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アレクシス動く
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「やぁ、聖女ナタリー様、いらっしゃい。」
ルイベルト様に案内されて王宮の一室に通された。そこにいたのは、皇太子であるアレクシス様と側近のシリウス様。軽い調子でアレクシス様が声をかけてきた。私も挨拶を返すと椅子に座るよう促された。
「それで、どうやって抜け出して来たの?」
アレクシス様は、愉しげな笑顔で問いかけてきた。
「はい。ルイベルト様が、紅茶を注いだばかりのティーカップを落とされて火傷を為さいましたので、治療をしようとしましたが、魔力不足で治せないと嘘をつき、王宮に付き添う事をブライトル枢機卿に許可頂きました。残念ながら期限は、明日とその次の日のみしか頂けませんでした。ですので、直ぐにでも魔の森に向かいたいところではありますが、明日は、宰相のカングルフ侯爵様と奥様の施術の予定が入っております。」
「話が早くて助かるよ。シリー、彼等は呼んだ?」
「二人共、まもなくいらっしゃるかと。レオもこちらに向かってるはず…ああ、丁度三人共到着したようですね。」
シリウス様は、言いながら扉へ向かって歩き出した。ほぼ同時に扉を叩く音がして、そのままシリウス様が応対する。
「カングルフ侯爵様と奥様がお見えになりました。それからレオも間に合いました。」
「さて、じゃあ、時間もないし始めようか。聖女様、二人の施術はどれくらいの時間で出来る?」
「お二人合わせて二時間位かかってしまうかもしれません。」
「そう…レオは?」
「僕は二人合わせて一時間あれば終わるよ。」
ああ、やっぱり全然魔力が足らないのだわ。
「まあ、仕方ないか。ルナがいなければ私達もその程度だったろうからな。しかし、レオでは道は開かれなかった。」
私がチラリとルイベルト様の顔を見ると、彼は頷いた。ゲーム内で聖女が花を見つけた場所に、一度行ったということだろう。そして茨の道は見つからなかったのだ。
「何れにせよ、聖女様が行く気になっているなら、気の変らないうちに進めよう。だが、大部隊は動かせない。目立つからな。あくまでも秘密裏の任務と考えて欲しい。」
アレクシス様の言葉を受けて、シリウス様が手配を始めた。
「レオはカングルフ侯爵殿と侯爵夫人の施術を。」
「えっ?本当にして頂けるんですか?てっきり話を合わせるだけかと思ってました。いやー、得したなぁ。ありがとうございます。」
シリウス様がレオナルド様に指示を出すと、カングルフ候爵様が嬉しそうにお礼を言った。
「あれ?話を合わせるだけとは?」
カングルフ候爵様の言葉に私は疑念を抱き、つい尋ねてしまった。
「聖女様を教会という牢屋から出して差し上げようと思ってね。機転の効く聖女様で助かったよ。まぁ、施術は当然口止め料さ。」
アレクシス様は、いつもの笑みを浮かべたまま立ち上がる。
「ルイ、レオの準備が出来次第出発しろ。シリーも一緒に行ってもらうが、全体の指揮はシリーと相談しながらお前が取れ。聖女様は、道すがらレオに色々聞くと良いよ。」
「「承知致しました。」」
私とルイベルト様が、礼をしながら返事をすると、アレクシス様は扉へ向かって歩き出した。
「迷惑かけないように頑張らなくちゃね。」
2時間後、私は大きく深呼吸して王宮の転移陣の中に足を踏み入れた。着地点は、エディントン辺境伯家。目を覚まさない状態だけれども、マリー様に一目お会い出来るのだそうだ。ルイベルト様がお願いしておいてくれたらしい。気遣いは、素直に嬉しかった。
ルイベルト様に案内されて王宮の一室に通された。そこにいたのは、皇太子であるアレクシス様と側近のシリウス様。軽い調子でアレクシス様が声をかけてきた。私も挨拶を返すと椅子に座るよう促された。
「それで、どうやって抜け出して来たの?」
アレクシス様は、愉しげな笑顔で問いかけてきた。
「はい。ルイベルト様が、紅茶を注いだばかりのティーカップを落とされて火傷を為さいましたので、治療をしようとしましたが、魔力不足で治せないと嘘をつき、王宮に付き添う事をブライトル枢機卿に許可頂きました。残念ながら期限は、明日とその次の日のみしか頂けませんでした。ですので、直ぐにでも魔の森に向かいたいところではありますが、明日は、宰相のカングルフ侯爵様と奥様の施術の予定が入っております。」
「話が早くて助かるよ。シリー、彼等は呼んだ?」
「二人共、まもなくいらっしゃるかと。レオもこちらに向かってるはず…ああ、丁度三人共到着したようですね。」
シリウス様は、言いながら扉へ向かって歩き出した。ほぼ同時に扉を叩く音がして、そのままシリウス様が応対する。
「カングルフ侯爵様と奥様がお見えになりました。それからレオも間に合いました。」
「さて、じゃあ、時間もないし始めようか。聖女様、二人の施術はどれくらいの時間で出来る?」
「お二人合わせて二時間位かかってしまうかもしれません。」
「そう…レオは?」
「僕は二人合わせて一時間あれば終わるよ。」
ああ、やっぱり全然魔力が足らないのだわ。
「まあ、仕方ないか。ルナがいなければ私達もその程度だったろうからな。しかし、レオでは道は開かれなかった。」
私がチラリとルイベルト様の顔を見ると、彼は頷いた。ゲーム内で聖女が花を見つけた場所に、一度行ったということだろう。そして茨の道は見つからなかったのだ。
「何れにせよ、聖女様が行く気になっているなら、気の変らないうちに進めよう。だが、大部隊は動かせない。目立つからな。あくまでも秘密裏の任務と考えて欲しい。」
アレクシス様の言葉を受けて、シリウス様が手配を始めた。
「レオはカングルフ侯爵殿と侯爵夫人の施術を。」
「えっ?本当にして頂けるんですか?てっきり話を合わせるだけかと思ってました。いやー、得したなぁ。ありがとうございます。」
シリウス様がレオナルド様に指示を出すと、カングルフ候爵様が嬉しそうにお礼を言った。
「あれ?話を合わせるだけとは?」
カングルフ候爵様の言葉に私は疑念を抱き、つい尋ねてしまった。
「聖女様を教会という牢屋から出して差し上げようと思ってね。機転の効く聖女様で助かったよ。まぁ、施術は当然口止め料さ。」
アレクシス様は、いつもの笑みを浮かべたまま立ち上がる。
「ルイ、レオの準備が出来次第出発しろ。シリーも一緒に行ってもらうが、全体の指揮はシリーと相談しながらお前が取れ。聖女様は、道すがらレオに色々聞くと良いよ。」
「「承知致しました。」」
私とルイベルト様が、礼をしながら返事をすると、アレクシス様は扉へ向かって歩き出した。
「迷惑かけないように頑張らなくちゃね。」
2時間後、私は大きく深呼吸して王宮の転移陣の中に足を踏み入れた。着地点は、エディントン辺境伯家。目を覚まさない状態だけれども、マリー様に一目お会い出来るのだそうだ。ルイベルト様がお願いしておいてくれたらしい。気遣いは、素直に嬉しかった。
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