Reunion1ー悪役令嬢(母)は私が救います

叶多 桜

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8・教会脱出します

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「あーもう、どうにかならないのかしら?」

 夏季休暇があと数日で終わるというのに、マリー様が目を覚ましたという話を聞かない。面会出来るように、外出許可の申請や手紙を送って貰っている筈なのだけど、何処からも何の返事もない。
 
「これは、何処かで止められてるわね。大体予測はつくけど」
 
『聖女』という大きな力を手に入れて、教会は、必死に懐を温めているんだからどうしようもない。私が逃げ出さないように、あの手この手と使っている。このまま無視するなら逃亡かしら?ふと、そんな事を考えた時、扉を叩く音がした。
 
「ナタリー様、いらっしゃいますか?ルイベルト第二王子様がナタリー様にお逢いしたいと仰って、謁見室の方にいらっしゃってます」
「わかりました。お会いします」
 
 これはチャンスだわ。私は機会を逃さぬよう頭をフル回転させながら、謁見室に向かった。
 部屋に入ると、ルイベルト様とナッシュ・ブライトル枢機卿が話をしていた。二人に挨拶をして枢機卿の隣のソファーに腰掛けると、ルイベルト様が、私に話しかけてきた。
 
「今日は、ナタリー様にお願いがあって参りました」
「お願い…ですか?」
「はい」
 
 そこまで言うとルイベルト様は、目の前にある、紅茶の注がれたばかりのカップに手を伸ばした。
 
「イッ…!!」
「ガシャン!!」
 
 ルイベルト様は、カップを取りそこねて落としてしまう。
 
「あっ、ルイベルト様大丈夫ですか?火傷……今、治療しますね。あっ……」
「どうしました?」
 
 治癒魔法を行使しない私に、ルイベルト様は不思議そうに声をかける。
 
「申し訳ございません。先程まで患者様の治療を行っていたせいか、魔法が発動しなくて……どうしましょう、このままでは、火傷の痕が残ってしまうかもしれません」
「男ですし、それくらいは大じょ……」
「いけませんわ。取り敢えず水タオルで冷やして…ああ、どうしましょう。このまま傷痕を残して、聖女の力が大した事はないなどと噂が広まったりしたら……あっ、そうですわ、このまま私も王宮までついて行くのはどうでしょう?ブライトル様、明日の患者様は確か宰相のカングルフ侯爵様と奥様ではありませんでしたか?」
「えっ?あっ…ああ、そうだったな。だがしかし…今から急に王宮へ向かうなど…直ぐに戻るならまだしも…うーん……」
 
 うぅー、もう一押し。
 
「ブライトル様、私、長期休暇中ずっと毎日患者様の手当てをして参りましたわ。少しは、他の方のようにお休みを頂きたいです。それに、王宮はまだ一度しか行ったこともないですし、見聞を広げたいですわ」
「しかし……」
 
 ここでやっとルイベルト様が、口を挟んだ。
 
「そういうことなら是非お願いしたい。カングルフ侯爵殿も喜ぶだろうし、何より母上が、常日頃から聖女様に会いたがっている。私も火傷の治療をしてもらえると助かるのだが」
「はぁー、仕方ないですね。明日は王宮でカングルフ殿の治療を行うこと。その次の日は、一日だけ休日とする」
「ありがとうございます、ブライトル様。では、急いで支度をしてまいります」
 
 急いで部屋を出ようとすると、ルイベルト様に静止される。
 
「聖女様、王宮に早馬を出したいから、慌てなくても大丈夫ですよ」
「ああ、そうでしたね。私ったら、ついはしゃぎ過ぎてしまいましたわ」
 
 本当は、一刻も早くここを出たかったからなのだが、枢機卿に怪しまれては元も子もない。今日は機嫌が良くて助かったわ。これでなんとか外には出られる。私は、胸を撫で下ろした。
 
「そういえば、ルイベルト様のお願いって何だったのかしら?まぁ、後で聞けば良いわよね」

 付き人が、私の部屋の外に出たのを見計らって、肩に乗ってきたパールに、私はお礼を告げる。

「パールありがとう。良いタイミングだったわ」

 ルイベルト様が紅茶のカップを落としたのは、パールがルイベルト様の手の甲を、くちばしで突いたからだった。
 私は、鼻歌を口ずさみながら支度を始めた。
 
 
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