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エピソード16都市の影が動く(後編)
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未踏鉱区・第七層への入口は、
地図には存在しなかった。
旧市街の外れ。
崩れかけた採掘塔の地下。
封鎖用の柵はあるが、
それは“人を止めるため”のものではない。
――見つけさせないため。
「ここね」
リナが指先で空をなぞる。
次の瞬間、
視界が歪んだ。
石壁が、
紙のように“めくれる”。
「……隠蔽結界」
一歩踏み出した瞬間、
空気が変わった。
重い。
音が吸われる。
灯りを掲げると、
坑道は明らかに“おかしかった”。
支柱の角度。
壁の模様。
奥へ進むほど、
現実感が薄れていく。
(……書かれてない)
トラヤウルスは確信した。
ここは、
“正しく記録されていない場所”だ。
「気をつけて」
リナの声が低くなる。
「ここは、
都市の管理外。
――つまり、
何が起きても
“なかったこと”にされる」
その時だった。
坑道の先に、
人影が立っていた。
黒い外套。
顔は見えない。
「ようこそ、第七層へ」
声は、
男とも女ともつかない。
「君が――
書の刻印を持つ者だね」
「……誰だ」
問いに、
影は答えなかった。
代わりに、
空間が“軋む”。
文字にならない情報が、
頭に流れ込む。
――観測
――修正
――失敗例:三十七件
「っ……!」
膝が、
勝手に折れそうになる。
《書の刻印》が、
悲鳴を上げていた。
【警告】
【対象:書外存在】
【理解不能】
【直接記録:不可】
「無理に読むな!」
リナが、
トラヤウルスの肩を掴む。
「こいつは、
“読む側”じゃない!」
影が、
わずかに首を傾けた。
「ほう……
魔女がついているとは」
一歩、
影が近づく。
その足取りは、
地面を踏んでいない。
「君はね、
“失敗しなかった可能性”だ」
「……何の話だ」
「書を持つ者は、
いずれ必ず
都市に消される」
淡々と、
事実を述べる声。
「だが君は――
まだ消えていない」
坑道が、
不気味に震え始める。
「今日は、
観測だけだ」
影が、
後ずさるように溶けていく。
「選びなさい、書商」
最後に、
その声が響いた。
「都市の書に従うか。
それとも――
自分で、
世界を書くか」
影は、
完全に消えた。
静寂。
長い沈黙のあと、
トラヤウルスは深く息を吐いた。
「……今のが、
監視者か?」
「ええ」
リナは頷く。
「都市の“外側”から、
世界を見ている存在」
トラヤウルスは、
震える手で書を開いた。
ページは、
空白だった。
だが――
確かに感じる。
この先、
書くべき文字がある。
「……逃げる気は?」
リナの問いに、
彼は首を振った。
「もう、
見ちゃったからな」
坑道の奥で、
何かが動く音がした。
第七層は、
まだ終わっていない。
そして都市は――
彼を、
見逃さない。
地図には存在しなかった。
旧市街の外れ。
崩れかけた採掘塔の地下。
封鎖用の柵はあるが、
それは“人を止めるため”のものではない。
――見つけさせないため。
「ここね」
リナが指先で空をなぞる。
次の瞬間、
視界が歪んだ。
石壁が、
紙のように“めくれる”。
「……隠蔽結界」
一歩踏み出した瞬間、
空気が変わった。
重い。
音が吸われる。
灯りを掲げると、
坑道は明らかに“おかしかった”。
支柱の角度。
壁の模様。
奥へ進むほど、
現実感が薄れていく。
(……書かれてない)
トラヤウルスは確信した。
ここは、
“正しく記録されていない場所”だ。
「気をつけて」
リナの声が低くなる。
「ここは、
都市の管理外。
――つまり、
何が起きても
“なかったこと”にされる」
その時だった。
坑道の先に、
人影が立っていた。
黒い外套。
顔は見えない。
「ようこそ、第七層へ」
声は、
男とも女ともつかない。
「君が――
書の刻印を持つ者だね」
「……誰だ」
問いに、
影は答えなかった。
代わりに、
空間が“軋む”。
文字にならない情報が、
頭に流れ込む。
――観測
――修正
――失敗例:三十七件
「っ……!」
膝が、
勝手に折れそうになる。
《書の刻印》が、
悲鳴を上げていた。
【警告】
【対象:書外存在】
【理解不能】
【直接記録:不可】
「無理に読むな!」
リナが、
トラヤウルスの肩を掴む。
「こいつは、
“読む側”じゃない!」
影が、
わずかに首を傾けた。
「ほう……
魔女がついているとは」
一歩、
影が近づく。
その足取りは、
地面を踏んでいない。
「君はね、
“失敗しなかった可能性”だ」
「……何の話だ」
「書を持つ者は、
いずれ必ず
都市に消される」
淡々と、
事実を述べる声。
「だが君は――
まだ消えていない」
坑道が、
不気味に震え始める。
「今日は、
観測だけだ」
影が、
後ずさるように溶けていく。
「選びなさい、書商」
最後に、
その声が響いた。
「都市の書に従うか。
それとも――
自分で、
世界を書くか」
影は、
完全に消えた。
静寂。
長い沈黙のあと、
トラヤウルスは深く息を吐いた。
「……今のが、
監視者か?」
「ええ」
リナは頷く。
「都市の“外側”から、
世界を見ている存在」
トラヤウルスは、
震える手で書を開いた。
ページは、
空白だった。
だが――
確かに感じる。
この先、
書くべき文字がある。
「……逃げる気は?」
リナの問いに、
彼は首を振った。
「もう、
見ちゃったからな」
坑道の奥で、
何かが動く音がした。
第七層は、
まだ終わっていない。
そして都市は――
彼を、
見逃さない。
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追記:2025/09/20
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