魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記

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秘密の図書館

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「すごくいい場所を見つけたんだ」
 俺はリーフに報告した。
「静かで、本がたくさんあって誰にも邪魔されない場所だぞ」

「……まさか、神殿の図書館じゃないですよね」
 リーフは俺の言葉を疑っている。
「それとも、また窓枠を伝って図書館に入るなんてことは……」

「違う、違う。そんな危険なところじゃないよ」

 俺が果樹園のほうに行くので、ますますリーフの表情が険しくなった。

「農作業の小屋とか、家畜小屋とか、そんなところですか?」

「まぁ、来てみろって」

 猫に教えられた道をたどって、俺はリーフを案内した。
 暗闇を通ることに躊躇していたリーフだったけれど、膨大な本の山を見た瞬間、喜びの声を上げる。

「すごい。この本。これ、本物ですよね」
 リーフは目の前の本の表紙を調べ始めた。
「見たこともない本ばかりだ。図書館にもない。うわぁ」

 あまりに夢中になりすぎて、案内した俺のことなど忘れてしまったみたいだ。

「まさか、いや、でも……」
 しばらくしてからようやく我に返ったみたいだった。

「ラークさん、ここ、どうやって見つけたんですか」
 すごいとか、素晴らしいとか、満面の笑顔で連発する。

「うん、猫に案内してもらったんだよ。猫」

 俺はリーフの笑顔が戻ってほっとした。しおれた青菜みたいになっていたから、心配していたんだ。

「猫に?」

「うん。神殿の猫だと思う。白くてかわいいんだ」

「変わった友達ですね」そう言いつつリーフは本を開いて中を斜め読みしている。

「うん。あ、どの本でも読んでいいみたいだよ。許可してもらったから」

「誰に?」

「ここを使っている神官。名前は知らないけど、時々見かける」

「ふーん」
 リーフの返事はどこか上の空だ。

 彼が本に夢中になっている間、俺も本の山を散策してみた。本の中身には興味はないが、面白いものが隠れているかもしれない。

「あ、こんなところに隠れているんだ」

 猫が机の下にうずくまっていた。寝ているようだ。起こすのも悪いので、そのまま他の物を探す。奥のほうには奇妙な魔道具が乱雑に置かれている場所があった。その横には、乾いた絵の具のついた筆や書きかけの絵。布のかけられた画架をめくると奇妙に心惹かれる、でも奇妙な絵があらわれる。変わった画風だと思う。

 ふと我に返るとだいぶ時間がたっているようだった。

「リーフ、戻ろう。リーフ?」
 本に夢中になっていたらしいリーフも我に返って顔を上げる。
「そろそろ日が落ちてきたみたいだ。また来よう」

 リーフは名残惜しそうに、本を置いて立ち上がる。

 帰り道、珍しくリーフは多弁だった。

「あの本、みました? あそこは宝庫ですよ。図書館にも置いていないような時代の資料がたくさんありましたよ」

 俺は適当にうなずく。リーフの話す古い時代の本に関してはさっぱりわからないからだ。ただ、彼が喜んでいるのを感じて俺も嬉しくなっていた。

「今度、兄さんも連れて行っていいですか?」
 リーフが聞く。
「あそこ、兄さんの好きそうな本もあるんですよ」

「いいんじゃない?友達ならいいって言われたからね」

 本屋のローレンスも一応友達のうちに入るのだろうか? あと、友達といえばイーサンだけど、彼はあの部屋を喜ぶだろうか。

 誰も知らない部屋を自分たちだけで独占できるなんて、考えただけでもうれしくなる。

 食堂の入り口あたりでイーサンを見かけて俺は手を振って彼を呼んだ。

「おい、イーサン。すごいものを見せてやるよ」

「ラーク、こんなところにいた」

 イーサンは俺を探していたらしい。戸惑うリーフへの説明もそこそこに俺を校長先生のところに連れていくのだという。

「なんで? 何の用事なのかな?」

 今さら、正体がばれて退学になるとか? 第二王子を殴った時にも呼び出しがなかったのに? 急ぎ足で俺の手を引くイーサンに悪い想像が膨らむ。

「また、君は何かやらかしたのか?」
 イーサンの緊張が手から伝わってくる。

「まさか。最近はおとなしくしている。知っているだろう?」

「でも、今日、また授業をさぼっただろ」

「いや、あれは……」
 秘密の図書館に長居しすぎただけだ。しかし、それをイーサンに説明するには人目がありすぎる。

 イーサンは、初めて俺がこの学校に足を踏み入れた時のように校長室に案内した。

 俺が扉をたたくと、すぐに扉が開いた。

 中には前のときと同じく、校長とクソ神官、それに大柄な赤い髪の男……

 うん?

 俺は幻覚を見たのかと思った。北の学校に通っているはずの兄貴の姿が見えるんだが。幻覚かな?

 もう一度、扉を開けて入りなおしたほうがいいだろうか。

「ちょっと医務室に行ってきます。めまいがして……僕は間違った部屋に入ったようです」

「いや、ラーク、驚かなくてもいい」ドネイ先生が背を向けた俺を止めた。
「ちゃんとあっています。ラーク、こちらはコンラート王家のアルフィン殿です。王国からの留学生としてこちらに滞在されるのですよ」

 あー、情報が多すぎて俺の頭では理解できないのだが。
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