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意外な味方

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「ルイベルト様、話を合わせて頂いてありがとうございます。」

 なんとか教会を抜け出すことが出来た私は、王宮に向かう馬車の中で、ルイベルト様にお礼を述べた。この国は数年前から主要な場所には転移陣を設置しているのだが、教会には設置されていない。ブライトル枢機卿が頑なに拒否しているせいである。
「あ、あゝ、気にしないでくれ、どのみち一緒に来てもらいたかったのだ。」
「そういえば、お願いしたいことがあるって仰ってましたね。お話伺ってもよろしいですか?」
「実は…聖女様に私と一緒に魔の森に行って頂きたいのです。そして、ブルーローズを探したい。」
「えっ?」
 いやいや嫌々…は?魔の森?ブルーローズ……?
「あっ!!もしかして…?!」
「ご理解頂けましたか?聖女様。否、理那ちゃん…。」
「えっ……!!どうしてっ…?!」
「そして…ルナマリア嬢は、母親の真理さんなんだろう?」
「……。」
 ど、どうしよう?なんで知ってるの?まだ真理ちゃんと話してもいなのに。思わず動揺を見せてしまったわ。ここでバレるなんて…。どう誤魔化したらいいのよ…。
「警戒しなくても大丈夫だよ。だって俺は、透だもの。君の前世の幼馴染のね。」
「透…くん…?」
 頭が混乱して言葉が出て来ない。いろんな感情がごちゃ混ぜになって…。ただ何故か、目から涙が溢れて止まらない。
「あっ、ごめん。あーもう!!」
 私が何も言わないでいると、ルイベルト様は右手で頭の後ろを掻いたり、顔を両手で覆ったり、頭を振ったりと、落ち着き無く動いている。私は、目の前の動作に重なる前世の姿を思い出し、懐かしさに思わず吹き出してしまった。
「あーもう、びっくりした。そっか、透君なのね。良かったぁ。なんか…ほんと、良かった。」
 ホッとして、また涙が出て来る。もう、一人で頑張らなくても大丈夫かな?こんなに心強い味方が、二人もいるんだもの。
「あっ、でも、マリー様は、まだ目を覚ましてないって事よね。」
 ルイベルト様は、難しい顔をしてゆっくりと頷く。
「すまない。俺が邪魔をしなければ、早い時期に二人でゆっくり話が出来たろうに…。君達の事に気付いたのは、階段から落ちた時の状況を知ってからだったんだ。」
 哀しげに目を伏せて、ルイベルト様は謝ってくれた。
「ありがとうございます。でも、マリー様が目を覚ませば幾らでもお話出来ます。大丈夫、真理ちゃんは優しいから直ぐに恕してくれるわ。だから…絶対にブルーローズを持ち帰りましょう。」
 奇跡の花ブルーローズ。前世でも自然界には存在しない花だったはずだ。技術革新によって生まれ、花言葉も『不可能』から『奇跡』『夢叶う』などに変化した。ゲームアイテムとしても使われやすく、このゲームストーリー内では、意識を失った第一王子の為に聖女が見つけてくるアイテムであった。
 この現実世界では、第一王子のアレクシス様は病気とは無縁のようだから、きっと第二王子のルイベルト様とマリー様の行動が、ゲームストーリーと異なる状況を作り出しているんだわ。
 とにかくマリー様を目覚めさせなければ。馬車の中でルイベルト様の火傷の治療をしながら、私は、魔の森のゲームストーリーを思い出していた。
 
 
 
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