8 / 34
8・教会脱出します
しおりを挟む
「あーもう、どうにかならないのかしら?」
夏季休暇があと数日で終わるというのに、マリー様が目を覚ましたという話を聞かない。面会出来るように、外出許可の申請や手紙を送って貰っている筈なのだけど、何処からも何の返事もない。
「これは、何処かで止められてるわね。大体予測はつくけど」
『聖女』という大きな力を手に入れて、教会は、必死に懐を温めているんだからどうしようもない。私が逃げ出さないように、あの手この手と使っている。このまま無視するなら逃亡かしら?ふと、そんな事を考えた時、扉を叩く音がした。
「ナタリー様、いらっしゃいますか?ルイベルト第二王子様がナタリー様にお逢いしたいと仰って、謁見室の方にいらっしゃってます」
「わかりました。お会いします」
これはチャンスだわ。私は機会を逃さぬよう頭をフル回転させながら、謁見室に向かった。
部屋に入ると、ルイベルト様とナッシュ・ブライトル枢機卿が話をしていた。二人に挨拶をして枢機卿の隣のソファーに腰掛けると、ルイベルト様が、私に話しかけてきた。
「今日は、ナタリー様にお願いがあって参りました」
「お願い…ですか?」
「はい」
そこまで言うとルイベルト様は、目の前にある、紅茶の注がれたばかりのカップに手を伸ばした。
「イッ…!!」
「ガシャン!!」
ルイベルト様は、カップを取りそこねて落としてしまう。
「あっ、ルイベルト様大丈夫ですか?火傷……今、治療しますね。あっ……」
「どうしました?」
治癒魔法を行使しない私に、ルイベルト様は不思議そうに声をかける。
「申し訳ございません。先程まで患者様の治療を行っていたせいか、魔法が発動しなくて……どうしましょう、このままでは、火傷の痕が残ってしまうかもしれません」
「男ですし、それくらいは大じょ……」
「いけませんわ。取り敢えず水タオルで冷やして…ああ、どうしましょう。このまま傷痕を残して、聖女の力が大した事はないなどと噂が広まったりしたら……あっ、そうですわ、このまま私も王宮までついて行くのはどうでしょう?ブライトル様、明日の患者様は確か宰相のカングルフ侯爵様と奥様ではありませんでしたか?」
「えっ?あっ…ああ、そうだったな。だがしかし…今から急に王宮へ向かうなど…直ぐに戻るならまだしも…うーん……」
うぅー、もう一押し。
「ブライトル様、私、長期休暇中ずっと毎日患者様の手当てをして参りましたわ。少しは、他の方のようにお休みを頂きたいです。それに、王宮はまだ一度しか行ったこともないですし、見聞を広げたいですわ」
「しかし……」
ここでやっとルイベルト様が、口を挟んだ。
「そういうことなら是非お願いしたい。カングルフ侯爵殿も喜ぶだろうし、何より母上が、常日頃から聖女様に会いたがっている。私も火傷の治療をしてもらえると助かるのだが」
「はぁー、仕方ないですね。明日は王宮でカングルフ殿の治療を行うこと。その次の日は、一日だけ休日とする」
「ありがとうございます、ブライトル様。では、急いで支度をしてまいります」
急いで部屋を出ようとすると、ルイベルト様に静止される。
「聖女様、王宮に早馬を出したいから、慌てなくても大丈夫ですよ」
「ああ、そうでしたね。私ったら、ついはしゃぎ過ぎてしまいましたわ」
本当は、一刻も早くここを出たかったからなのだが、枢機卿に怪しまれては元も子もない。今日は機嫌が良くて助かったわ。これでなんとか外には出られる。私は、胸を撫で下ろした。
「そういえば、ルイベルト様のお願いって何だったのかしら?まぁ、後で聞けば良いわよね」
付き人が、私の部屋の外に出たのを見計らって、肩に乗ってきたパールに、私はお礼を告げる。
「パールありがとう。良いタイミングだったわ」
ルイベルト様が紅茶のカップを落としたのは、パールがルイベルト様の手の甲を、くちばしで突いたからだった。
私は、鼻歌を口ずさみながら支度を始めた。
夏季休暇があと数日で終わるというのに、マリー様が目を覚ましたという話を聞かない。面会出来るように、外出許可の申請や手紙を送って貰っている筈なのだけど、何処からも何の返事もない。
「これは、何処かで止められてるわね。大体予測はつくけど」
『聖女』という大きな力を手に入れて、教会は、必死に懐を温めているんだからどうしようもない。私が逃げ出さないように、あの手この手と使っている。このまま無視するなら逃亡かしら?ふと、そんな事を考えた時、扉を叩く音がした。
「ナタリー様、いらっしゃいますか?ルイベルト第二王子様がナタリー様にお逢いしたいと仰って、謁見室の方にいらっしゃってます」
「わかりました。お会いします」
これはチャンスだわ。私は機会を逃さぬよう頭をフル回転させながら、謁見室に向かった。
部屋に入ると、ルイベルト様とナッシュ・ブライトル枢機卿が話をしていた。二人に挨拶をして枢機卿の隣のソファーに腰掛けると、ルイベルト様が、私に話しかけてきた。
「今日は、ナタリー様にお願いがあって参りました」
「お願い…ですか?」
「はい」
そこまで言うとルイベルト様は、目の前にある、紅茶の注がれたばかりのカップに手を伸ばした。
「イッ…!!」
「ガシャン!!」
ルイベルト様は、カップを取りそこねて落としてしまう。
「あっ、ルイベルト様大丈夫ですか?火傷……今、治療しますね。あっ……」
「どうしました?」
治癒魔法を行使しない私に、ルイベルト様は不思議そうに声をかける。
「申し訳ございません。先程まで患者様の治療を行っていたせいか、魔法が発動しなくて……どうしましょう、このままでは、火傷の痕が残ってしまうかもしれません」
「男ですし、それくらいは大じょ……」
「いけませんわ。取り敢えず水タオルで冷やして…ああ、どうしましょう。このまま傷痕を残して、聖女の力が大した事はないなどと噂が広まったりしたら……あっ、そうですわ、このまま私も王宮までついて行くのはどうでしょう?ブライトル様、明日の患者様は確か宰相のカングルフ侯爵様と奥様ではありませんでしたか?」
「えっ?あっ…ああ、そうだったな。だがしかし…今から急に王宮へ向かうなど…直ぐに戻るならまだしも…うーん……」
うぅー、もう一押し。
「ブライトル様、私、長期休暇中ずっと毎日患者様の手当てをして参りましたわ。少しは、他の方のようにお休みを頂きたいです。それに、王宮はまだ一度しか行ったこともないですし、見聞を広げたいですわ」
「しかし……」
ここでやっとルイベルト様が、口を挟んだ。
「そういうことなら是非お願いしたい。カングルフ侯爵殿も喜ぶだろうし、何より母上が、常日頃から聖女様に会いたがっている。私も火傷の治療をしてもらえると助かるのだが」
「はぁー、仕方ないですね。明日は王宮でカングルフ殿の治療を行うこと。その次の日は、一日だけ休日とする」
「ありがとうございます、ブライトル様。では、急いで支度をしてまいります」
急いで部屋を出ようとすると、ルイベルト様に静止される。
「聖女様、王宮に早馬を出したいから、慌てなくても大丈夫ですよ」
「ああ、そうでしたね。私ったら、ついはしゃぎ過ぎてしまいましたわ」
本当は、一刻も早くここを出たかったからなのだが、枢機卿に怪しまれては元も子もない。今日は機嫌が良くて助かったわ。これでなんとか外には出られる。私は、胸を撫で下ろした。
「そういえば、ルイベルト様のお願いって何だったのかしら?まぁ、後で聞けば良いわよね」
付き人が、私の部屋の外に出たのを見計らって、肩に乗ってきたパールに、私はお礼を告げる。
「パールありがとう。良いタイミングだったわ」
ルイベルト様が紅茶のカップを落としたのは、パールがルイベルト様の手の甲を、くちばしで突いたからだった。
私は、鼻歌を口ずさみながら支度を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる