別に無いと思うよ。それから、今回塗ったのは俺の作った薬だけど、庶民が普段使っている物と変わらない。ただ……」
「ただ?」
「俺の先祖にエルフがいてね。俺には見えないんだけど、精霊が側についているらしいんだよ。それは、別に血を引く者全員にではなく、選ばれた者だけなんだって。だから、昨夜のミルクにも、魔法か何かしていたのかもしれない」
ナッシュは怪訝な顔をする。昨夜のジーニャ辺境伯も言ってはいたが、今までエルフなんて想像の産物だと思っていたからだ。
「それは、お前の希望を叶えてくれるとか、外敵から身を守ってくれるとか。思い通りに動いてくれるのか?」
「『思い通り』っていうのは無理だね。俺から話しかけても返事が返ってくることは無いし、修練で普通に怪我もする。気紛れなのか、何かの意図で動いてるのか、さっぱりわからないのさ」
「それじゃあどうやって選ばれてるってわかったんだ?」
「怪我の治りが早いってのもあるけど、微かな気配かな」
「随分と抽象的なんだな」
「『今までは』ね」
「どういう事だ」
「今回エルフの里に行く事で、謎が解けるかもしれないんだ」
「なる程な」
ナッシュは一応の納得をする。
昨日のジーニャ辺境伯の話にしても、こいつの話にしても、全てはこいつ等に付いていけばわかる話だ。
これが兄の罠だとしても、俺は今、生きている。そして、俺の味方とは言えずとも、少なくともこいつ等から命を狙われる事は無さそうだ。
扉を叩く音がして、カイルが応対する。微かに香る紅茶の匂いに、身体が食事を欲していた事を思い出した。
「食事が終わったら、買い出しに行くぞ」
侍女から受け取ったワゴンの上の食事をテーブルに移しながら、カイルが今日の予定を告げてくる。
「なるべく装備は軽くしたいが、命を狙われている以上、今のままってわけにもいかないからな」
「店までは、みんなを馬車で運ぶよ。支払いは全て……勿論ナッシュの分も父上が都合をつけてくれるらしい」
「俺等の分も国王に払わせるって事か?」
「カイル鋭いな」
「だったら遠慮なく良いもん選んでやろ。ナッシュ早く食え」
「あ、ああ……」
ナッシュは促されるままに食事を始める。
(この食事にも何か加わっているのか?)
疑心暗鬼になりながらもスープを恐る恐る口に運ぶ。
「美味い。いや、普通なんだが……美味いな」
「ははは、まぁ、ナッシュの口に合ったのなら良かった。シェフが気にしてたから」
スーチェはそう言ってバルコニーに続く窓を開けた。
涼やかな風と微かな草木の匂いが鼻をくすぐる。
「おーい、そろそろ起きろ」
「ん…」
「起ーきーろー」
「わっ!!」
「ようやく起きたか?寝過ぎだろ。朝飯無くなるぞ」
カイルの声にナッシュは驚いて目を覚ました。
「あ……ああ、そっか昨夜……そういや、あいつ……」
扉を叩く音がして、間もなくスーチェが部屋に入ってくる。
「やあ、おはよう。良く眠れたようだね」
「お前、昨夜飲み物に何か混ぜたのか?」
「いや、俺は混ぜてはいない。けど……まあ、取り敢えず診察しても良いかい?痛みは?」
「ああ……ん?」
ナッシュはスーチェの問いに、身体中を触りながら首を捻っている。
「ん?どうかした?」
「ちょっと待て」
ナッシュは、軽く跳ねたり身体を捻っている。
「痛みが無い……治ったのか?」
「そう?回復は早いみたいだけどね。そこに横になってくれるかな」
「わかった」
スーチェは怪我の酷かった部分から丁寧に診察をしていく。
「うん、戦闘はさせたくないけど、旅くらいは問題なさそうだね」
「なぁ、普通はこれ程早く治らないと思うんだが、この国には何か特殊な薬があったりするのか?」
「別に無いと思うよ。それから、今回塗ったのは俺の作った薬だけど、庶民が普段使っている物と変わらない。ただ……」
「ただ?」
「俺の先祖にエルフがいてね。俺には見えないんだけど、精霊が側についているらしいんだよ。それは、別に血を引く者全員にではなく、選ばれた者だけなんだって。だから、昨夜のミルクにも、魔法か何かしていたのかもしれない」
ナッシュは怪訝な顔をする。昨夜のジーニャ辺境伯も言ってはいたが、今までエルフなんて想像の産物だと思っていたからだ。
「それは、お前の希望を叶えてくれるとか、外敵から身を守ってくれるとか。思い通りに動いてくれるのか?」
「『思い通り』っていうのは無理だね。俺から話しかけても返事が返ってくることは無いし、修練で普通に怪我もする。気紛れなのか、何かの意図で動いてるのか、さっぱりわからないのさ」
「それじゃあどうやって選ばれてるってわかったんだ?」
「怪我の治りが早いってのもあるけど、微かな気配かな」
「随分と抽象的なんだな」
「『今までは』ね」
「どういう事だ」
「今回エルフの里に行く事で、謎が解けるかもしれないんだ」
「なる程な」
ナッシュは一応の納得をする。
昨日のジーニャ辺境伯の話にしても、こいつの話にしても、全てはこいつ等に付いていけばわかる話だ。
これが兄の罠だとしても、俺は今、生きている。そして、俺の味方とは言えずとも、少なくともこいつ等から命を狙われる事は無さそうだ。
扉を叩く音がして、カイルが応対する。微かに香る紅茶の匂いに、身体が食事を欲していた事を思い出した。
「食事が終わったら、買い出しに行くぞ」
侍女から受け取ったワゴンの上の食事をテーブルに移しながら、カイルが今日の予定を告げてくる。
「なるべく装備は軽くしたいが、命を狙われている以上、今のままってわけにもいかないからな」
「店までは、みんなを馬車で運ぶよ。支払いは全て……勿論ナッシュの分も父上が都合をつけてくれるらしい」
「俺等の分も国王に払わせるって事か?」
「カイル鋭いな」
「だったら遠慮なく良いもん選んでやろ。ナッシュ早く食え」
「あ、ああ……」
ナッシュは促されるままに食事を始める。
(この食事にも何か加わっているのか?)
疑心暗鬼になりながらもスープを恐る恐る口に運ぶ。
「美味い。いや、普通なんだが……美味いな」
「ははは、まぁ、ナッシュの口に合ったのなら良かった。シェフが気にしてたから」
スーチェはそう言ってバルコニーに続く窓を開けた。
涼やかな風と微かな草木の匂いが鼻をくすぐる。
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