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15話 虚無より来たるものと、“彼女”の覚醒
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天を裂いた闇は、音もなく世界を飲み込もうとしていた。
空に広がった“亀裂”からは、禍々しい気配が次々と漏れ出し、まるで異界がこちらを覗いているかのようだった。
「これは……っ!」
アリアが剣を抜き、リーナが即座に詠唱を始める。
ナオは手にしていた《創界の書》をしっかりと抱え、周囲に展開する防御魔法を強化した。
――そのとき、誰もが想像していなかった存在が、亀裂の向こう側から姿を現した。
それは“人”の形をしていた。
しかし、肌は灰色、瞳は赤く、体からは明確な“人ならざる”波動が溢れ出している。
その顔を見た瞬間、ナオの脳裏にある記憶が激しく揺れ動いた。
「……うそ、だろ……」
それは、ナオが前世――日本にいたころの、あの“幼なじみ”と瓜二つだった。
「ナ、ナオ……あれ、って……!」
アリアの声が震える。
リーナも魔力の集中を乱し、驚愕に目を見開いていた。
しかし、ナオはゆっくりと一歩、前へ踏み出した。
「……ユイ、なのか?」
灰色の存在が微かに顔を上げる。その瞳に、かすかに“涙”のような光が宿った。
「……ナオ……わたし……」
彼女の声は確かに、あの日、バス停の前で笑っていた“ユイ”の声だった。
けれど、彼女の背中には黒い羽が生えていた。
そしてその羽から漏れ出す“虚無”は、神々の聖域であるはずの天空神殿さえ、ゆっくりと蝕んでいた。
数刻前――
“虚無界”。それは、世界と世界の狭間、存在が崩壊する前の“空白地帯”。
そこで、ユイは目覚めていた。
交通事故に巻き込まれたナオのすぐ後――彼女もまた、命を落としていた。
しかし転生を許されず、彼女の魂は神々の争いに巻き込まれ、“器”として取り込まれたのだった。
神々が残した“封印”の綻びを修復するための、“生贄”として。
「……ナオくん、どこ……?」
何もない虚無の中、声も届かず、身体もなく、ただ“意識”だけがさまよう。
そのとき、彼女の中にあった想いが反転する。
「助けてくれないの……?」
その“裏返しの願い”が、虚無を形にし、力となり、彼女を“災厄”の媒介へと変えていった。
そして今、ようやくナオと再会した瞬間――
彼女の心に“記憶”と“想い”が、同時に蘇る。
「ナオ……あたし、ナオに……会いたかった……」
泣きながら呟いたその声に、ナオの胸が締めつけられた。
「俺もだ……ユイ。ずっと、探してた……」
だが、次の瞬間。彼女の背から“黒い触手”が暴走し、周囲の空間を引き裂こうとする。
「……っ、ユイ、今のままじゃ……!」
神々の残した《創界の書》が光を放ち、ナオの中に直接“選択”が流れ込んでくる。
――この存在を封印すれば、災厄は防げる。
――だが彼女の“魂”は完全に失われる。
「……そんなの、選べるわけねぇだろ……っ!」
ナオは、誰にも見えない何かに叫んだ。
神がいない世界で、神のふりをして試練を押しつけるこの理不尽な仕組みに、怒りをぶつけた。
すると、ユイの胸元に淡い光が灯った。
――それは、ナオが前世で贈った、小さなペンダントの欠片。
「ナオ……覚えててくれて、ありがとう……」
ユイの瞳が、確かに“人間”の色を取り戻した。
同時に、黒い虚無の波動がゆっくりと退いていく。
「……もう、大丈夫。あたし、ナオがいるなら……人間に、戻れる気がする」
ナオは静かに微笑んで、彼女の手を取った。
「戻ろう。俺たちは……まだ、終わってない」
そのとき、天空神殿の奥に眠っていた最後の封印が解除された。
世界の理に隠された“第七の神”――忘れられた神、“終焉(しゅうえん)の神”の意志が、ついに目を覚ました。
それは、ナオとユイを見つめながら、言葉なき声を送ってくる。
「お前たちは、“抗った”。その選択こそ、唯一の希望」
そして、世界が再び震えた。
空に広がった“亀裂”からは、禍々しい気配が次々と漏れ出し、まるで異界がこちらを覗いているかのようだった。
「これは……っ!」
アリアが剣を抜き、リーナが即座に詠唱を始める。
ナオは手にしていた《創界の書》をしっかりと抱え、周囲に展開する防御魔法を強化した。
――そのとき、誰もが想像していなかった存在が、亀裂の向こう側から姿を現した。
それは“人”の形をしていた。
しかし、肌は灰色、瞳は赤く、体からは明確な“人ならざる”波動が溢れ出している。
その顔を見た瞬間、ナオの脳裏にある記憶が激しく揺れ動いた。
「……うそ、だろ……」
それは、ナオが前世――日本にいたころの、あの“幼なじみ”と瓜二つだった。
「ナ、ナオ……あれ、って……!」
アリアの声が震える。
リーナも魔力の集中を乱し、驚愕に目を見開いていた。
しかし、ナオはゆっくりと一歩、前へ踏み出した。
「……ユイ、なのか?」
灰色の存在が微かに顔を上げる。その瞳に、かすかに“涙”のような光が宿った。
「……ナオ……わたし……」
彼女の声は確かに、あの日、バス停の前で笑っていた“ユイ”の声だった。
けれど、彼女の背中には黒い羽が生えていた。
そしてその羽から漏れ出す“虚無”は、神々の聖域であるはずの天空神殿さえ、ゆっくりと蝕んでいた。
数刻前――
“虚無界”。それは、世界と世界の狭間、存在が崩壊する前の“空白地帯”。
そこで、ユイは目覚めていた。
交通事故に巻き込まれたナオのすぐ後――彼女もまた、命を落としていた。
しかし転生を許されず、彼女の魂は神々の争いに巻き込まれ、“器”として取り込まれたのだった。
神々が残した“封印”の綻びを修復するための、“生贄”として。
「……ナオくん、どこ……?」
何もない虚無の中、声も届かず、身体もなく、ただ“意識”だけがさまよう。
そのとき、彼女の中にあった想いが反転する。
「助けてくれないの……?」
その“裏返しの願い”が、虚無を形にし、力となり、彼女を“災厄”の媒介へと変えていった。
そして今、ようやくナオと再会した瞬間――
彼女の心に“記憶”と“想い”が、同時に蘇る。
「ナオ……あたし、ナオに……会いたかった……」
泣きながら呟いたその声に、ナオの胸が締めつけられた。
「俺もだ……ユイ。ずっと、探してた……」
だが、次の瞬間。彼女の背から“黒い触手”が暴走し、周囲の空間を引き裂こうとする。
「……っ、ユイ、今のままじゃ……!」
神々の残した《創界の書》が光を放ち、ナオの中に直接“選択”が流れ込んでくる。
――この存在を封印すれば、災厄は防げる。
――だが彼女の“魂”は完全に失われる。
「……そんなの、選べるわけねぇだろ……っ!」
ナオは、誰にも見えない何かに叫んだ。
神がいない世界で、神のふりをして試練を押しつけるこの理不尽な仕組みに、怒りをぶつけた。
すると、ユイの胸元に淡い光が灯った。
――それは、ナオが前世で贈った、小さなペンダントの欠片。
「ナオ……覚えててくれて、ありがとう……」
ユイの瞳が、確かに“人間”の色を取り戻した。
同時に、黒い虚無の波動がゆっくりと退いていく。
「……もう、大丈夫。あたし、ナオがいるなら……人間に、戻れる気がする」
ナオは静かに微笑んで、彼女の手を取った。
「戻ろう。俺たちは……まだ、終わってない」
そのとき、天空神殿の奥に眠っていた最後の封印が解除された。
世界の理に隠された“第七の神”――忘れられた神、“終焉(しゅうえん)の神”の意志が、ついに目を覚ました。
それは、ナオとユイを見つめながら、言葉なき声を送ってくる。
「お前たちは、“抗った”。その選択こそ、唯一の希望」
そして、世界が再び震えた。
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