十九歳に戻った村の書商は、契約した魔女と共に世界を書き換え、人類の頂点を目指す

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エピソード17白柱都市の代価(前編)

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白い光の柱は、近づくほどに圧迫感を増していった。
都市そのものが、空に突き刺さっているようだった。

「……やっぱり、でかすぎる」

トレイアウルスは思わず呟いた。
村や坑道とは、空気が違う。
ここでは力が隠されず、誇示されている。

城壁はなく、代わりに結界のような薄い光が都市全体を覆っていた。
門番はいない。
だが、足を踏み入れた瞬間、視線を感じた。

――見られている。

「気づいた?」
隣でリナが小さく笑う。

「ここは“選別される街”よ。入った瞬間から、値踏みが始まる」

石畳を歩くたび、魔力の流れが足裏に伝わってくる。
建物は白く、整っていて、どこか冷たい。
行き交う人々も同じだ。武装した者、魔術師、商人。
全員が、自分の“価値”を理解している目をしている。

「力で回る都市、か……」

その言葉に、リナは頷いた。

「ええ。ここでは善悪より、強さと有用性。
役に立たないものは、静かに切り捨てられる」

トレイアウルスは無意識に、胸元の刻印に触れた。
“書の刻印”。
かつては役立たずと呼ばれた力。

――この街で、それは通用するのか?

広場に近づくと、ざわめきが増した。
人だかりの中心では、何かが行われている。

「登録よ」
リナが言った。
「この街に滞在するなら、避けられない」

中央に立つ水晶柱。
そこに手を触れ、魔力と技能を提出する。
結果は公開され、価値が数値化される。

「拒否したら?」

「拒否権はあるわ。でも、その瞬間に“外”ね」

並ぶ人々の中には、誇らしげな者もいれば、怯えた者もいる。
数値が低ければ、仕事も住処も制限される。

順番が近づくにつれ、心臓の音が大きくなった。

――まただ。
――また、試される。

前世でも、やり直しの最初でも。
価値を測られる瞬間は、何度経験しても慣れない。

「大丈夫よ」
リナが、囁くように言った。
「あなたの力は、数値に収まらない」

その言葉が、逆に不安を煽った。

やがて、トレイアウルスの番が来る。
水晶柱の前に立ち、深く息を吸った。

「……行くぞ」

手を伸ばし、触れた瞬間――
水晶が、鈍く光った。

周囲がざわめく。

「……反応、弱くない?」
「刻印は? 見えないぞ」

表示された数値は、低い。
戦闘能力、魔力量、耐久。
どれも、この街では“凡以下”。

――やっぱり、か。

だが、次の瞬間。
水晶の奥で、異音が走った。

カリ、と。
何かが、書き換えられるような音。

表示が、一瞬だけ乱れる。

「……?」
管理役の男が眉をひそめた。

数値の下に、見慣れない項目が浮かぶ。

《記録更新:進行中》
《未分類スキル検出》

ざわめきが、はっきりと変わった。

「未分類?」
「そんな項目、あったか?」

管理役が顔を上げ、トレイアウルスを見た。
その目には、警戒と――興味。

「……君」
低い声で言う。
「少し、話を聞かせてもらおうか」

背後で、リナが静かに笑った。

「ほらね」
「もう、始まったわ」

トレイアウルスは理解した。

この都市では、
“弱い”だけでは終わらない。

――未知であることこそが、最大の代価になる。
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