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意に反して進むストーリー
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「はぁ……憂鬱……。」
私の名は、ナタリー・ハーレイ。
なんで乙女ゲームの世界なんかに転生しちゃったんだろう。百歩譲って転生は良いとしても、せめてモブにしてほしかった。衣食住には困らない代わりに、自由もない教会暮らしの聖女なんて…。
いくらゲームのヒロインと言われても興味無いのよ。
平凡で楽しく生きられるなら、長生きもしたいの。注目されなくても全く構わない。前世は学生で終わっちゃったから。色々な国を旅行もしたい。
大体ここ乙女ゲームの世界に転生したのに、学園に入る前に既にストーリーが崩壊してるとかどういうこと?
一週間後には、学園の入学式よ。
既に亡くなってるはずのキャラは皆生きてるし、植物状態の筈の皇太子はピンピンしてるじゃない。
第二王子の婚約者の筈のエディントン辺境伯の娘ルナマリア様は、ゲームでは怪我を負っていて、その原因が王家にあるとかで第二王子の婚約者になってる筈なのに。皇太子の婚約者だとか。
王妃様は、自分が主催したお茶会で事件が起きて貴族の子供達が大勢亡くなった事を悔やんで、責任を感じて自死を選ぶストーリーの筈が、自死どころか王女出産とか。
もうどうなってるのよ。あぁ、行きたくない。
◇◇◇◇◇
「行きたくない…。」
とか言ってるうちに入学式来ちゃったよ。
今日は、最初の攻略対象者達に逢うイベントがある日。遭遇回避の為に朝早く出てきたけど、あまりウロウロしないほうが良さそうだよね…。
「折角だから遠くで顔だけ拝んでおきたいなぁ。門付近の校舎の陰に隠れるのが妥当かな?」
私はなるべく人気のない場所を選んだはずだったんだけど、何故か目の前にはルナマリア様。
「か…可愛いっ」
あっ、思わず前世の言葉が出ちゃった…。でも、ゲームで見るより本当に可愛いのよう。傷も無いみたいだし、顔も小さくてお人形みたい。ん?でもあれっ?固まってる?
「ルナマリア・エディントン様?」
「そっ、その貴女の肩の鳥は?」
「えっ?この子が見えるんですか?ど、どうして?」
そう、今私の肩には1羽の鳥もどきが乗っているのだけど、今まで私以外の人に見えたことはない。
何故もどきなのかと言うと、この子の姿形は前世の母が描いた絵にそっくりなのだ。前世の母というのは割と色々と器用に熟してしまう性格だったのだが、どうも、絵の才能だけには恵まれなかったらしい。しかも、いくら調べてもこの世界でこの種の生き物の存在が、確認出来ていない……という不思議な生き物だからである。
「ピピッ!!」
「あっ、失礼いたしました。私はナタリー・ハーレイと申します。ナタリーとお呼び下さい。」
「えっ?あっ、こちらこそ失礼致しました。私は、ルナマリア・エディントンと申します。マリア…いえ、マリーとお呼び頂けますか?聖女様でいらっしゃいますよね?」
「はい。今日からこの学園に通うことになりました。宜しくお願い致します。」
「此方こそ宜しくお願い致します。ところで先程の…。」
ルナマリア様がさっきの話に戻そうとした時、私の前に立ち塞がるように男性の背中が現れた。
「何をしてるんだ?悪役令嬢!!」
「お久しぶりです。ルイベルト第二王子。お言葉ですが、悪役令嬢とはどういうことで御座いましょうか?何度も申し上げておりますように、私には心当たりが御座いません。」
「ハハハッ、そりゃあそうだろう。これからなるんだからな。」
「私はただ、聖女様にご挨拶させて頂いただけでございます。」
ルイベルト様ってこの国の第二王子じゃない。ルナマリア様のこと嫌いなんだ。そこはゲームと一緒なのね。
…って、ん?今何て言ってたっけ?確か…あれ?
「聖女殿、私が校内を案内しよう。悪役令嬢に何されるかわからんからな。」
えっ?第二王子と一緒なんて冗談じゃないわ。私、煩わしいこと嫌いなのよ。あぁでも、さっきの言葉について聞かないといけないのか。仕方ないなぁ。
「マリー様今日はこれで失礼します。ですが、後日お時間のある時にゆっくりお話させて頂けますか?私もお伺いしたいことがありますので。」
「聖女殿、何を言ってるんだ。こいつは悪役令嬢だぞ。何されるかわからん。そんなやつと話なんかしなくて良い。」
あぁもう、第二王子いちいち煩い。
「ルイベルト第二王子、私にお友達をつくる選択権は与えられないと仰るのですか?」
「あぁ、あのそうではなくて、聖女殿の身を案じて言ってるだけです。」
「私の身を案じて頂ける事には感謝申し上げます。ですが、私の自由を奪わないで頂けますか。」
「わ、わかりました。気をつけます。」
「では、マリー様失礼致します。」
「あっ、ありがとうございました。ナタリー様。」
さて、この王子、転生者かしら。あんまり頭良くなさそうだけど。
「ルイベルト第二王子、先程仰っていた『あくやくれいじょう』とは、どういうことでしょうか?」
「…ああ、聖女様なら話しても良いでしょう。実は私には、前世の記憶があります。この世界とは全く異なる世界で生きておりました。と申し上げても簡単に信じては戴けないと思いますが…。」
やっぱりね。私も転生者だから信じるけど、今は、内緒にしておこう。うんうんそれで?
「その世界では、魔法が無い変わりに機械が発達しておりました。そして、その中には、乙女ゲームという女の子が遊ぶ、おもちゃのような物がありました。」
うん、貴方も日本に住んでたのね。
「そのゲームの一つに、この世界がそっくりなのです。」
そっくりだけど何故かストーリーは、崩壊してるのよね。
「そして、ルナマリア・エディントン嬢は、そのゲームの物語の中で、私の婚約者の立場になり、聖女殿を苛め、挙げ句殺害しようとまで考えるのです。」
そうなのよね。でも、そんな人には見えなかったな。怪我してなかったからかな?
「だから私は、聖女殿をお守りする為に聖女殿の側に居ようと考えました。」
それって必要ないんじゃない?
「それって、マリー様は第二王子の婚約者では無いので、私を苛める理由が無いのでは?」
「……そうとも考えられるが、しかし…。」
「はぁ…。ルイベルト第二王子、決めつけるのはどうかと思います。とにかく、私はマリー様とお話ししたいです。宜しいですね。」
「…わかった。」
「ふぅ…。ではルイベルト第二王子、レセプションに行きましょうか。」
なんとかゲームイベントは回避出来たかしら。まあ、元々ストーリーは崩壊してるけど。式の後はクラス発表を見て、今日は終わりね。楽しい学園生活にしたいんだけどなぁ。
私の名は、ナタリー・ハーレイ。
なんで乙女ゲームの世界なんかに転生しちゃったんだろう。百歩譲って転生は良いとしても、せめてモブにしてほしかった。衣食住には困らない代わりに、自由もない教会暮らしの聖女なんて…。
いくらゲームのヒロインと言われても興味無いのよ。
平凡で楽しく生きられるなら、長生きもしたいの。注目されなくても全く構わない。前世は学生で終わっちゃったから。色々な国を旅行もしたい。
大体ここ乙女ゲームの世界に転生したのに、学園に入る前に既にストーリーが崩壊してるとかどういうこと?
一週間後には、学園の入学式よ。
既に亡くなってるはずのキャラは皆生きてるし、植物状態の筈の皇太子はピンピンしてるじゃない。
第二王子の婚約者の筈のエディントン辺境伯の娘ルナマリア様は、ゲームでは怪我を負っていて、その原因が王家にあるとかで第二王子の婚約者になってる筈なのに。皇太子の婚約者だとか。
王妃様は、自分が主催したお茶会で事件が起きて貴族の子供達が大勢亡くなった事を悔やんで、責任を感じて自死を選ぶストーリーの筈が、自死どころか王女出産とか。
もうどうなってるのよ。あぁ、行きたくない。
◇◇◇◇◇
「行きたくない…。」
とか言ってるうちに入学式来ちゃったよ。
今日は、最初の攻略対象者達に逢うイベントがある日。遭遇回避の為に朝早く出てきたけど、あまりウロウロしないほうが良さそうだよね…。
「折角だから遠くで顔だけ拝んでおきたいなぁ。門付近の校舎の陰に隠れるのが妥当かな?」
私はなるべく人気のない場所を選んだはずだったんだけど、何故か目の前にはルナマリア様。
「か…可愛いっ」
あっ、思わず前世の言葉が出ちゃった…。でも、ゲームで見るより本当に可愛いのよう。傷も無いみたいだし、顔も小さくてお人形みたい。ん?でもあれっ?固まってる?
「ルナマリア・エディントン様?」
「そっ、その貴女の肩の鳥は?」
「えっ?この子が見えるんですか?ど、どうして?」
そう、今私の肩には1羽の鳥もどきが乗っているのだけど、今まで私以外の人に見えたことはない。
何故もどきなのかと言うと、この子の姿形は前世の母が描いた絵にそっくりなのだ。前世の母というのは割と色々と器用に熟してしまう性格だったのだが、どうも、絵の才能だけには恵まれなかったらしい。しかも、いくら調べてもこの世界でこの種の生き物の存在が、確認出来ていない……という不思議な生き物だからである。
「ピピッ!!」
「あっ、失礼いたしました。私はナタリー・ハーレイと申します。ナタリーとお呼び下さい。」
「えっ?あっ、こちらこそ失礼致しました。私は、ルナマリア・エディントンと申します。マリア…いえ、マリーとお呼び頂けますか?聖女様でいらっしゃいますよね?」
「はい。今日からこの学園に通うことになりました。宜しくお願い致します。」
「此方こそ宜しくお願い致します。ところで先程の…。」
ルナマリア様がさっきの話に戻そうとした時、私の前に立ち塞がるように男性の背中が現れた。
「何をしてるんだ?悪役令嬢!!」
「お久しぶりです。ルイベルト第二王子。お言葉ですが、悪役令嬢とはどういうことで御座いましょうか?何度も申し上げておりますように、私には心当たりが御座いません。」
「ハハハッ、そりゃあそうだろう。これからなるんだからな。」
「私はただ、聖女様にご挨拶させて頂いただけでございます。」
ルイベルト様ってこの国の第二王子じゃない。ルナマリア様のこと嫌いなんだ。そこはゲームと一緒なのね。
…って、ん?今何て言ってたっけ?確か…あれ?
「聖女殿、私が校内を案内しよう。悪役令嬢に何されるかわからんからな。」
えっ?第二王子と一緒なんて冗談じゃないわ。私、煩わしいこと嫌いなのよ。あぁでも、さっきの言葉について聞かないといけないのか。仕方ないなぁ。
「マリー様今日はこれで失礼します。ですが、後日お時間のある時にゆっくりお話させて頂けますか?私もお伺いしたいことがありますので。」
「聖女殿、何を言ってるんだ。こいつは悪役令嬢だぞ。何されるかわからん。そんなやつと話なんかしなくて良い。」
あぁもう、第二王子いちいち煩い。
「ルイベルト第二王子、私にお友達をつくる選択権は与えられないと仰るのですか?」
「あぁ、あのそうではなくて、聖女殿の身を案じて言ってるだけです。」
「私の身を案じて頂ける事には感謝申し上げます。ですが、私の自由を奪わないで頂けますか。」
「わ、わかりました。気をつけます。」
「では、マリー様失礼致します。」
「あっ、ありがとうございました。ナタリー様。」
さて、この王子、転生者かしら。あんまり頭良くなさそうだけど。
「ルイベルト第二王子、先程仰っていた『あくやくれいじょう』とは、どういうことでしょうか?」
「…ああ、聖女様なら話しても良いでしょう。実は私には、前世の記憶があります。この世界とは全く異なる世界で生きておりました。と申し上げても簡単に信じては戴けないと思いますが…。」
やっぱりね。私も転生者だから信じるけど、今は、内緒にしておこう。うんうんそれで?
「その世界では、魔法が無い変わりに機械が発達しておりました。そして、その中には、乙女ゲームという女の子が遊ぶ、おもちゃのような物がありました。」
うん、貴方も日本に住んでたのね。
「そのゲームの一つに、この世界がそっくりなのです。」
そっくりだけど何故かストーリーは、崩壊してるのよね。
「そして、ルナマリア・エディントン嬢は、そのゲームの物語の中で、私の婚約者の立場になり、聖女殿を苛め、挙げ句殺害しようとまで考えるのです。」
そうなのよね。でも、そんな人には見えなかったな。怪我してなかったからかな?
「だから私は、聖女殿をお守りする為に聖女殿の側に居ようと考えました。」
それって必要ないんじゃない?
「それって、マリー様は第二王子の婚約者では無いので、私を苛める理由が無いのでは?」
「……そうとも考えられるが、しかし…。」
「はぁ…。ルイベルト第二王子、決めつけるのはどうかと思います。とにかく、私はマリー様とお話ししたいです。宜しいですね。」
「…わかった。」
「ふぅ…。ではルイベルト第二王子、レセプションに行きましょうか。」
なんとかゲームイベントは回避出来たかしら。まあ、元々ストーリーは崩壊してるけど。式の後はクラス発表を見て、今日は終わりね。楽しい学園生活にしたいんだけどなぁ。
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