魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記

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準備期間

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 じりじりとする日が続いた。それを耐えた俺は自分を誇っていいと思う。
 その間に俺の偵察能力は向上し、学力も少しだけ伸びた。

「見てくれ、初めて小テストで平均がとれたぞ」
 俺はイーサンに自慢した。

「うん、すごいね。頑張ったね」
 イーサンは全然心のこもらない言葉で俺をほめた。

「ローレンスが取れなかった平均点なんだぞ。もっと褒めてくれ」
 イーサンはおざなりに俺の頭をなでてくれた。
 俺はむっとした。俺は子供じゃないんだ。ご褒美とかないのか? お菓子とか、果物とか。

「そんなことよりも簡易探知機で仕掛けたやつの位置をあぶりだして、どうするつもりなんだ?」

「ぶん殴る」

「……それで、また謹慎か。君はもう少し考えたほうがいいんじゃないか」

 イーサンの言うことはもっともだ。さすがの俺もその先をちゃんと考えていた。

「ようするに、あいつらが二度とそんなことができないようにすればいいんだろ」

「そうだけど」

「だから、魔法返しだよ」

「それは、僕達には無理……」

「同じ魔法を返すとはいっていない。呪われたと思わせればいいんだろ」

 俺は戦士になるための学校での行事を思い出す。俗にいう肝試しという奴だ。
 入ったばかりの新入生を夜間訓練と称して森に誘い出し上級生が脅しまくるという行事で、戦士としての洗礼の一環だった。脅された時は本当に怖かった。事前に兄貴からこっそりと話を聞いていたから何とか最後まで耐えたけれど、何度戻ろうと思ったかわからない。

 あれを仕掛けてやればいいのだ。

 そのための準備は続けている。なかなか材料が集まらないけれど、時間はある。相手は少人数だろう。居場所さえわかれば、追い込める自信はあった。

 準備に明け暮れる日々が続いた。誰もいない部屋や倉庫、ゴミ箱まで考えられる場所すべてを確かめた。
 準備、準備、準備、戦のすべてはそれにかかっている、と親父が言っていた。

 俺は魔法で戦うことはできないけれど、近接攻撃は得意だ。
 それにこの前の喧嘩からも分かったけれど、たぶん相手も魔法が使えない。魔法というものは思いのほか発動が難しいもののようだ。おそらくだけど魔法を使って攻撃してくるのは上級生だけ、俺に突っかかってくるような雑魚には無理だ。相手が使っているのも魔道具の類、それは専門家のリーフに判断してもらう。
                                                                                                     
 思い切り怖がらせてやる。悪夢の中で思い出すほどの恐怖を与えてやる。

 俺は武器の試作を何回も試す。
 夢中になっていたので、部屋に入りかけたイーサンに気が付くのが遅れた。

「あ、危ない」

 本当に危なかった。危うくイーサンの頭蓋骨を粉々にするところだった。

「ななな、、、、」
 イーサンは入り口で固まっている。

「気を付けてくれ。試射しているところだから」
 俺はお手製スリングを振り回した。
「よかった。まだ調整中で」正確に飛んでいたら、イーサンは危なかった。

「きみは、一体ここで……部屋の中で何をやってるんだ?」

「正確に灯りを消さないといけないからな」
 俺は積まれた石を一つ取り上げた。
「手で投げるのではどうしても距離が出ないから」

「だからといって、そんなもの、作るなよ。なぜここで……」

「外でもやるつもりだが、まだ試作段階でね」

「はぁ」イーサンは大きく息をついた。
「頼むからこれ以上評判を下げることはやめてくれよ。ただでさえ、君は要注意人物で、無駄に目立っているんだ」

「なんだ? また、なにか噂が出ているのか?」

 イーサンは緩く首を振った。

「君は今、ふさぎ込んで、授業と食事以外は外に出ていないことになっている。みんな、そう思ってくれている」
 ふうむ。外を出歩いていることはばれていないのか。人目に付きにくい道を探してきたことが一定の効果を上げているようだ。

「授業に真面目に出席しているのが不気味だという人たちもいるけれど、大概君と顔を合わせなくてうれしいという人ばかりだね。頼むから、本当に部屋にいてほしい。そういう噂を流した僕の立場もわかってほしいな」

「第二王子のほうの噂は?」
 肝心の敵の情報が欲しい。

「ああ。それについては面白い話を聞いた。でも、これを君にいうと……」

「なんだよ」

「絶対、先走らないって約束できるか?」

「だから、なに?」

 イーサンは俺が勝手な行動をしないこと、必ずイーサンに相談することを約束させてから話し始めた。

「第二王子フェリクス様のサロンにね、君の部屋が残っているそうだ」

「ローレンスの部屋が? 中がぐちゃぐちゃにされているんじゃないのか?」
 あの変態王子が八つ当たり気味に家具を壊しまわっている様子が頭に浮かんだ。

「いや、君が出ていったときのまま。誰もそこに立ち入ってはいけないと命令されたらしい」

 俺は立ち上がった。

「よし、行くか」

「だから、」
 イーサンが俺の腕をつかんだ。
「だから、いいたくなかったんだ。やめろ。人の話を聞け」

 イーサンは俺を座らせてから話を続けた。

「いいか、あの棟は特別なんだ。王族方のお住まいになる場所は神殿とは別の結界が張ってある。王室所属の魔法使いたちが侵入者に備えて対策をしているんだ」

「ああ、どおりで」俺はうなずいた。「あそこにいったらピリピリするから、探索を後回しにしていたんだよ」

「もちろん普通の警備も厳重だ。屈強な騎士が守っている。特に暴行事件の後には」

「いい武器を持っている奴らだな。生徒にしてはガタイがいいと思ってたよ」

「最近ではあそこに入るためには許可証が必要になって、それがないと建物に入ることはできない」

「ふむ、一枚誰かから奪って……しないよ。入りません。行かないから」
 ものすごい顔をされて、俺は手を振った。
「あそこの棟は行かない。それでいいだろ」

「……よかったよ。思いとどまってくれて」
 イーサンはげっそりとした顔をした。

 結界か。今は思いとどまるしかないな。
 俺は仕方なくローレンスの部屋探索は後回しにすることにした。
 魔法使いの結界は怖い。それは叩き込まれた知識だ。姉さんにお仕置きで入れられた結界の中は忘れられない。泣いてもわめいても、出してもらえかった。ひどい思い出だ。

 ただ結界を破る方法はある。結界やぶり専門の術者もいるくらいだからな。ただ俺にはまだできないというだけだ。俺にあと二年、いや、一年の時間があったら、あるいは精霊を呼び出すことができたら。

 俺は日課に精霊を呼び出す訓練も追加した。方法はあっているはずなのだが、出てくる気配すらない。

 そうこうしているうちに、また休みの日が来て、俺たちは奉仕に駆り出されて、ようやくリーフが魔力感知器を持ってきた。
 長かった。
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