オープン・ステージ

平野 絵梨佳

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 約束は午後六時。
 私はプレハブ小屋の飾り付けを一旦やめて、約束の時間に間に合うように、ケーキ屋まで誕生日ケーキを取りに行った。
「佳くん、お待たせ!」
「お帰り。こっちはもう大丈夫だよ」
 飾り付けとはいっても、数時間では高が知れていた。折り紙を細く切り、それを輪にして繋いだものを、入り口付近や窓枠に貼り付けたくらいだ。それでも何もしないよりは華やかに見える。子供の誕生日ではないのだし、俊太ならあまり気にしないだろうとも思った。
「あとは、これで準備万端だね」
「うん」
 私は佳くんからクラッカーを受け取った。これを入り口に向かって構えて待つのだ。
「まだ少し時間があるね。でも俊太のことだから早めに来るかな? なんかわくわくする。今まで俊太の誕生日に、こうやってちゃんとお祝いした事なんてなかったからさ」
「そうなんだ。……螢ちゃんも、俊太に祝われた事はないの?」
「ないよ。適当にお菓子とか貰ったことはあるけどね。まあ、貰うとはいっても、中身を一つだけとかだけど」
「そうか……。ね、螢ちゃんの誕生日も祝わせてね」
「うん。佳くんの誕生日もやろうね」
 私たちは笑い合う。何となく照れくさかった。
「ん……!」
 その時、佳くんが、しっ、と人差し指を自分の口元へ持っていった。
 足早な足音だ。
「俊太だ。本当に早めに来たね」
「クラッカー! クラッカー!」
 私たちはささやき声で素早く動く。そして、入り口へ向かってクラッカーを構えた。
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