枢軸特急トルマリン=ソジャーナー 異世界逗留者のインクライン

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千億光年の夜景(ア・バード・ビューズ・ナイト)⑧

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 ■ 蜂狩山登山ロープウェイ御多福岩おたふくいわ駅 (承前)


 蜂狩市の夜景は東洋随一の宝珠と謳われ、一千億光年の範囲に散らばっている恒星を凝縮したに等しい、と海外から高く評価されている。とりわけオタフク岩は絶景を拝めるデートスポットとして有名だ。南西方向に蜂狩市民の聖地である飛鳥山が聳え、遥かオノコロ島が朝焼けに霞んでいる。鳶の群れと見まごう懐疑派の航空機。速度、運動性能、航続距離、そのいずれも沼田コヨリ独自の量子色力学によって従来の民間機とは隔絶したスペックを見せつけていた。さらにダイマー能力の支援下で流星群をまとい、鉄壁に近い防御力を備えている。
 もはや超兵器であるといっても過言ではない。
 提供元であるドイッチェラント航空界の反対勢力は実にいい仕事をしてくれた。フラウンフォーファーに関わる者の大半はアルジェリア移民だ。二級市民の座に置かれている。ドレスデンの下町工場が安い労働力の受け皿として、元受けの過酷な搾取に耐えながらモノ作りに挑戦していた。
 そこに枢軸特急奪取に失敗したコヨリたち懐疑派が接触した。下請けに甘んじていた人々は燻る不満を一気に爆発させ、ハートレー大総統と袂を分かった。
 グアムから飛来した機体は空中管制機エーワックスの役割を果たした。隷下の小型機を効率よく配置して、蜂狩山系から出られる退路を完全に断った。東西に細長く屏風のように横たわる蜂狩山脈。そこに至る主要ルートは限られている。
 一つは表蜂狩おもてばちかり登山道。山王駅から曲がりくねった山道が続く。もう一つは山脈の北側を下って温泉街に抜ける銀泉街道。そのどちらもワールドノイズの影響が比較的に薄い。枢軸の鉄道連隊はどの異世界でも世界治癒力を騙しだまし線路を敷設するだが、コード1986では特にそれが濃厚で、事実上、この二路線に限られる。純色をバックアップする連合も同じだろう。
「指導者の無能ぶりを呪うがいいさ。お前たちは異世界軌道から切り離された」
 重水素弾がオタフク岩に着弾した。
 沼田コヨリは圧倒的な航空戦力で枢軸特急を封じ込められると信じて疑わない。いかな神出鬼没の幽霊列車とて上空から見れば格好の的だ。ALX427ψとTWX666Ωは尾根に張り付くように停車している。
「派手にぶっ壊しておやり。惜しくもない。フラウンホーファーにそれ以上のものを作らせるさ」
 彼女が勢い込んだ瞬間、セスナが爆散した。
「ウソ?」
 何が起こったのか把握できないまま、空爆が中断する。オタフク岩からバリバリと対空砲火が撃ち込まれる。
「何なの? これ。尾鷲。全然聞いてないんだけど! まさか、お前」
 盗賊団の女ボスは右腕の信頼性を疑い始めた。彼の力不足が招いた失態か、それとも故意のサボタージュか。真意を問いただすべく、無線機のマイクを握った。
 意外な場所から返事があった。
「沼田さん。あんたはハイパー核に固執するあまり、自分を見失ってないか?」
 TWX666Ωの戦闘指揮車両のオペレーター席に尾鷲茂三が座る。
「その言葉、丸ごと返すよ。ホウ素12Λの独占に憤っていたアンタも、今じゃ邨埜と同じ穴の狢だ」
「――?! 今頃になって寝返るってのかい? まさか、お前、純色と……」
 描写が憚られる言葉を轟音がかき消した。ハーベルトが気を利かせて高射砲の発射音を中継したのだ。
「はずれ。俺は調子のいいオンナとコウモリが大嫌いなんだよ」
 15センチ砲弾がビジネスジェットを打ち砕く。軽合金の破片が朝日にきらめく。運よく初弾を逃れた数機が急上昇に転じる。高射砲の射線に流星が立ちふさがる。
 最大射程20キロ。最大射高14キロを誇る三式12?高射砲は大阪湾上に逃れようとした機体を見事に撃ちぬいた。
 TWX666Ωを葬り去るはずだった爆撃編隊がバタバタと落とされていく。
 だが、このまま引き下がるコヨリではない。と、いうか寧ろ、この状況を待ち望んでいたようである。 下を向いて「クックック」と抑え気味に笑う。
「何がおかしいの?」
 手負いの相手に水を向けることは相手の術中に嵌るも等しい。それを承知で男は訊いた。
「聞いちゃダメっ!」
 発言内容を察知したハーベルトが通信宅に駆け寄る。マイクを奪うより早く、コヨリが口を開いた。
「だったら、なおさら言ってやろう。藤野祥子!」
 冷水を被ったように体が震えた。コヨリは反応を確かめるように言葉を濁している。嫌な予感がする。
 授業で先生に当てられまいと祈りを捧げる気分だ。
 沈黙を破ったのは祥子に更なる電撃を浴びせるものだった。
「祥子。お前の寿命は尽きている」
「どういうことなの? ハーベルト」「うるさい! 余計なことを」
 叫び声が重なった。
「ええ。そうですとも。ダイマー能力者は体に爆弾を抱えているわ。卓越した能力と引き換えに余命が幾ばくも無いの」
 ハーベルトは断腸の思いで明かした。
 祥子の目の前が真っ暗になった。
「嘘だ。嘘だろ……」
 鼓動が早まり、尿意がこみ上げる。車内が回転し、列車の床が割れて奈落に吸い込まれるような感覚が襲ってくる。
「うそ……だ……ろ」
 へなへなとくずおれる祥子。ハーベルトは彼女を支える気力も体力も失い、一緒にへたり込む。
「本当さ。私も同じ。だけどね。私は目的を全うして死ぬのさ」
 みごとコヨリは精神的優位に立った。祥子はまだ中学生だ。死期と向かい合えるほど成熟していない。
 だが、祥子は大人びた反応を示した。達観したように言う。
「……いいんだ。ボクは轢かれて死んだんだ」
 心身の性別を一致させたい。それ以上の多くを彼女は望んでいない。かなわぬ願いを抱えて悶々と生きるより死を選ぶ。それは両親も同じ思いだろう。障害を抱え娘の老後が心配だ。頼れる親もおらず、ただ一人苦しませるのは忍びない。
 車内の空気がざわめいた。
 しばらくぶりに壁が来る。
 リンドバーグの壁。
 克服し難き、熱力学第二法則の障壁が死臭を帯びて忍び寄る。
「駄目よ! 祥子!!」
 ハーベルトは気配を感じ取り、相方をいさめる。
「どうせ死ぬのなら、悔いのない人生を過ごしましょう。コヨリを満足させていいの?」
 古臭い励ましで鞭打ってみたものの、祥子は空ろな目をしている。
「あなた、『おとこ』でしょう? やられっぱなしでいいわけ?」
 ハーベルトは遂に昭和の常套句まで持ち出した。敗北をバネにしろ。
 その必死の呼びかけに祥子が我に返った。
「そうだね……せめて、一矢報いないと」
 上体を起こし、ハーベルトの手を借りてヨロヨロと立ち上がる。
 熱意が通じたのではない。男性特有の興味本位だ。憎悪対象を完膚なきまで破壊したい。その情動だけが彼女を突き動かす。
 コヨリは茶番劇をじっと見守っていた。そして、最高のタイミングで卓袱台をひっくり返した。
「冥途の土産に教えてやろう。わすれちゃいないかい? もう一人、お前の大好きな……」
 子供が小動物を殺すようにじわじわと追いつめる。
「荒井先生と言ったわねぇ」
 その冷酷な事実にハーベルトはいち早く気づいた。
「――!」
「――?!」
「……ダイマーダンサーだろ?」
 祥子の心がぽっきりと折れた。吹雪先生が死んでしまうなんて。彼女は祥子を思うあまり事件に深入りした。自分は彼女にとって数ある教え子の一人でなければいけないのに、巻き込んでしまった。彼女にはできるだけ長く教鞭を執ってほしかった。

 ■ 蜂狩山脈上空 

 高高度偵察機「オオガラス69」は呉越同舟をじっくりと観察していた。もともと連合は邨埜純色を信用していない。ローズバードは純色の手腕に着目した、買い被りもいいところだ、と連邦議会の奥の院は評価した。大統領は神輿に乗っているに過ぎない。
 戦争は高度な政治の延長である、とプロイセン王国の軍事学者クラウゼヴィッツは言った。連合の発動機は産軍複合体を隠れ蓑にしている。軍需産業と利権団体がステイツの歯髄とすれば、その下顎骨を齲蝕うしょくさせる細菌。言うなれば歯周病菌ともいえる存在が潜んでいる。
 オオガラス69のパイロットたちを指揮すべき奥の院が紛糾している。虹色のモニター画面の向こうで指導者たちが口角泡を飛ばしている。
本初始祖世界ソースコードに壁が押し寄せた」
「仮説より十三年も早いじゃないか。いったいどういう事だ?」
「藤野祥子は生粋のソースコード人ではない。そうでなければソースコード人の総意が自滅を繰り上げているはずだった」
「だが、コード1986は冷戦構造に耐え、あまつさえ、緊張緩和の兆しが見える。それなのに彼女は故意に壁を呼び寄せた」
「東西軍事バランスの妙がたまたま全面核戦争を延期しているだけだ」
「不安定な状態はいとも簡単に崩れる。むしろ緊張を維持しているメカニズム自体があり得ない。原理を説明してみよ」
「では熱力学第二法則の例外を認めろと? 外的要因が干渉し続けることで、エントロピーの増大は防げると」
「そうだ。藤野祥子こそが干渉の存在証明にほかならない」
「となれば、我々が排除すべきは祥子か」
「焦るな。我々の目的は壁の克服だ。観測を続けさせろ」
 上層部はオオガラス69にホウ素12Λ鉱脈の探査を命じた。大阪湾上はワールドノイズが入り乱れている。それに乗じて偵察機は沿岸部を飛び回った。
「こちら、オオガラス69。断層に地質学では説明できない力が加わっています」
「オオガラス69。偏向の方向を調査せよ。ベクトルを演算して発生源を特定せよ」
「諒解」
 地層図にいくつもの矢印が重なる。続いて、偵察員は沼田コヨリが探り当てた相関関係――祥子と壁の親和性――を加味した。
 TWX666Ωの現在位置に延長線が集中する。
 計算結果は奥の院でも共有されており、モニターから驚きの声があがる。
「やっぱり、そうか! 藤野祥子はハイパー核を燃料にしている。そういう事だったのか。よくやった」
 喜んでいる暇はない。オオガラス69は回避行動に忙しく、高機動バーニャがひっきりなし唸りをあげる。
 鉱脈から立ち上るうねりは世界治癒力を揺るがし、かつてない混乱を招いた。蜂狩市内は騒然としている不安が目に見える形で押し寄せたのだ。
「子供が怖がっているんですよ」
「犬が吠えて煩いんだ」
「何とか撃墜できないのか」
 相次ぐ苦情に市当局は早朝にもかかわらず異例の発表を行った。地元のローカル局ムーンテレビが流星落下に関する注意を促す。
 記者会見のさなか、ドカンと市庁舎が揺れた。
「地震だ」
「地震?! 東海地震かしら?」
「流星の引力でおかしくなったんじゃないか?」
「隕石の引力だ! 引力のせいだ」
「「「そうだ。そうだ!」」」
 流言飛語が錯綜し、制御を欠いた人々が混乱に拍車をかける。そして、蜂狩の路上に亀裂が走り、ゆっくりと崩壊し始めた。その影響は蜂狩山脈を激しく揺さぶった。ALX427ψもTWX666Ωも脱線したまま復旧の目途が立たない。それどころか、車内は備品が散乱し、負傷者が出ている。
「これよ。ついに手に入れる時が来た!」
 沼田コヨリは小型機を駆ってオノコロ島を目指した。ハイパー核は北端部から蜂狩山脈を横断してベルナール湖に続いている。海面が逆巻き、島が浮上を始めた。
「片鱗でもいい。この下、この下にハイパー核が埋まっているのよ。どの異世界でもない。本初始祖世界ソースコード産の純粋ハイパー核が!」
 危険を顧みず、機体が断層にさしかかる。彼女はダイマー能力で舞い散るサンプル回収を試みる。
 一方、心配した吹雪がオタフク岩に飛んできた。
「先生、先生がぁー」
 祥子は担任の胸に顔をうずめる。ハーベルトが事情を説明すると荒井は顔面蒼白した。
「今日明日に死ぬっていうわけじゃないのよ。ドイッチェラントの医療は最先端。きっと治療法を見つける」
 ハーベルトが根拠のない希望を語る。だが、明るい未来を信じて人は成功を続けきた。空を自由に飛びたいと願い、飛行機で雲に達し、星にあこがれてロケットで宇宙に漕ぎ出た。
 それを聞いた吹雪は落ち着きを取り戻した。
「教師がうろたえてどうするの」
「でも、先生」
 なおも泣きわめく祥子にハーベルトは憐れみと希望を見出した。
 ハーベルトの脳裏には教師と生徒が一丸となって外敵に立ち向かった歴史がよみがえる。モノクロームの映像に雨が降っている。泥だらけのセーラー服姿で手榴弾パイナップルを握りしめる少女。
ダイマー共有視覚が悲劇を掘り起こす。
「学徒動員のこと?」
 荒井はハーベルトの概念に一致する単語を思い浮かべた。
「そうよ。まさか遺骨が勝利のカギを握るとは思わなかった。発掘しておいてくれたわよね」
 ハーベルトが念を押すと荒井は場所の案内を申し出た。
 聖イライサニス学園。旧蜂狩兵器工廠。
 そこに起死回生の切り札。未来が埋もれていた。
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