『事故で死んだ俺は、異世界で成り上がる ~君ともう一度出会うために~』

こうた

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14話 語られざる過去と、眠る神々の意思

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 王都を包んだ崩壊の魔導は消え去り、まるで何事もなかったかのように朝の光が降り注いでいた。

 だが、その穏やかな光景の裏で、ナオたちは“世界の根幹”に触れる扉の前に立たされていた。



 カインが倒れたあと、彼の持っていた黒い魔導書《大災厄の書》の断片は蒼く発光し、霧のように空へ消えていった。

「これ……完全に消えた?」

 アリアが警戒しながらも問いかける。

 ナオはその残光を見つめながら、静かに首を振った。

「いや。消えたんじゃない。あれは“帰った”んだ……本来あるべき場所に」

 カインの魂に共鳴するように現れたその書の力。
 それはただの魔法書などではない。世界の“深層”に関わる、神々の遺した禁忌の記録だった。

「ナオ、これを……」

 リーナが、カインの懐にあった小さな金属片を差し出す。
 それは不思議な形状をした“鍵”だった。中央に複雑なルーンが刻まれており、触れると微かに鼓動のような感触が伝わる。

 ナオはそれを手に取り、記憶の奥底から浮かび上がる声に、目を細めた。

 ――“選ばれし者よ。世界の真実に触れる覚悟はあるか?”

 それは、かつて《断罪の剣》を手にしたときに聞いた“神の声”と同じだった。

「……リーナ、アリア。少し、危険かもしれない」

「構わないわ。あたしたちは、もうここまで来たのよ」

「ナオが進む道なら、私も行く。それが、私の決めたことだから」

 迷いなく答える二人に、ナオは静かにうなずいた。

「ありがとう。じゃあ――行こう。すべての始まりへ」


 鍵は王都地下の封印石に反応し、巨大な魔導陣を起動させた。
 光とともに転移した先は、“天空神殿”。
 地上からは見えない、高次元に浮かぶ、古の神々が住まったとされる聖域だった。

「……まさか、本当にあったなんて……」

 空に浮かぶ都市。大理石の柱、宙に浮かぶ書庫、輝く水の川。
 まるで伝説の中の世界が、現実として広がっていた。

 だが、誰もいない。

 この神殿に、神の気配は感じられなかった。

 その中心に一つの碑文があった。

 ――“この世界の創造は、神々の慈悲にあらず。
 人は過ちを繰り返し、やがて運命の輪に呑まれる。
 転生とは、選別であり、試練である。
 神々は既に去った。
 残された者よ、意志を継げ”――

 ナオたちは言葉を失った。

「……じゃあ、私たちが“転生”させられたのは……?」

「ただの“遊び”じゃなかったってことね。これは……“選ばれた者たちの戦い”だった」

 ナオは思い出す。

 カインが言っていた、“神の気まぐれ”に人生を狂わされたと感じた怒り。
 しかしその裏には、神の“意志”ではなく、ただ残された“仕組み”が回り続けているだけの世界があったのだ。

「神はいない。……でも、それでも、俺たちは生きている。
 だったら、この世界をどう生きるか、俺たち自身が決めていくしかない」

 そう口にした時、天上にある“玉座”が蒼く光を放ち、一冊の本がゆっくりと浮かび上がってきた。

 それは《創界の書》――この世界の全ての理を記した、もう一つの禁書だった。

「……これが、すべての答えか」

 ナオはその本に手を伸ばす。

 しかしその瞬間――。

 空に亀裂が入り、虚無のような黒い闇が、天を喰らうように広がっていった。

「ッ……これは……っ!」

 再び、始まろうとしていた。
 世界を超えた“神々の遺産”を巡る、最終試練が――。
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