Reunion1ー悪役令嬢(母)は私が救います

叶多 桜

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29・フレイシア・ダーチェンサー公爵令嬢

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「ダーチェンサー夫人のお加減はいかがかな?」

 私達は、予定通りの時刻にダーチェンサー公爵家の屋敷に到着した。豪勢な門を潜り玄関に到着すると、フレイシア様が出迎えてくれた。挨拶をすませると応接室に案内され、メイドさんが紅茶を入れてくれた。
 私は馬車の中で、フレイシア様がどんな性格なのか尋ねていた。幼い頃は志の高い真っ直ぐな方だったらしいのだが、学園に入ってからは、まるで別人のように、周囲と距離を置き、目立つ事をしない性格になっていたらしい。一体何があったのだろう?
 ゲームでは、幼い頃の性格そのままで……いや、寧ろ酷くなっていたと思う。何せ、悪役令嬢だったのだから。

 紅茶を一口飲んで。アレクシス様が、公爵夫人の体調をフレイシア様に尋ねた。
 
「お母様は……」
 
 下を向いていたフレイシア様が、両手を強く握り締め、言葉を絞り出すように話し始めた。
 
「一週間程前に急に倒れて。お医者様からは、ここ数日が峠だろうと言われました」
 
 私は、胸が締め付けられる思いになった。続けて、アレクシス様が問う。
 
「原因は?」
「わからないと。元々病弱な事も有り、床に伏せることも度々あったのですが……私の休暇が終わって、学園に戻って間もなくしてから、倒れたとの連絡が来ました。お父様は、お母様の事を凄く心配しているのですが、周囲に迷惑をかける事を嫌うようなプライドの高い性格なので、国王様に尋ねられるまで言わないでおりました」
 
 私は、我慢できずに立ち上がって言ってしまった。
 
「公爵夫人はどちらにいらっしゃいますか?」
 
 フレイシア様は、弾かれるように顔を上げるが、直ぐにまた下を向いてしまう。
 
「お医者様に、他の方に治療は無理なので、ストレスをかけるような事はしないようにと言われております」
 
 アレクシス様とマリー様が、揃って怪訝な表情を浮かべる。
 
「では、私の命令だ。聖女に確認させろ。それと、その医者から薬を貰っているな。それを見せろ」
 
 フレイシア様は、アレクシス様の態度が急に威圧的になった事に驚きながら、私を公爵夫人の元に案内してくれた。
 
「失礼致します」
 
 私は急いで、両手を公爵夫人の体の上に翳して、診察を始めた。
 蓄積するタイプの毒?……と、大元の原因は多分これかな?うん、私なら治せる。
 パールは、国王様の許可を頂いてから、魔力供給をマリー様にお願いしている。だから、いつものように魔力量を気にする必要は無い。
 私は、一旦手を下ろし、後ろにいるフレイシア様に説明を始めた。
 
「身体に毒が蓄積されています」
「毒……?何故……」
「それから、御婦人は以前、何かの事故にあっていませんか?」
「あ、ありました。若い頃、馬から落ちたと聞いた事があります。でも、それ程大きい事故とは言っていなかったのですが……」
「その時、無理してしまったのかな?ほんのちょっと骨のズレがあるみたいです。それが、その周囲に悪影響を及ぼして体調が悪かったのだと思います。取り敢えず、早急に必要なところから治療に当たりますね」
 
 私は再び夫人に向き直り、魔法を発動させた。
 お昼をまわった頃に治療が終わり、容態が落ち着いたので、私とフレイシア様は応接室に戻り、アレクシス様に治療の結果を報告した。
 
「毒は、耐性が有ったほうが良いかと思い、ほんの少しだけ残しています。後は数回に分けての治療が必要ですが、命に別状はありません」
「予測通りだな。後の治療はレオでも出来るか?」
「大丈夫だと思います」
 
 アレクシス様は、頷いて、フレイシア様に向き直る。
 
「さて、フレイシア。君の周りで起こっている事を全て話して貰おうか」
「……はい」
 
 フレイシア様は、ひと息吐くと、ゆっくりと話し始めた。
 
「実は……お母様を診察していたお医者様は、隣国の王から推薦された方です」
 
 そこまで聞いて、全員がため息をついた。フレイシア様は、話を続ける。
 
「初めは私達も警戒しておりました。でも半年くらいの間は、お母様の体調の良い日が増えておりましたので、徐々に信用するように。そして、その時期くらいからお医者様が、時々、薬を変えようと言うようになりました。薬を変えるたび、それに合わせてお母様の体調も好不調を繰り返すように。お医者様をお断りしたかったのですが、元々診療代やお薬代等で借金をするようになっていたので、お金は後でも良いと言われると断れませんでした。
 お父様に借金がある事を知ると、隣国の国王は、私と引き換えに借金を肩代わりすると言ってきました。流石にお父様は怒り、お医者も断ろうとしました。ですが……今度はお医者が、今までの立替代金を直ぐに一括で払えと言い出しました」
 
 マリー様がこめかみを指でなぞり始めた。怒りを抑えている時の癖だ。
 
「もしかして、金が無いから転移陣を断っているのか?」
 
 アレクシス様が質問する。
 
「それもあるかも知れませんが、それは、隣国から責められて落とされた時に、転移陣から直ぐに国王様の下へ攻め込まれるのを防ぐ為だと思います。正直、今はこの国の中で、この領地が一番戦力が弱いかと」
 
 この言葉には、アレクシス様も両手で頭を抱えていた。
 
「私は……男児に生まれたかったです」
 
 あ……それで、ゲームではあんな性格だったのかしら。ああ、そういえば。
 
「フレイシア様、先程隣国の国王から、人質にされそうだったみたいな話、してましたよね?会ったことあるんですか?」
「はい、一度だけ。お父様の顔色が悪かった時に、私が無理を言って付いていきました。後になって随分後悔しましたよ。ですが、今は良かったと思っています。その時、遊び相手にと、皇太子様を紹介されましたから。そして、今留学している皇太子様は。偽者だとわかったので」
「「「「なーにーっ!!!!」」」」
 
 思わず、話を聞いていた全員が叫んだ。そして、フレイシア様は私達に……今日初めての笑顔を見せた。 
  
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